この記事は、次の2つの記事をまとめたものです。


    癌細胞内を「酸性化」し、癌細胞外を「アルカリ化」する方法は、有望な癌治療となる!
     - 福田一典 医師【『プロトンポンプ阻害剤』との併用により、抗腫瘍効果が高まる!】


    『重曹』の 経口摂取 は、癌細胞の「酸性化」を改善して「アルカリ化」し、
     癌の発生の阻止、癌の浸潤・転移を 有意に 抑制する「抗腫瘍効果」を発揮する! - 福田一典 医師



 この2つの記事は、『銀座東京クリニック』院長「福田一典」医師が公開している「『漢方がん治療』を考える」での「シリーズ記事」であり、上記の2つの記事の内容を簡潔に要約しますと、次の(1)(5)になります。



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(1)癌細胞の「代謝の特徴」である『ワールブルグ効果』

 癌細胞の「代謝の特徴」は、酸素が充分にあっても、ミトコンドリアでの「酸素を使った ATP産生(電子伝達系による「酸化的リン酸化」によって ATP を生成する)」が抑制され、「酸素を使わないで ATP産生を行なう 解糖系」が亢進している。

 これは、癌細胞のミトコンドリアに異常があるのではなく、癌細胞は「酸素を使った ATP産生」を行ないたくないために、自身の ATP産生を、ミトコンドリアでの「酸素呼吸(酸化的リン酸化)」を「抑制」し、「酸素を使わないで ATP産生を行なうことができる 解糖系」にシフトしている。

 このようなわけで、癌細胞は「ミトコンドリアでの ATP産生」が「抑制」され、解糖系が亢進しているが、これは癌細胞の「代謝の特徴」である『ワールブルグ効果』と呼ばれる現象であり、癌細胞における『ワールブルグ効果』は非常に重視すべきものである。



(2)癌組織は「酸性化」しており、この「酸性化」が “癌の重要な成長因子” となっている
   癌組織の「酸性化」は、癌の増殖悪性化転移進行を促進する

   しかし、癌組織で「酸性化」するのは『細胞外』であり、逆に『細胞内』は「アルカリ化」している
   つまり、癌細胞外が「酸性」になっており、癌細胞内は「アルカリ性」になっている
 
 癌細胞では(上記の理由による)解糖系の亢進によって「乳酸」と「水素イオンプロトンH+)」の細胞内での産生が亢進している。だから、癌細胞内も「酸性化」と思うのは早計であり、逆に、癌細胞内では、正常細胞より「アルカリ性」になっている。

 癌細胞は「ミトコンドリアでの ATP産生」が「抑制」され、解糖系が亢進しているため、「乳酸」と「水素イオンプロトンH+)」の産生が増えている。
 癌細胞でも「ミトコンドリアでの代謝(ATP産生)」は「正常細胞と同程度」に起こっているが、「ブドウ糖」の取り込みは 10倍 程度に亢進し、その多く(9割 程度)は解糖系で代謝され、「乳酸」の産生が顕著に増えている(参照記事「ワールブルグ効果」を是正すると、癌細胞は自滅する!)。
 つまり、癌細胞は解糖系を亢進して大量の「ブドウ糖」を取り込み、大量の「乳酸」を産生している。

 しかし、癌細胞は、大量の「乳酸」産生によって細胞内が「酸性化」すると死滅してしまう。
 癌細胞は細胞内の「酸性化」を回避し「死滅を防ぐ」ため、大量に産生している「乳酸」と「水素イオンプロトンH+」を細胞外に排出することによって細胞内を「アルカリ性」に維持している。
 よって、癌細胞内は「アルカリ性」になっており、癌細胞外が(上記の理由により)「酸性」になっている。

癌細胞内  アルカリ性癌細胞外  酸性、です。癌組織で「酸性化」しているのは「癌細胞外」です。
    癌細胞内 pH は 7.12~7.7 の「アルカリ性」、癌細胞外 pH は 6.2~6.9 の「酸性」です。

癌細胞の細胞内は「アルカリ性 」に維持されているため、癌細胞のミトコンドリアに「pH レベルによる異常」は発生しないものと思われます。



(3)癌細胞内の「アルカリ化」は、癌化の「初期の過程」から起こっている
   そして、細胞内を「アルカリ」にすることが、解糖系を亢進する「重要な要因」になっている


 癌細胞内における「アルカリ化」は、癌化の「初期の過程」から起こっている。
 細胞内を「アルカリ」にすることが、細胞の「発癌過程の初期」から起こっており、これが、解糖系を亢進する「重要な要因」になっている。
 つまり、癌細胞で『ワールブルグ効果「解糖系亢進」と、ミトコンドリアの「酸化的リン酸化」の抑制 )』が「成立する前」に、細胞内の「アルカリ化」が起こっている。

 先に細胞の解糖系が亢進し、細胞内に「乳酸」と「水素イオンプロトンH+)」の産生が増え、これを細胞外に排出した結果、細胞内の「アルカリ化」が起こり、細胞が癌化したのではない。
 癌化は、まず最初に、細胞内の「アルカリ化」が発生するところから始まっている。
 細胞に『ワールブルグ効果』が「成立する前」に細胞内の「アルカリ化」が発生してから癌化の過程をたどる。

ここは、最新の癌研究によって解き明かされた「癌化」に関する重要な発見です。
 癌化とは、まず最初に、細胞内の「アルカリ化」が発生するところから始まり、おそらく、その影響で「解糖系の亢進」が起こり、その結果として〔上記の流れによる〕細胞外の「酸性化」が起こっているものと思われます。

 細胞内の「アルカリ化」が発生  解糖系が亢進  細胞内に「乳酸」と「水素イオン」が大量に発生  細胞内で大量に発生した「乳酸」と「水素イオン」を細胞外に排出して死滅を回避  癌細胞外が「酸性化」し、癌細胞内の「アルカリ化」が さらに進行 ワールブルグ効果』の成立  癌細胞の成立〔癌化の完了
 このような「癌化の流れ」があるのかもしれません。




(4)癌細胞の「水素イオンの排出メカニズム」を阻害して細胞内を「酸性化」させると、癌細胞は死滅する
   癌細胞外の「酸性化」を阻害するか「アルカリ化」すると、有意に「抗腫瘍効果」を発揮する
   この方法は『有望な癌治療』となる


 癌細胞での「水素イオンプロトンH+)」を細胞外に排出するメカニズムを阻害すると細胞内が「酸性化」し、癌細胞は死滅する。
 そして、癌細胞外の「酸性化」を阻害して「アルカリ化」すれば、有意に「抗腫瘍効果」を発揮する。

 癌組織の「酸性化」を阻止する方法としては、胃潰瘍の治療に使う『プロトンポンプ阻害剤』が有効する。
 また、癌組織の「酸性化」を「アルカリ化」する方法としては『重炭酸ナトリウム重曹療法』が有効する。
 その他に、解糖系を抑制する「2-デオキシ-D-グルコース」や「ジクロロ酢酸ナトリウム」などを併用する方法も有効するが、これらの方法を併用して行なうと「相乗効果」によって治療効果が高まる。

ここも、癌治療において非常に重要なところです。
 癌組織の「酸性化」は、癌細胞にとって “重要な成長因子” です。つまり、癌組織が「酸性化」していればこそ、癌は増殖悪性化転移進行していくことができるのです。
 この癌組織の「酸性化」を阻害して改善すると、有意に「抗腫瘍効果」を発揮します。
 例えば『重曹療法重炭酸ナトリウム)』によって癌組織の「酸性化」を中和して「アルカリ化」すれば、有意に「抗腫瘍効果」を発揮するのです。
 これは「至極当然なこと」であって、癌細胞が癌細胞外の「酸性化」した環境〔酸性環境〕を失うことは、それはすなわち、癌細胞にとっては “重要な成長因子” を失ったのと同意ですから、癌細胞外の「酸性化」した環境〔酸性環境〕を失った癌細胞は「増殖悪性化転移進行するために必須の環境条件(癌が成長するための絶対条件)」を失ったことになるわけです。そのため、有意な「抗腫瘍効果」が発揮されて当然なのです。




(5)癌組織の「酸性化」を阻害して「アルカリ化」すると、
   「抗がん剤治療」や「免疫療法」の治療効果を有意に高める


 免疫細胞は「弱アルカリ性pH 7.3~7.4)」の環境下で正常に機能することができる。そのため、免疫細胞が「酸性環境」にさらされると、その機能(貪食能力)が低下する。
 癌組織は「酸性化」しており、免疫細胞が「攻撃し難い環境 免疫細胞の苦手な「酸性環境)」であるために、癌細胞を攻撃しにきた免疫細胞の働きが弱ってしまう。
 つまり「弱アルカリ性pH 7.3~7.4)」の環境下で正常に機能することができる免疫細胞は、「酸性化」している癌細胞は「攻撃し難い」のである。

 「酸性化」している癌組織を『重炭酸ナトリウム重曹療法』によって「アルカリ化」すると、「弱アルカリ性pH 7.3~7.4)」の環境下が得意な免疫細胞が「癌細胞を攻撃しやすく」なる。
 したがって「免疫療法」の効果を有意に高める。


 また「抗がん剤」の多くは「塩基性」であるため、「酸性」の癌組織には「抗がん剤」が到達し難くなり、活性が低下する(塩基」として働く性質を「塩基性」と言い、そのような水溶液を特に「アルカリ性」と言います )。

 「抗がん剤」は、癌細胞を傷害するだけでなく、正常細胞をも傷害してしまう『全身性の毒作用』があるために、これが深刻な「副作用」となっている。
 「抗がん剤」の多くが「塩基性」であるということは、多くの「抗がん剤」が「酸性化している癌細胞」に到達し難く傷害し難い‥、逆に「弱アルカリ性の正常細胞」には到達しやすく傷害しやすい、ということになる。
 つまり「塩基性」の「抗がん剤」は、癌細胞を傷害することが苦手であり、逆に、正常細胞を傷害することのほうが得意である、ということになり、これでは「抗がん剤の副作用が顕著に出てしまって当然だ」と言えよう。

 (上記の「免疫細胞の場合」と同様に)「酸性化」している癌組織を『重炭酸ナトリウム重曹療法』によって「アルカリ化」すれば、「弱アルカリ性pH 7.3~7.4)」の環境下を得意とする「塩基性」の「抗がん剤」が「癌細胞に到達しやすく」なり「癌細胞を攻撃しやすく」なる。
 したがって「抗がん剤治療」の効果を有意に高める。


 以上の理由から、「抗がん剤治療」や「免疫療法」を、癌組織の「酸性化」を阻害して「アルカリ化」する治療と「併用」して行なうと「相乗効果」によって治療効果を有意に高めることができる。

当然ですが、これは「抗がん剤治療」や「免疫療法」を行なっていないと、その恩恵を受けることができない‥、などということは一切ありません。人体には「癌免疫」があり、この「癌免疫」が癌細胞を攻撃して駆逐しているのですから、『重曹療法重炭酸ナトリウム)』によって癌組織の「酸性化」を中和して「アルカリ化」すれば、上記の理由により、どのような癌患者さんであっても「癌免疫」が活性化し、免疫細胞が「癌細胞を攻撃しやすくなる」のです。『重曹療法重炭酸ナトリウム)』によって癌組織の「酸性化」を軽減すれば「抗腫瘍免疫」が活性化して「抗がん作用」が強化されるのです。

 ただ、ここで問題なのが、「酸化体質身体の酸化)」が重篤になっている癌患者さんです。
 「酸化体質身体の酸化)」が重篤になり、活性酸素が大量に発生し、その大量に発生している活性酸素によって免疫細胞や腸内細菌が破壊されている場合は「癌免疫」自体が正常に働きません。
 免疫システムは「腸内環境」と「腸内細菌」によって成り立っているため、大量に発生している活性酸素によって腸内細菌と免疫細胞〔実際に癌細胞を攻撃する兵隊〕が破壊を受けていれば「癌免疫」自体が機能しなくなっていて当然なのです。
 ですから「酸化体質身体の酸化)」が重篤になっている癌患者さんの場合は、まず『水素療法』や『電子治療』などの「抗酸化治療」「酸化還元治療」によって重篤になっている「酸化体質身体の酸化)」を強制的に大急ぎで改善することほうが、治療の順序としては先になるでしょう。

 通常の癌患者さんであれば、免疫システムを担っている「腸内環境」と「腸内細菌」を『食事療法』によって改善することで「癌免疫」が改善されていれば、『重曹療法重炭酸ナトリウム)』によって癌組織の「酸性化」を軽減する治療との「併用」により、さらに「抗腫瘍免疫」が活性化して「抗がん作用」が強化されるでしょう。
 加えて『飲尿療法』による「天然の癌ワクチン」によって「癌免疫」を改善強化再建する治療を組み合わせておけば、なおベストだと思います。




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 「福田一典」医師は様々な研究報告を示しながら、以上のことを科学的医学的に説明されています。
 以上の(1)(5)を意識しつつ、当記事をご参考になってみてください。


 私は、個人的には『重曹重炭酸ナトリウム)』の「経口摂取」(いわゆる『重曹療法』です)を推奨します。
 それは、当記事で「福田一典」医師が提起している化学医薬を用いた方法であれば、大なり小なり、必ず副作用が発生するからです。『重曹重炭酸ナトリウム)』であれば、化学医薬のような副作用がありませんので、一番安全な方法になると思います。

 その他、私がなぜ『重曹療法重炭酸ナトリウム)』を推奨するのかにつきましては、次の記事の「最初の黄囲み部分」を参照されてください。


    『重曹』の 経口摂取 は、癌細胞の「酸性化」を改善して「アルカリ化」し、
     癌の発生の阻止、癌の浸潤・転移を 有意に 抑制する「抗腫瘍効果」を発揮する! - 福田一典 医師



 よろしくお願いします m(__)m

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 527)がん組織の「アルカリ化」と「抗がん剤治療」(その1):
     プロトンポンプ阻害剤

 【「『漢方がん治療』を考える(福田一典 医師)」
より 】

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【図】
◆◆
がん細胞内では、解糖系が亢進して「乳酸」と「水素イオンプロトンH+)」の産生が亢進している。
そのため、がん細胞内は「乳酸(酸性物質)」と「水素イオンプロトンH+)」が蓄積することにより「酸性化」傾向になる。ブログ管理人の追加文
 がん細胞内での「酸性化」を回避するため、(がん細胞は)「液胞型プロトンATPアーゼ(V-ATPase)」などの「イオンポンプ」や「トランスポーター」などを使って「プロトン(水素イオンH+)」を細胞外に排出している。その結果、がん組織が「酸性化」する。
癌細胞で「酸性化」するのは、癌細胞外〔癌細胞の外側周囲の組織です〔癌細胞外は「pH 6.2~6.9」の 酸性 です〕。逆に、癌細胞内〔癌細胞の内部は『細胞内に蓄積した「プロトン(水素イオンH+)」を細胞外に排出する』ことによって「アルカリ性」になっています〔癌細胞内は「pH 7.12~7.7」の アルカリ性 です〕。
 注意すべきことは、癌細胞で「酸性化」するのは 癌細胞外 であり、癌細胞内 は 逆に「アルカリ性」になっている、ということです。癌細胞の 内外のすべて が「酸性化」しているわけではない、という点に注意しましょう。もっと言えば、癌細胞内 は “正常細胞よりも「アルカリ性」になっている” のですが〔正常細胞内は「pH 6.99~7.05」と、ほぼ「中性」です〕、癌細胞が 細胞内 を「アルカリ」にすることが『解糖系を亢進する重要な要因』になっています
ブログ管理人

 がん組織の「酸性化」は、がん細胞の浸潤転移を促進し、「血管新生」を誘導し、「抗がん剤」の効き目を弱め、免疫細胞の働きを弱める、などの機序によって、がんを悪化させる。
 胃酸分泌阻害剤の「プロトンポンプ阻害剤」は「液胞型プロトンATPアーゼ(V-ATPase)」を阻害して、がん組織の「酸性化」を抑制する。
 「ジクロロ酢酸ナトリウムDCA)」は「ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ」を阻害することによって「ピルビン酸脱水素酵素」を活性化し、ミトコンドリアでの代謝を亢進し、解糖系を抑制し、「乳酸」と「プロトン(水素イオンH+)」の産生を減らす。
 「2-デオキシ-D-グルコース2-DG)」と『ケトン食』は、グルコース(ブドウ糖)の取込みと解糖系を抑制して「乳酸」と「プロトン(水素イオンH+)」の産生を抑制する。
 これらの方法で、がん組織の「酸性化」を阻止すると「抗がん剤治療」が良く効くようになる。◆◆



がん組織の周囲は「酸性」になっている

 がん組織では「乳酸」の産生が増えています。
 がん細胞の代謝の特徴は、酸素が充分にあっても、ミトコンドリアでの酸素を使った ATP産生が抑制され、酸素を使わない解糖系が亢進していることです。

 正常細胞では、グルコース(ブドウ糖)から ピルビン酸まで分解したあと、酸素があれば「TCA回路クエン酸回路)」と「電子伝達系」による「酸化的リン酸化」によって ATP を生成しますが、酸素が無い場合は ピルビン酸から さらに「乳酸」に分解します。

 がん細胞の場合は、「低酸素誘導因子-1HIF-1)」の活性亢進によって、ピルビン酸を「乳酸」に変換する「乳酸脱水素酵素」の発現量が増え、ピルビン酸を アセチルCoA に変換する「ピルビン酸脱水素酵素」の活性が低下しているので、酸素が充分にあっても、ミトコンドリアでの「酸化的リン酸化」は抑制され、「乳酸」の産生が増えることになります。
 この現象は「ワールブルグ効果」あるいは「好気性解糖」と言って、がん細胞の代謝の特徴です。

 なぜ、ピルビン酸で止まらないで「乳酸」に変換されるかと言うと、その理由は、解糖系で還元された NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を酸化型の「NAD+」に戻すためです。「NAD+」が枯渇すると、解糖系が進行しなくなります。
 NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、酸化還元反応における「電子伝達体」として機能します。
 NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は「酸化型(NAD+)」と「還元型(NADH + H+)」の2種類の形で存在し、「NAD+」は「解糖系の反応」に必要で、解糖系で還元型になった「NADH + H+」を「酸化型(NAD+)」に戻すために「乳酸」がつくられるのです(下図)。
 この反応によって、酸素が無い状況でも、グルコース(ブドウ糖)を分解して ATP の産生を続けることができるのです。


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【図】
◆◆
解糖系では、グルコース(ブドウ糖)から「ピルビン酸」「ATP」「NADH + H+」がつくられる。
 「嫌気性解糖系」や「乳酸発酵」では、「NADH + H+」を還元剤として用いて ピルビン酸を還元して「乳酸」にする。
 「乳酸」に変換する反応によって「NAD+」を再生することによって、解糖系での代謝が続けられる。◆◆


 この「ワールブルグ効果」の結果、がん組織では「乳酸」の産生が増え、「乳酸」と「水素イオンプロトンH+)」の細胞内濃度が高まり、細胞内の pH が低下して「酸性」になります。
 グルコース(ブドウ糖)1分子が 解糖で2分子の「乳酸」になるときに、2分子の「プロトン(水素イオンH+)」が産生されます。

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 細胞内の pH が低下して「酸性」になると細胞内のタンパク質の活性や働きは阻害され、pH 低下が顕著になれば(細胞内の「酸性化」が顕著になれば)、細胞は死滅します。
 そこで、がん細胞は「乳酸」や「水素イオンプロトンH+)」を細胞外に排出しなければなりません。

 「乳酸」は「モノカルボン酸トランスポーター(MCT)」という輸送担体で細胞外に排出され、「水素イオンプロトンH+)」は「液胞型プロトンATPアーゼ(vacuolar H+-ATPases)」「モノカルボン酸輸送体(monocarboxylate transporter乳酸-プロトン共輸送体)」「Na+-H+ 交換輸送体1Na+-H+ exchanger 1NHE1)」などによって細胞外に放出されます。

 このような機序で、がん細胞は積極的に「プロトン(水素イオンH+)」を細胞外に排出するので、細胞外はより「酸性」になり、逆に、細胞内は「アルカリ性」になります。


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【図】
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解糖によって産生された「水素イオンプロトンH+)」は「液胞型プロトンATPアーゼ(V-ATPases)」「モノカルボン酸輸送体(monocarboxylate transporterMCT)」「Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」などによって細胞外に放出される。
 「液胞型プロトンATPアーゼ(V-ATPases)」は ATP のエネルギーを使って「プロトン(水素イオンH+)」を細胞外に排出し、「Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」はナトリウムイオンと交換して「プロトン(水素イオンH+)」を排出する。「モノカルボン酸輸送体(MCT)」は「乳酸」と「プロトン(水素イオンH+)」を排出する。
 その結果、がん細胞の外は「プロトン(水素イオンH+)」が蓄積して「酸性化」する。がん組織(細胞外)が「酸性化」すると、がん細胞の浸潤転移が促進され、「血管新生」の亢進、抗がん剤耐性、免疫細胞の活性抑制などが引き起こされる。◆◆


 がん組織の「微小環境」は血液やリンパ液の循環が悪いので、「水素イオンプロトンH+)」は がん組織に蓄積します。
 その結果、がん細胞の周囲の組織は「水素イオンプロトンH+)」の濃度が高くなって pH が低下します。

上記の「微小環境」というのは『腫瘍の周囲に存在して栄養を送っている正常な細胞分子血管などのこと』です。腫瘍の存在によって「微小環境」が変化することもあれば、「微小環境」によって腫瘍の増殖や拡大が影響を受けることもあります。いわゆる「微小環境」とは『癌細胞の外側周囲の微小な環境』のことですブログ管理人


 正常の組織の pH は 7.3~7.4 程度とやや「アルカリ性」ですが、がん組織の「微小環境」の pH は 6.2~6.9 とより「酸性」になっている、と言われています。
 そして、がん組織の「酸性化」した「微小環境」は、がんの生存にとって様々なメリットを与えます。

 組織が「酸性化」すると正常な細胞が弱り、結合組織を分解する酵素の活性が高まるため、がん細胞が周囲に広がりやすくなり、さらに「血管新生」が誘導されるので、がん細胞の浸潤や転移が促進されます。
 組織が「酸性」になると、がん細胞を攻撃しにきた「免疫細胞」の働きが弱ります。

免疫細胞は「弱アルカリ性(pH 7.3~7.4)の下で正常に機能することができる」のです。そのため、免疫細胞が「酸性環境」にさらされると、その機能〔貪食能力〕が低下します。癌細胞は「酸性化」しているために「免疫細胞が攻撃し難い環境免疫細胞の苦手な「酸性環境)」なのですブログ管理人

 さらに「乳酸」には、がん細胞を攻撃する「細胞傷害性T細胞」の増殖や、「免疫細胞」の働きを高める「サイトカイン」の産生を抑制する作用があり、がんに対する「免疫応答」を低下させる作用もあります。

 「抗がん剤」の多くは「塩基性」なので、「酸性」の組織には「抗がん剤」が到達し難くなり、活性が低下する、ということも指摘されています。

塩基」として働く性質を「塩基性」と言い、そのような水溶液を特に「アルカリ性」と言います。
 「抗がん剤」は、癌細胞を傷害するだけでなく、正常細胞をも傷害してしまう、これが「副作用」となります。
 「抗がん剤」の多くが「塩基性」であるということは、多くの「抗がん剤」が「酸性化している癌細胞」に到達し難く傷害し難い‥、逆に「弱アルカリ性の正常細胞」には到達しやすく傷害しやすい、ということになります。
 つまり「塩基性」の「抗がん剤」は、癌細胞を傷害することが苦手で、正常細胞を傷害することのほうが得意となりますね。これでは「抗がん剤の副作用」が顕著に出てしまって当然ではないでしょうか‥ブログ管理人



 したがって、がん組織の「酸性化」を改善できれば、「抗がん剤治療」や「免疫療法」の効き目を高めることができることになります

免疫細胞も塩基性」の「抗がん剤」も弱アルカリ性(pH 7.3~7.4)の下で癌細胞を傷害しやすくなる」ため、次の記事で説明されているように、『重曹』を「経口摂取」することによって癌細胞の「酸性化」を改善すれば〔重曹』の「経口摂取」によって癌細胞の「酸性環境」が中和されて「制酸」され、「アルカリ性環境」になれば〕、「アルカリ性環境」で正常に機能できる〔アルカリ性環境が得意である〕免疫細胞や塩基性」の「抗がん剤」の「癌細胞への傷害能力」を支援することができます。

   『重曹』の 経口摂取 は、癌細胞の「酸性化」を改善して「アルカリ化」し、癌の発生の阻止、
     癌の浸潤・転移を 有意に 抑制する「抗腫瘍効果」を発揮する! - 福田一典 医師


 このように、癌細胞の「酸性化」を改善することは、癌治療を有利に進めるために非常に重要なのですブログ管理人



 さらに「水素イオンプロトンH+)」の排出メカニズムを阻害して、がん細胞内の pH を低下させれば、がん細胞を死滅させることもできます。



がん細胞内は、正常細胞よりも「アルカリ性」になっている

 がん細胞では、解糖系の亢進によって「乳酸」と「水素イオンプロトンH+)」の細胞内での産生が亢進しています。
 したがって『がん細胞内も「酸性化」している』と思うかもしれません。

 しかし、事実は逆で『がん細胞内では、正常細胞より「アルカリ性」になっている』ことが明らかになっています。
 そして、細胞内を「アルカリ」にすることが、細胞の「発がん過程の初期」から起こっており、これが「解糖系を亢進する重要な要因」になっているのです。
 つまり、がん細胞で「ワールブルグ効果「解糖系亢進」と「酸化的リン酸化」の抑制 )」が「成立する前」に、細胞内の「アルカリ化」が起こっていることが明らかになっています。

 発がん過程における「がん遺伝子」や「がん抑制遺伝子」の様々な関与については、多くの研究が行なわれています。


 一方、細胞の内外における「水素イオンプロトンH+)」の動態については、最近になって、やっと、研究が行なわれるようになりました。

 「水素イオン指数pHpotential of hydrogen)」は「水素イオンの濃度」を表す物理量です。
 「pH」の読みは「ピーエイチ英語読み)」、または「ペーハードイツ語読み)」です。

 pH は「水素イオンのモル濃度」を「mol/L」で表した数値の逆数の常用対数で示したものです。
 数値が低いほど「酸性(プロトン量が多い)」、数値が高いほど「アルカリ性(プロトン量が少ない)」になります。


 「細胞内の pH(pHi)」と「細胞外の pH(pHe)」の「pH 勾配pH gradient)」は、正常細胞と がん細胞では「逆」になっています。
 すなわち、正常細胞では 細胞内に比べて 細胞外のほうがより「アルカリ性」で、がん細胞では 細胞内が「アルカリ性」で 細胞外が「酸性」になっています。

正常細胞と癌細胞における「細胞内細胞外の pH の関係」についての図が下記されていますので参照されてください。
 正常細胞では、細胞内に比べて、細胞外のほうがより「アルカリ性」になっています。
 がん細胞では、細胞内が「アルカリ性」で、細胞外が「酸性」になっていますが、これは上記の如く、「ワールブルグ効果」によって細胞内に「乳酸」と「プロトン(水素イオンH+)」の産生が増えることで起こる「細胞内の酸性化」を防ぐための『プロトン(水素イオンH+)を細胞外に排出する作用』によるものですブログ管理人



 「がん遺伝子」を導入して細胞を「がん化」させる実験で、細胞が「がん化」する過程で、細胞内の「エネルギー産生系」が ミトコンドリアの「酸素呼吸(酸化的リン酸化)」から 解糖系にシフトします。
 この実験系で、細胞の「がん化」が進むにつれて、細胞内がより「アルカリ性」になり、細胞外がより「酸性」になることが示されています。

 そこで、この「pH 勾配」を少なくする、あるいは、正常化する(細胞内を「酸性」にして、細胞外を「アルカリ性」にする)ことが、がん治療のターゲットとして注目されています。
 がん細胞における「好気性解糖酸素が充分にあっても、解糖系に依存)」を中心とする代謝と、がん細胞の増殖を支える「血管の新生」をターゲットにした がん治療を考えたとき、細胞内外の「プロトン(水素イオンH+)動態」が重要なターゲットになるのです。


 細胞内の pH(pHi)は、細胞増殖の制御、増殖因子や「がん遺伝子」の活性、ミトコンドリアの活性、酵素活性、DNA合成、分化など、様々な細胞機能に影響しています。
 正常細胞では 細胞内の pH(pHi)は 6.99~7.05 とほぼ「中性」で、がん細胞では 細胞内の pH(pHi)は 7.12~7.7 と「アルカリ性」です。
 一方、細胞外の pH(pHe)は、正常細胞が 7.3 ~7.4 と「アルカリ性」であるのに対して、がん細胞の細胞外の pH(pHe)は 6.2~6.9 と「酸性」です。
 したがって、細胞内外の「pH 勾配」は、正常細胞と がん細胞では「逆」になっています。


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【図】
◆◆
正常細胞では、細胞内 pH(pHi)は 6.99~7.05 とほぼ「中性」で、細胞外 pH(pHe)は 7.3~7.4 と「アルカリ性」になっていて、細胞外 pH(pHe)が 細胞内 pH(pHi)より高い。
 一方、がん細胞では、細胞内 pH(pHi)は 7.12~7.7 と「アルカリ性」になって、細胞外 pH(pHe)は 6.2~6.9 と「酸性」になって、細胞内 pH(pHi)が 細胞外 pH(pHe)より高い。◆◆



がん細胞内の「アルカリ化」は「解糖系亢進(ワールブルグ効果)」を促進している

 上述のように、細胞内 pH(pHi)と 細胞外 pH(pHe)の差は、正常細胞では「マイナス(細胞外のほうが pH は高い)」で、がん細胞では「プラス(細胞内のほうが pH は高い)」になっています。

 がん細胞において、細胞内 pH が「アルカリ性」で、細胞外 pH が「酸性」という状況が、細胞増殖や「血管新生」を促進する「重要な要因」になっていることが明らかになっています。

 したがって、

    がん細胞の細胞内 pH を低下させ(がん細胞内を「酸性化」させ)、
     がん細胞の細胞外 pH を高める(がん細胞外を「アルカリ化」する)。


 この方法は「有望な がん治療」となります。

癌細胞で「酸性化」するのは、癌細胞外〔癌細胞の外側周囲の組織〕です。癌細胞内〔癌細胞の内部は「アルカリ性」になっています。この 癌細胞外 の「酸性化」が、癌の成長を促進する “癌の重要な成長因子” になっているのです。
 癌細胞における「酸性化」は “癌の重要な成長因子” となり、癌の成長を促進し、癌を進行させる大元になっています。この癌細胞の「酸性化」を「アルカリ化」する治療は、癌の成長を阻害する上で「重要な要素」となります。癌細胞の「酸性化」を「アルカリ化」すること‥、これは、癌の成長を挫いて弱め、癌の勢いを削ぎ、癌の進行を阻止するのに非常に「重要な要素」なのですブログ管理人



 がん細胞では、解糖系の亢進によって「乳酸」と「プロトン(水素イオンH+)」の産生は亢進しています。
 しかし、がん細胞では「プロトン(水素イオンH+)」の 細胞外排出能 を高めることによって、細胞内を「アルカリ性」に維持し、細胞外の「酸性度」を高めています。

 この『細胞外への「プロトン(水素イオンH+)」の排出』は、前述のように、

    Na+-H+ 交換輸送体1Na+-H+ exchanger 1NHE1
    液胞型プロトンATPアーゼ(vacuolar H+-ATPases)〔ATPアーゼ」を参照 〕
    H+/Cl 共輸送体(H+/Cl symporter)〔膜輸送体」を参照 〕
    モノカルボン酸輸送体(monocarboxylate transporterMCT乳酸-プロトン共輸送体
    ナトリウム依存性Cl−/HCO3− 交換体(Na+-dependent Cl−/HCO3− exchangers
    炭酸脱水酵素Carbonic anhydrase
    ATP合成酵素ATP synthase

 などの「トランスポーター」や酵素によって制御されています。

 がん細胞は解糖系での代謝が亢進しており、その結果「乳酸」と「プロトン(水素イオンH+)」の産生が増えています。
 この「乳酸」と「プロトン(水素イオンH+)」を「細胞外に積極的に放出する」ことによって、細胞内は「アルカリ側」に維持しています。

 がん組織は「細胞外液」の循環が悪いので、細胞外に「乳酸」や「プロトン(水素イオンH+)」が蓄積して、細胞外は「酸性」になっています。この「pH 勾配」の逆転が、がん細胞の悪性化進展に関与していることが示されています。

 「がん遺伝子」を導入して細胞の「がん化」を誘導する実験で、細胞の「がん化の過程の初期」に「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」活性が亢進して、がん細胞内の pH が「アルカリ化」することが観察されています。
 この細胞内の「アルカリ化」は、解糖系での酵素活性を高め、「好気性解糖ワールブルグ効果)」を亢進し、細胞の増殖を促進します。
 つまり、細胞の「がん化」過程において「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」活性が亢進し、細胞内の「アルカリ化」が亢進することが、細胞の解糖系と「がん化」過程をさらに亢進することになるのです。

 がん細胞の「エネルギー代謝」で、最も特徴的なのが、酸素が充分に利用できる状況でも、がん細胞はミトコンドリアでの「酸素呼吸(酸化的リン酸化)」が抑制され、酸素を使わない解糖系での「グルコース代謝(ブドウ糖代謝)」が亢進していることです。この現象は「オットー・ワールブルグ」博士によって発見されたので「ワールブルグ効果」と呼ばれています。

 解糖系と「酸化的リン酸化」の活性は 細胞内 pH(pHi)に依存していますが、その作用は「逆」です。
 つまり、細胞内の「アルカリ化」に伴って、ミトコンドリアの「酸素呼吸(酸化的リン酸化)」から解糖に移行するのです。
 細胞内 pH(pHi)が「アルカリ化」すると、解糖系酵素(ホスホフルクトキナーゼ-1」や「乳酸脱水素酵素」など )の活性が亢進することが明らかになっています。

 解糖で1分子のグルコース(ブドウ糖)から 2分子の「プロトン(水素イオンH+)」が産生されます。

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 「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」は「細胞外のナトリウムイオン」と「細胞内のプロトン(水素イオンH+)」を交換しながら、細胞内の「プロトン(水素イオンH+)」を細胞外に放出する働きを示す「交換輸送体」です。

 細胞内 pH(pHi)が低下すると(酸性化すると)「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」に「プロトン(水素イオンH+)」が結合して構造が変化し、活性化します。
 「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」の発現と活性が亢進すると、細胞内は「アルカリ化」し、細胞外は「酸性」になります。
 「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」の発現が多いほど、予後が悪いことが報告されています。

 がん細胞内が「酸性」になると「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」に「プロトン(水素イオンH+)」が結合して活性が亢進するので、細胞内の解糖系を阻害すると「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」の活性を抑制できます。
 また「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」の発現は「低酸素誘導因子-1HIF-1)」で誘導されるので、「低酸素誘導因子-1HIF-1)」の活性を抑制すると「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」の活性を抑制できます。


 「ジクロロ酢酸」や「ジインドリルメタン 」は「低酸素誘導因子-1HIF-1)」の活性を抑制します。
 (364話」参照

 「モノカルボン酸トランスポーター(Monocarboxylate transporterMCT)」は「乳酸」や「ピルビン酸」や「ケトン体」と一緒に「プロトン(水素イオンH+)」を『受動拡散』で排出する「共輸送体」です。
 これも「低酸素誘導因子-1HIF-1)」で誘導されます。

 「低酸素誘導因子-1HIF-1)」は「プロトン(水素イオンH+)」を細胞外に排出するポンプや「トランスポーター」や酵素の発現を亢進して、細胞内 pH(pHi)を「アルカリ性(pH7.3以上)」に維持しようとしています。
 したがって「低酸素誘導因子-1HIF-1)」のは発現や活性を抑えることは、がん組織の「酸性化」を阻止します。

 「モノカルボン酸トランスポーター(MCT)」は、細胞内 pH(pHi)を高め、細胞外 pH(pHe)を低下させます。
 「モノカルボン酸トランスポーター(MCT)」を阻害すると 細胞内 pH(pHi)が低下して(酸性化して)増殖活性が低下することが示されています。

 「液胞型プロトンATPアーゼ(V-ATPases)」は、ATP のエネルギーを使って「プロトン(水素イオンH+)」を細胞外に排出します。


 「Na+-H+ exchanger 1(Na+-H+ 交換輸送体1NHE1)」や「モノカルボン酸トランスポーター(MCT)」の阻害剤は「抗がん作用」が期待できるので開発中ですが、まだ臨床で使用できるものはありません。

 一方、「液胞型プロトンATPアーゼ(V-ATPases)」は、胃薬としてすでに使用されている「プロトンポンプ阻害剤」で阻害できることが報告されています。
 「プロトンポンプ阻害剤」で、細胞外を「アルカリ性」にして、細胞内を「酸性」にすると、がん細胞の増殖を抑え、「抗がん剤」の効き目を高めることができます。



がん組織の「酸性化」を促進する『V型ATPアーゼ』

 がん細胞の「水素イオンプロトンH+)」の排出に大きな役割を果たしているのが、前述の『V型ATPアーゼ』です。
 がん細胞では、この『V型ATPアーゼ』の発現が亢進しており、がん組織の「酸性化」に関与しています。

 『V型ATPアーゼ』の阻害薬が がんの治療薬として開発が行なわれていますが、胃酸分泌阻害剤としてすでに使用されている「プロトンポンプ阻害剤」が『V型ATPアーゼ』を阻害する作用があることが知られています。
 胃潰瘍の治療に使われる「プロトンポンプ阻害剤」は、主に、胃の「H+/K+ ATPase」を阻害しますが、『V型ATPアーゼ』も阻害します。
 実際に、動物の移植腫瘍を使った実験などで、「プロトンポンプ阻害剤」が腫瘍組織の「酸性化」を改善して「抗がん剤」や「免疫療法」の効果を高める作用が報告されています。


 細胞膜を隔てた「物質の輸送」には、濃度の高いほうから低いほうに向かって行なわれる『受動拡散』と、濃度勾配に逆らって「物質の輸送」を行なう『能動輸送』の2種類があります。

 『受動拡散』の場合の膜を通るルートの膜貫通タンパク質は「チャネル(channel)」と言い、『能動輸送』に関与する膜貫通タンパク質は「ポンプ(pump)」と言います。
 濃度勾配に逆らって物質を輸送するためには、ATP によるエネルギーが必要です。

 ATP のエネルギーを使って「水素イオンプロトンH+)」を能動的に輸送する「トランスポーター」として、がん細胞における「水素イオンプロトンH+)」の細胞外への排出に関与しているのが『V型ATPアーゼ』です。
 つまり「ATP依存性のプロトンポンプ」です。

 『V型ATPアーゼ』は「vacuolar ATPase」の日本語訳です。
 『液胞型ATPアーゼ』や『液胞型プロトンポンプ』などとも訳されています。

 「ATPアーゼ」とは、ATP(アデノシン三リン酸)の「末端高エネルギーリン酸結合」を加水分解する酵素群の総称で、ATP を使って生物活動を行なうタンパク質の多くが、この活性を持っています。

 つまり『V型ATPアーゼ』は、液胞の「プロトン(水素イオンH+)」の『能動輸送』を行なう「ATPアーゼ」活性を持ったタンパク質で、ATP のエネルギーを使って「プロトン(水素イオンH+)」を能動的に細胞膜を通して輸送するタンパク質です。

 『V型ATPアーゼ』は 細胞の ゴルジ体液胞リソソーム細胞膜 などの「膜系」に存在し、十数個の異なるサブユニットから構成される複合体です。ATP の「加水分解反応」と共役した「回転触媒機構」により「水素イオンプロトンH+)」を輸送し、空胞内部を「酸性化」します。

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 例えば、リソソームは細胞内に蓄積された不要物を分解したり、細胞外から取り込んだ物質を分解する小胞で、リソソームの内部は「酸性」条件下で活性化される「加水分解酵素」が含まれています。このリソソームの空胞内部に「水素イオンプロトンH+)」を輸送して内部を「酸性」にするのが『V型ATPアーゼ』です。

 細胞内では、外部の物質を取り込んで消化する「エンドサイトーシス」や、細胞内の古くなった小器官などを消化する「オートファジー」など、細胞内での物質の分解は膜で囲まれた小胞内で行なわれ、この内部の「加水分解酵素」の活性化に必要な pH に下げる役割が『V型ATPアーゼ』です。

 そして、がん細胞では、細胞内で大量に生成した「水素イオンプロトンH+)」を「細胞の外に排出する」役割も担っています。



『V型ATPアーゼ』を阻害すると、がん細胞の悪性度は低下する

 『V型ATPアーゼ』は「ATP依存性のプロトンポンプ」で、細胞膜を通して「プロトン(水素イオンH+)」を外に排出します。正常細胞では、細胞内 pH(pHi)の調節に重要な役割を果たしています。

 がん細胞では、さらに重要な役割を担っています。
 それは、がん細胞では、解糖系の亢進によって「乳酸」と「水素イオンプロトンH+)」の産生が増えて、細胞内が「酸性」になりやすい状況にあり、細胞内の「酸性化」を防がないと細胞死を起こすからです。
 したがって、がん細胞では、この『V型ATPアーゼ』の発現量が顕著に増えています。
 V型ATPアーゼ』の発現量の増加が、がん細胞の浸潤や転移や「抗がん剤抵抗性」と関連していることが明らかになっています。


 がん細胞の周囲が「酸性」になると、正常細胞(特に 免疫細胞)がダメージを受けて働きが抑制され、結合組織を分解する酵素が活性化されて、転移や浸潤や「血管新生」が促進されます。
 さらに、がん細胞の周囲が「酸性」だと、多くの抗がん剤は「塩基性」であるため、がん細胞内に集まり難くなります。
 そのため、がん細胞における「プロトンポンプ」の働きを阻害すると、がん細胞の浸潤や転移や「抗がん剤抵抗性」を抑制できる、と考えられています。

 『V型ATPアーゼ』そのものの阻害を目的にした「抗がん剤」の開発も行なわれていますが、まだ臨床で使えるものはありません。しかし、胃潰瘍の治療に使用される「プロトンポンプ阻害剤」が、この『V型ATPアーゼ』を阻害することが報告されています。

 「プロトンポンプ阻害剤」は、胃の壁細胞の「プロトンポンプ」に作用し、胃酸の分泌を抑制する薬です。
 医薬品としては「オメプラゾールオメプラールオメプラゾン)」「ランソプラゾールタケプロン)」「ラベプラゾールナトリウムパリエット)」「エソメプラゾールネキシウム)」など多数の薬が販売されています。
 これらの「プロトンポンプ阻害剤」が、がん細胞の「抗がん剤感受性」を高める効果、がん細胞に対する「免疫細胞」の働きを高める効果、がん細胞内の「水素イオン濃度pHpotential of hydrogen)」を高めて がん細胞を死滅させる効果などが報告されています(下図)。


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【図】
◆◆
がん細胞は、解糖系によるグルコース代謝(ブドウ糖代謝)が亢進して「乳酸」と「水素イオンプロトンH+)」の産生量が増える。細胞内の「酸性化」は 細胞にとって障害になるので、細胞は『V型ATPアーゼvacuolar ATPase液胞型ATPアーゼ)』や「モノカルボン酸トランスポーター(MCT)」などの仕組みを使って、細胞内の「乳酸」や「水素イオンプロトンH+)」を細胞外に排出する。その結果、がん細胞の周囲は pH が低下して、がん組織は「酸性化」している。
 組織が「酸性化」すると、「細胞傷害性T細胞」のような「がん細胞を攻撃する免疫細胞」の働きが阻害される。
 「塩基性」の「抗がん剤」は「酸性」の組織に到達し難くなり「抗がん剤」が効かなくなる。
 さらに、周囲の正常細胞がダメージを受け、タンパク分解酵素が活性化して、がん細胞の浸潤や転移が促進される。
 腫瘍を養う「血管の新生」も誘導される。
 胃酸分泌阻害剤として使われている「プロトンポンプ阻害剤」は『V型ATPアーゼV-ATPase)』を阻害することにより、がん組織の「酸性化」を抑制し、がん細胞の浸潤や転移を抑制し、「抗がん剤」や「免疫療法」が効きやすくする効果が報告されている。さらに、がん細胞内の「酸性化」が亢進すると、がん細胞を死滅できる可能性も報告されている。◆◆



「プロトンポンプ阻害剤」は「抗がん剤」の効き目を高める

 「抗がん剤治療」と「プロトンポンプ阻害剤」の併用の有用性を示す論文が報告されています。
 人間での有効性も報告されています。

 以下のような論文があります。


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   Proton pump inhibitor chemosensitization in human osteosarcoma: from the bench to the patients' bed.
    (ヒト線維肉腫における「プロトンポンプ阻害剤」による「抗がん剤感受性」の亢進実験台の結果から臨床へ
    〔J Transl Med. 2013 Oct 24;11:268. doi: 10.1186/1479-5876-11-268.


【要旨】

〔研究の背景〕
 がんの基礎研究を臨床応用に反映させる上で、最も大きな目標は、現行の「抗がん剤治療」の『全身的な毒性』を減らし、「抗腫瘍効果」を高めることである。
 多くの がん組織において認められる「微小環境」の「酸性化」は、がん細胞が「抗がん剤」の効き目を減弱させるメカニズムとしては非常に有効な方法である。
 それは、「水素イオンプロトンH+)」が多い環境に「抗がん剤」が到達すると、その「抗がん剤」は「プロトン付加protonation)」と「中性化」によって、がん細胞内に入り込み難くなるからである。
 この腫瘍組織の性状を「プロトンポンプ阻害剤」が変えることによって、がん細胞の「抗がん剤感受性」が高まることを、我々は以前の研究で示している。
 この研究では「プロトンポンプ阻害剤」が「骨肉腫」に対する「抗がん剤感受性」を高める効果があるかどうかを検討した。

〔方法〕
 「MG-63」と「Saos-2」の2種類の「ヒト骨肉腫細胞の細胞株」を用いて実験を行なった。
 マウスに「肉腫細胞」を移植する実験系で「プロトンポンプ阻害剤」で前処理したあとに「シスプラチン」を投与し、細胞増殖に対する作用を評価した。
 臨床において「メソトレキセート」と「シスプラチン」と「アドリアマイシン」による「補助化学療法」において「プロトンポンプ阻害剤」の前投与による効果を検討する多施設臨床試験を実施した。

〔結果〕
 「培養細胞を使った実験」と「移植腫瘍を用いた実験」で2種類の「ヒト骨肉腫細胞株」のどちらに対しても、「プロトンポンプ阻害剤」は「シスプラチン」に対する「抗がん剤感受性」を高めた。
 「プロトンポンプ阻害剤」の「エソメプラゾールesomeprazole)」を前投与する臨床試験では、 がん組織の壊死した組織の割合から評価した「抗がん剤治療」による「抗腫瘍効果」を「エソメプラゾール」は増強した。
 この作用は、治療が困難な「骨肉腫の組織型である軟骨芽細胞骨肉腫(chondroblastic osteosarcoma)」において、特に顕著に認められた。
 「プロトンポンプ阻害剤」投与によって副作用が増強することはなかった。

〔結論〕
 標準的な「抗がん剤治療」に「プロトンポンプ阻害剤」を併用することが有効であることの証拠を本研究は示している。


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 「プロトンポンプ阻害剤」が、がん細胞の「抗がん剤感受性」を高めることは、今までに多くの報告があります。

 がん細胞では、解糖系が亢進し、「乳酸」の産生が亢進し、組織が「酸性化」しているのが特徴です。
 この組織の「酸性化」は「免疫細胞」の働きを弱めたり、結合組織を分解する酵素の活性を高めて がん細胞の浸潤や転移を促進したり、「血管新生」を促進する作用などがあります。
 さらに「抗がん剤」が、がん細胞内に入り難くなったり、活性が低下する作用もあります。
 したがって、がん組織の「酸性化」を阻止すると「抗がん剤」が効きやすくなることが多くの動物実験で示されています。

 そして、この論文では、人間での臨床試験の結果で「プロトンポンプ阻害剤」が「抗がん剤治療」の効果を高めることを報告しています。
 この臨床試験では、手術可能な「骨肉腫」の患者を対象にして「プロトンポンプ阻害剤」の「エソメプラゾールesomeprazole)」を術前「補助化学療法(メソトレキセートシスプラチンアドリアマイシン)」の投与を受ける前の2日間の内服を受けています。
 そして、手術後の腫瘍組織の病理検査で、「抗がん剤治療」によって がん組織が壊死した程度を、過去のデータと比較しています。
 その結果、「抗がん剤治療」が良く効いた症例(good responder壊死した腫瘍部分が 90% 以上)の割合は「抗がん剤治療」単独では 47% に対して、「抗がん剤」に「プロトンポンプ阻害剤」を併用した場合は 57% に増加する、という結果が得られています。

 治療に抵抗性の「軟骨芽骨肉腫(chondroblastic osteosarcoma)」の場合は、「抗がん剤」単独では「good responder」は 25% に対して、「プロトンポンプ阻害剤」を併用すると 61% になる、という結果が得られています。そして、副作用の程度は、両群で差は認められていません。
 「プロトンポンプ阻害剤」を服用して、がん組織の pH を「アルカリ側」にすることは、がん治療にプラスになる、と言えそうです。

 次のような論文もあります。


   Lansoprazole as a rescue agent in chemoresistant tumors
      a phase I/II study in companion animals with spontaneously occurring tumors.

   (抗がん剤抵抗性腫瘍の救援成分としてのランソプラゾール自然発症腫瘍をもつペット動物における第I/II相試験
   〔J Transl Med. 2011; 9: 221.


 「ランソプラゾール」は「タケプロン」という商品名の「胃酸分泌阻害剤」です。

 「抗がん剤 単独〔犬10匹猫7匹」と「抗がん剤+Lansoprazole(ランソプラゾール)〔犬27匹猫7匹〕」で検討し、「抗がん剤 単独群」では 17% に短期間の部分奏功を認めましたが、その他はすべて2ヵ月以内に死亡しました。
 「Lansoprazole(ランソプラゾール)を併用した群」では、部分奏功+完全奏功が 67.6% でした。
 奏功しなかった動物でも、QOL の改善を認めました。



「プロトンポンプ阻害剤」と「ジクロロ酢酸」は、相乗効果で、
  がん組織の「酸性化」を軽減する


 「ジクロロ酢酸」は「ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ」を阻害して「ピルビン酸脱水素効果」を活性化して、ミトコンドリアでの「酸素呼吸(酸化的リン酸化)」を亢進し、「乳酸」と「プロトン(水素イオンH+)」の産生を抑制します。

 「ジクロロ酢酸」は「低酸素誘導因子-1HIF-1)」の活性を抑える作用もあります(364話」参照 )。
 「低酸素誘導因子-1HIF-1)」は「乳酸脱水素酵素」を活性化するので、「低酸素誘導因子-1HIF-1)」の活性阻害は「乳酸」と「プロトン(水素イオンH+)」の産生を減らします。

 「線維肉腫細胞(HT1080)」を移植したヌードマウスの実験モデルで、「ジクロロ酢酸ナトリウムDCA)」と「オメプラゾール」は相乗的に増殖を抑制する、という報告があります。
 「ジクロロ酢酸ナトリウムDCA)」で、ピルビン酸 から アセチルCoA への変換を促進すると「乳酸」の産生が抑制されます。プロトンポンプ阻害剤」と「ジクロロ酢酸ナトリウムDCA)」の併用は、がん組織の「酸性化」を抑制する効果を高めることになります

 「ジクロロ酢酸ナトリウムDCA)」と「プロトンポンプ阻害剤オメプラゾール)」の併用で「相乗効果」が期待できることが報告されています。以下のような論文があります。


   Cotreatment with dichloroacetate and omeprazole exhibits a synergistic antiproliferative effect
      on malignant tumors.

   (「ジクロロ酢酸」と「オメプラゾール」の併用投与は、悪性腫瘍に対して相乗的な「増殖抑制効果」を示す
   〔Oncol Lett. 3(3): 726–728.2012年


 「線維肉腫細胞」を移植したヌードマウスの実験で、「ジクロロ酢酸ナトリウム 50mg/kg」+「オメプラゾールプロトンポンプ阻害剤)2mg/kg」の併用で、著明な「腫瘍の縮小」が認められています。
 それぞれ、単独では「腫瘍の縮小」は認めなかったが、併用すると著明な「縮小効果」が認められた、という結果です。
 正常な「線維芽細胞」に対しては「増殖抑制効果」は認めなかった、と報告されています。

 「プロトンポンプ阻害剤PPI)」は、がん細胞に対する「免疫細胞」の攻撃力を高めます。
 「プロトンポンプ阻害剤PPI)」が「骨肉腫」や「転移性乳がん」や「頭頚部がん」の「抗がん剤治療」の効き目を高めることが臨床試験で示されています。

 「ジクロロ酢酸ナトリウムDCA)」の投与で、がん組織の「酸性化」が緩和されると「免疫細胞」の働きが良くなって「抗腫瘍免疫」による「抗がん作用」が強化されることが報告されています。
 がん組織の「酸性化」が「免疫細胞」の働きを抑制するからです。

癌組織の「酸性化」が「免疫細胞」の働きを抑制します〔上述の如く、免疫細胞は「酸性環境」の下では機能が低下するためです〕。ですから、癌組織の「酸性化」を緩和すれば「免疫細胞」の働きが良くなり「抗腫瘍免疫」が活性化するので「抗がん作用」が強化されるのですブログ管理人

 したがって「ジクロロ酢酸ナトリウムDCA)」と「プロトンポンプ阻害剤」の併用は「抗腫瘍免疫」の活性化にも効果が期待できます(359話」参照 )。


 「ジクロロ酢酸ナトリウムDCA)」単独での治療では「抗腫瘍効果」に限界があります。
 そこで、いろんな組合せが試されています。

 標準治療としては、種々の「抗がん剤」との併用で「抗腫瘍効果」を高める作用が報告されています。
 「プロトンポンプ阻害剤」は「抗がん剤治療」による胃粘膜障害による副作用や消化器症状を緩和するという臨床試験の結果も報告されています。
 したがって「抗がん剤治療」や「免疫療法」を受けているときに、がん組織の「酸性化」を軽減し、胃腸症状を緩和する目的で「プロトンポンプ阻害剤」を併用するメリットはあると言えます。

 その他、解糖系を阻害する「2-デオキシ-D-グルコース2-DG)」や『ケトン食』の併用も、がん組織の「酸性化」を抑制して「抗がん剤治療」の効き目を高めると言えます(トップの図を参照)。




 528)がん組織の「アルカリ化」と「抗がん剤治療」(その2):
 
    重曹治療(重炭酸ナトリウム)

 【「『漢方がん治療』を考える(福田一典 医師)」
より 】

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【図】
◆◆
がん細胞は解糖系による「グルコース代謝(ブドウ糖代謝)」が亢進して「乳酸」と「水素イオンプロトンH+)」の産生量が増える。( そのため、がん細胞内は「乳酸(酸性物質)」と「水素イオンプロトンH+)」が蓄積することにより「酸性化」傾向になる。ブログ管理人の追加文
 細胞内の「酸性化」は細胞にとって障害になるので、細胞は「V型ATPアーゼvacuolar ATPase液胞型ATPアーゼ)」や「モノカルボン酸トランスポーター(MCT)」や「Na+-H+ 交換輸送体1Na+-H+ exchanger 1NHE1)」などの仕組みを使って、細胞内の「乳酸」や「水素イオンプロトン)」を細胞外に排出する。
 その結果、がん細胞の周囲は pH が低下して、がん組織は「酸性化」している。組織が「酸性化」すると、免疫細胞の働きが抑制され、「血管新生」が促進し、がん細胞の浸潤や転移も促進される。
 『重曹重炭酸ナトリウム / 別名炭酸水素ナトリウム)』を経口摂取すると、がん細胞外の「水素イオンプロトン)」と反応して、がん組織の「酸性化」を抑制できる。◆◆



がん細胞外は「酸性」になっている


 特殊な試薬と「MRI(磁気共鳴画像診断)」を組み合わせた方法で、生体内の組織の pH を測定することができます。
 研究の結果、がん組織が「酸性化」していることが明らかになっています。

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【図】
◆◆ 移植した腫瘍組織が「酸性化」していることが示されている。
◆◆


 正確には、がん細胞内は「アルカリ性」で、がん細胞外が「酸性化」しています。
 これについては「527話」で解説しています。

 がん細胞では、解糖系での「グルコース代謝(ブドウ糖代謝)」が亢進し、ミトコンドリアでの「酸化的リン酸化」が抑制されており、これを「ワールブルグ効果」あるいは「好気性解糖」と言います。

 グルコース(ブドウ糖)1分子が解糖で2分子の「乳酸」になるときに、2分子の「プロトン(水素イオンH+)」が産生されます。

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 細胞内の pH が低下して「酸性」になると細胞内のタンパク質の活性や働きは阻害され、pH 低下が顕著になれば(細胞内の「酸性化」が顕著になれば)、細胞は死滅します。
 そこで、がん細胞は「乳酸」や「水素イオンプロトン)」を細胞外に積極的に排出しています。

 「乳酸」は「モノカルボン酸トランスポーター(MCT)」という輸送担体で細胞外に排出され、「水素イオン」は「液胞型プロトンATPアーゼ(vacuolar H+-ATPases)」「モノカルボン酸輸送体(monocarboxylate transporter乳酸-プロトン共輸送体)」「Na+-H+ 交換輸送体1Na+-H+ exchanger 1NHE1)」などによって細胞外に放出されます。
 このような機序で、がん細胞は積極的に「プロトン(水素イオンH+)」を細胞外に排出するので、細胞外はより「酸性」になり、逆に、細胞内は「アルカリ性」になります。

 がん組織の「微小環境」は血液やリンパ液の循環が悪いので、「水素イオン」は がん組織に蓄積します。
 その結果、がん細胞の周囲の組織は「水素イオン」の濃度が高くなって pH が低下します。

上記の「微小環境」というのは『腫瘍の周囲に存在して栄養を送っている正常な細胞分子血管などのこと』です。腫瘍の存在によって「微小環境」が変化することもあれば、「微小環境」によって腫瘍の増殖や拡大が影響を受けることもあります。いわゆる「微小環境」とは『癌細胞の外側周囲の微小な環境』のことですブログ管理人


 正常の組織の pH は 7.3~7.4 程度とやや「アルカリ性」ですが、がん組織の「微小環境」の pH は 6.2~6.9 とより「酸性」になっていると言われています。


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【図】
◆◆ 正常細胞では、細胞内 pH(pHi)は 6.99~7.05 とほぼ「中性」で、細胞外 pH(pHe)は 7.3~7.4 と「アルカリ性」になっていて、細胞外 pH(pHe)が 細胞内 pH(pHi)より高い。
 一方、がん細胞では、細胞内 pH(pHi)は 7.12~7.7 と「アルカリ性」になって、細胞外 pH(pHe)は 6.2~6.9 と「酸性」になって、細胞内 pH(pHi)が 細胞外 pH(pHe)より高い。
◆◆




がん組織の「酸性化」が、がん細胞の浸潤や転移を促進している

 がん組織の「酸性化」した「微小環境」は、がん細胞の生存にとって様々なメリットを与えます。
 組織が「酸性化」すると正常な細胞が弱り、結合組織を分解する酵素の活性が高まるため、がん細胞が周囲に広がりやすくなり、さらに「血管新生」が誘導されるので、がん細胞の浸潤や転移が促進されます。

 組織が「酸性」になると、がん細胞を攻撃しにきた「免疫細胞」の働きが弱ります。
 さらに「乳酸」には、がん細胞を攻撃する「細胞傷害性T細胞」の増殖や、「免疫細胞」の働きを高める「サイトカイン」の産生を抑制する作用があり、がんに対する「免疫応答」を低下させる作用もあります。

免疫細胞は「弱アルカリ性(pH 7.3~7.4)の下で正常に機能することができる」のです。そのため、免疫細胞が「酸性環境」にさらされると、その機能〔貪食能力〕が低下します。癌細胞は「酸性化」しているために「免疫細胞が攻撃し難い環境免疫細胞の苦手な「酸性環境)」なのですブログ管理人


 「抗がん剤」の多くは「塩基性」なので、「酸性」の組織には「抗がん剤」が到達し難くなり、活性が低下する、ということも指摘されています。

塩基」として働く性質を「塩基性」と言い、そのような水溶液を特に「アルカリ性」と言います。
 「抗がん剤」は、癌細胞を傷害するだけでなく、正常細胞をも傷害してしまう、これが「副作用」となります。
 「抗がん剤」の多くが「塩基性」であるということは、多くの「抗がん剤」が「酸性化している癌細胞」に到達し難く傷害し難い‥、逆に「弱アルカリ性の正常細胞」には到達しやすく傷害しやすい、ということになります。
 つまり「塩基性」の「抗がん剤」は、癌細胞を傷害することが苦手で、正常細胞を傷害することのほうが得意となりますね。これでは「抗がん剤の副作用」が顕著に出てしまって当然ではないでしょうか‥
ブログ管理人


 したがって、がん組織の「酸性化」を改善できれば、「抗がん剤治療」や「免疫療法」の効き目を高めることができることになります

免疫細胞も塩基性」の「抗がん剤」も弱アルカリ性(pH 7.3~7.4)の下で癌細胞を傷害しやすくなる」ので、下記で説明されている如く、『重曹』を「経口摂取」することによって癌細胞の「酸性化」を改善すれば〔重曹』の「経口摂取」によって癌細胞の「酸性環境」が中和されて「制酸」され、「アルカリ性環境」になれば〕、「アルカリ性環境」で正常に機能することができる〔アルカリ性環境が得意である〕免疫細胞や塩基性」の「抗がん剤」の「癌細胞への傷害能力」を支援することができるのですブログ管理人


 さらに「水素イオン」の「排出メカニズム」を阻害して、がん細胞内の pH を低下させれば、がん細胞を死滅させることもできます。

 がん組織の「酸性化」を阻止する方法として、胃潰瘍の治療に使う「プロトンポンプ阻害剤」や、解糖系を抑制する「2-デオキシ-D-グルコース」「ジクロロ酢酸ナトリウム」の併用療法について前回(527話)解説しています。

 これに『重炭酸ナトリウム炭酸水素ナトリウムや重曹とも言う)』の摂取を併用すると、さらに、がん組織の「酸性化」を抑制できます。『重曹療法』は、単独でも、ある程度の効果はあるようです。
 さらに「抗がん剤治療」や「免疫療法」の「抗腫瘍効果」を高めることが多くの研究で明らかになっています。



重炭酸ナトリウム』は食品や医薬品として利用されている

 『重炭酸ナトリウムsodium bicarbonate)』は『重炭酸ソーダ略して重曹)』や『炭酸水素ナトリウムsodium hydrogen carbonate)』とも呼ばれます。
 日本語では『炭酸水素ナトリウム』や『重曹』の呼び名が多いようですが、英文の論文では、ほとんどが「sodium bicarbonate」となっていますので、ここでは『重炭酸ナトリウムsodium bicarbonate)』や『重曹』を使っています。

 化学式は「NaHCO3」で表わされます。
 ナトリウムの「炭酸水素塩」です。

 『重炭酸ナトリウム』は、加熱によって二酸化炭素を発生する性質を利用して「ベーキングパウダー」として調理に使用されます。口中で炭酸ガスを発生させる「ソーダ飴」などには粉末で封入されます。

 水に『重炭酸ナトリウム』と『クエン酸』を混ぜると炭酸ガスが発生し「炭酸水」となるので、飲料の材料としても用いられています。砂糖を加え「サイダー」にしたり、レモンを加え「レモンソーダ」にするということもできます。

 「医薬品」としては、胃酸過多に対して「制酸剤」として使われたり、「酸性血症(アシドーシス)」の治療(アシドーシス〔酸性に傾いた状態〕の改善)に使われています。過剰に摂取すると「ナトリウムの過剰摂取」が問題になりますが、適切な量であれば「安全性の高い化合物」です。

 『重炭酸ナトリウム』は「水素イオンプロトン)」と反応して「二酸化炭素(CO2)」と「水(H2O)」になります。
 この反応を利用して、がん組織に多く蓄積している「水素イオン」を除去して、がん組織の「酸性化」を阻止することができます。

 このような『重炭酸ナトリウム重曹)』を摂取する がん治療の有効性を示す報告が増えています。

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【図】
◆◆重炭酸ナトリウム』を「経口摂取」すると、血中に入った「重炭酸イオンHCO3-)」が がん組織に蓄積している「水素イオンプロトン)」と反応して「二酸化炭素(CO2)」と「水(H2O)」になり、二酸化炭素は呼気に排出され、水は血液に拡散する。この反応によって、がん組織の「酸性化」を抑制できる。
◆◆



『重炭酸ナトリウム』は、がん細胞の転移を抑制する

 がん組織の「酸性化」は、がん細胞の浸潤や転移を促進します。
 『重炭酸ナトリウム重曹)』を「経口摂取」すると「がん細胞の浸潤や転移を抑制できる」ことが、動物実験で報告されています。

 以下のような報告があります。


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   Bicarbonate Increases Tumor pH and Inhibits Spontaneous Metastases.
    (重炭酸ナトリウムは、腫瘍の pH を高めて転移を阻止する
    〔Cancer Res. 2009 Mar 15; 69(6): 2260–2268.


【要旨の抜粋】

 がん細胞における解糖による「グルコース代謝(ブドウ糖代謝)」の亢進と、がん組織では血液やリンパ液の循環が悪いので、がん細胞の外側に「水素イオン」が蓄積し、その結果、固形がんの周囲は「酸性」になっている。

 培養細胞や動物実験で、組織の「酸性化」は がん細胞の浸潤や転移を促進することが明らかになっている。

 本研究では、マウスの動物実験モデルを用いて、腫瘍組織の「酸性化」の阻止が がん細胞の転移を抑制できるかどうか、を明らかにする目的で行なった。

 転移性乳がんのマウスの実験モデルを用いて、『重炭酸ナトリウムNaHCO3)』を担がんマウスに「経口で投与する」と、腫瘍組織の pH は上昇し(アルカリ化し)、自然発生的な転移の形成が減少した

 この治療法はがん細胞外の pH(pHe)を有意に上昇させ、細胞内 pH(pHi)は上昇させなかった。

 『重炭酸ナトリウム治療重曹療法)』は、血中を循環する がん細胞の数を減らすことはなかった。

 一方、がん細胞を脾臓内に注入して肝臓転移を起こす実験系で、肝臓転移が有意に減少した
 これは、がん細胞の血管外遊出と着床の段階を阻止していることを示唆している。


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 この実験では、『重炭酸ナトリウム』の摂取が血中の pH を上げることはなく、また、原発腫瘍の増殖を抑制することは認めませんでした。ただし、転移の発生を有意に抑制しました

 がん組織の「酸性化」は「カテプシンB」などの細胞外マトリックスを分解するタンパク分解酵素を活性化する作用があるので、転移の過程を促進すると考えられています。

 「経口」で『重炭酸ナトリウム』を摂取すると「酸性化」した がん組織が「アルカリ性」になるので、転移が抑制される、という機序です。


 この実験では、コントロールの がん組織の pH は 7.0 ± 0.11 で、『重炭酸ナトリウム』を投与したマウスの がん組織の pH は 7.4 ± 0.06 でした。
 細胞内 pH(pHi)は、コントロール群が 7.1 ± 0.09 で、『重炭酸ナトリウム』を投与したマウスの がん細胞では 7.0 ± 0.06 で、有意な差は認めていません。

 同じマウスの正常組織(後脚の筋肉組織)の細胞内 pH(pHi)は 7.22 ± 0.04、細胞外 pH(pHe)は 7.40 ± 0.08 で、『重炭酸ナトリウム』の投与で影響を受けませんでした。


 このマウスを使った実験では、200mmol/L の濃度の『重炭酸ナトリウムNaHCO3)』が入った「飲料水」を自由摂取で与えています。『重炭酸ナトリウム』の分子量は 84 ですので、200mmol/L は 16.8g/L を自由摂取しています。

 マウスは、人間に比べて、体重当たりの「飲水摂取量」が 5~10倍くらいあります。
 エサも、体重当たりで換算すると 5~10倍くらいです。

 この実験では(マウスの)1日の「飲水摂取量」は 4.2 ± 0.2mL でした。
 マウスの体重は 20g 程度ですので、体重の「5分の1」程度の水を1日に飲みます。
 60kg の人間で「12リットル」に換算されます。

 ネズミと人間は「体重当たりの代謝率」が異なり、小さい動物ほど、体重当たりの飲水やエサの摂取量は多くなります。
 標準代謝量は体重の「3/4乗(正確には0.751乗)」に比例する、という法則があり、一般に、マウスの体重当たりのエネルギー消費量や薬物の代謝速度は、人間の「約7倍」と言われています。体表面積では、ほぼ同じになります。
 これについては「293話」で解説しています。

 このような計算では、この実験でマウスが摂取した『重炭酸ナトリウム』は、体表1m2 当たり1日に 9.4g になります。9.4g/m2/d は 70kg の人間で1日「12.5g」になると、この論文の考察に記述されています。



『重炭酸ナトリウム』は「pH 緩衝剤」として安全に利用できる

 上記の論文と同じ「Cancer Research」の同じ号に以下のような論文も掲載されています。


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  The Potential Role of Systemic Buffers in Reducing Intratumoral Extracellular pH and Acid-Mediated Invasion.
   (腫瘍組織内の「細胞外酸性化」と「酸誘導性の浸潤」の軽減における「全身性緩衝剤」の可能性
   〔Cancer Res. 2009 Mar 15; 69(6): 2677–2684.


【要旨】

 正常組織に比べて、がん組織の細胞外 pH(pHe)は低下(酸性化)しており、この(がん細胞での細胞外 pH(pHe)の「酸性化」が、がんの原発巣や転移巣において増殖や浸潤を促進していることは、多くの研究によって示されている。

 この研究は、「pH 緩衝剤」を全身性に投与することによって、がん組織内、及び、がん組織周囲の「酸性化」を軽減し、がん細胞の増殖と悪性進展を阻止できる、という仮説を検証するために行なった。

 生体内において、全身性の「pH 緩衝剤」によって「腫瘍組織の細胞外 pH(pHe)を高める(がん細胞の「酸性化」を改善して「アルカリ化」する)」ために必要な投与量を決めるのにコンピューター・シュミレーションを利用し、この目的に適する化合物を探索した。

 『重炭酸ナトリウムNaHCO3)』が、通常の臨床試験で使用されている量の摂取によって、この目的に利用できることを明らかにした。

 さらに、腫瘍組織の「酸性化」の軽減が、血液や正常組織の pH に影響することなく、腫瘍の増大と浸潤を有意に抑制することを認めた。

 ある物質の pH の「緩衝作用」の有効性を決める重要な要素は、その「pKa(酸解離定数)」である。
 『重炭酸ナトリウムNaHCO3)』の「pKa」が 6.1 であり、これは細胞外の「pH 緩衝剤」としては理想とは言えない。
 細胞外 pH(pHe)を高めるためには「pKa が7に近いもの」がより有効である。

 がん組織の細胞外 pH(pHe)を高め、がん細胞の増殖浸潤を阻害する目的で、全身性の「pH 緩衝剤」を利用することは有用である


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 正常細胞の細胞外の pH(pHe)は 7.2~7.4 程度とやや「アルカリ性」です。
 しかし、がん細胞の細胞外 pH(pHe)は 6.6~7.0 と「酸性化」しています。
 この『がん組織の「酸性化」を中和して「酸性度」を低下させる全身性の「pH 緩衝剤」の服用』は、がん治療に有効に作用することが明らかになっています。

 理想的な「pH 緩衝剤」は「pKa(酸解離定数)が7に近いもの」が良く、『重炭酸ナトリウムNaHCO3)』の「pKa」が 6.1 であるため、まだ「より有効性の高いもの」がないか探索しています。
 しかし、他の「バッファー(pH 緩衝剤)」では、副作用などの観点から、現時点では『重炭酸ナトリウム重曹)』が最も使いやすい、という考察です。

 「重炭酸イオンHCO3-)」は「水素イオンH+)」と反応して「二酸化炭素(CO2呼気から排出)」と「水(H2O血液に拡散)」になるので、副作用は起こり難い、という理由のようです。
 「重炭酸イオンHCO3-)」は体内で生理的に「pH 緩衝剤」として働いており、人工的な「pH 緩衝剤」は長期間の服用には「安全性に問題がある」ということです。
 『重曹』は「食品」や「医薬品」として利用され、1日10~20g 程度で、がん組織の「酸性化」の軽減に有効に作用し、この程度の量であれば、長期に使用しても「安全性に問題がない」ことが知られているからです。


 この論文では、血中の「重炭酸イオンHCO3-)」の上昇は、血液の pH には影響せずに、がん組織と がん組織周辺の「酸性血症(アシドーシス)」を正常化することを確認しています。

 『重炭酸ナトリウム』は血液のような正常な pH(7.35~7.45)を「アルカリ化」することはせずに、「酸性化」した がん組織(pH が 6.6~6.9)は正常な pH に向けて「緩衝作用」を示すことが示されています。

 この論文では、70kg の人間換算で1日「37g」の『重炭酸ナトリウム』の摂取で行なっています。
 この論文の考察では、『重炭酸ナトリウム』の1日の摂取量は「25g」から「50g」程度を推奨しています。

 この程度の投与量は、「尿細管性アシドーシス」や「鎌状赤血球症」などの治療で、長期間(1年以上)使用されており、「安全性には問題ない」と記述されています。


 さらに、この論文では、79歳の「全身転移のある腎臓がんの患者」の例を記載しています。

 最初の「抗がん剤治療」が無効だったために、その患者さんは「標準治療」を中止し、ビタミンやサプリメントと一緒に「60g」の『重炭酸ナトリウム』を摂取する代替医療を自分で開始しました。そして、この論文を投稿するまでの10ヵ月間、がんの進行は止まって、病状が安定している、という症例を紹介しています。



重炭酸ナトリウム』は「発がん」過程を抑制する

 以下のような論文があります。


   Systemic Buffers Inhibit Carcinogenesis in TRAMP Mice.
    (全身性の「pH緩衝」は、TRAMP マウスの「発がん」を阻害する
    〔J Urol. 2012 Aug; 188(2): 624–631.


 がん組織の「微小環境」において、組織の「低酸素」や「酸性化」が「発がん」過程を促進することが知られています。
 さらに、がん組織の「低酸素」や「酸性化」が、がん細胞の浸潤性や転移を促進することが報告されています。

 そこで「初期のがん組織」の段階で、「pH 緩衝剤重炭酸ナトリウム)」を使って、がん組織の「酸性化」を阻止すると、がんの進行や浸潤性の性質が抑えられるかどうか、を検討する目的で実験が行なわれています。

 「低酸素」はグルコース(ブドウ糖)の「解糖系の代謝」への移行を促進し、「乳酸」と「水素イオンプロトン)」の産生を増やして、がん組織の「酸性化」を促進します。
 がん組織の「酸性化」は、さらに、がん細胞の浸潤や転移を促進します。
 その結果、「初期のがん」が「進行がん」になっていきます。


 TRAMP マウスは、発がんタンパク質の「SV40抗原」を発現させることによって、自然発症の「前立腺がん」を発生させることができる遺伝子改変マウスです。「がん予防効果」のある成分の探索などにも使われます。
 この「前立腺がん」を自然発症するマウスを用いて、『重炭酸ナトリウム』を「経口投与」すると、がんの発生が予防できるかどうか、を検討しています。

 『重炭酸ナトリウム』の投与は 200mM の濃度で『重炭酸ナトリウム』を溶かした「飲水」の自由摂取を「4週齢」と「10週齢」から開始しています。
 コントロール群(重炭酸ナトリウム非投与)では、TRAMP マウスの18匹すべてで、平均「13週齢」で、3次元超音波検査で「前立腺がん」の発生を認めました。
 すべてのマウスが「52週齢」以内( 中央値「37週齢」)に死亡しました。

 『重炭酸ナトリウム』の投与を「6週齢」以前に開始した10匹のマウスでは、すべてが「76週」以上まで生存し、超音波検査で「前立腺がん」の発生は認めませんでした。
 解剖による前立腺の組織学的検査では、前立腺組織の過形成(hyperplasia)は認めましたが、70%には がんは認めず、残り30%では「高分化型の小さな前立腺がん」が認められました。

 『重炭酸ナトリウム』の摂取を「6週」以降に開始した9匹の TRAMP マウスでは、「前立腺がん」の発生はコントロール群と同じでした。

 つまり、『重炭酸ナトリウム』の摂取を「早い段階」から開始すれば、「前立腺がん」の自然発症モデルの TRAMP マウスの発がんを抑制できる、という結果です。
 全身性の「pH 緩衝剤」としての『重炭酸ナトリウム』が「初期のがん」から「浸潤性のがん」への進展を抑制できるという結果です。
 この実験系で「6週齢」以前に『重炭酸ナトリウム』の摂取を開始すると、がんの発生を阻止して天寿まで生きれる、という結果です。

 TRAMP マウスは「がんウイルス抗原の SV40タンパク質」を発現させて強力に発がんさせるモデルなので、がんの発生を完全に抑制できる効果は、かなり強い「がん予防効果」と言えます。


 この論文では、マウスに投与した『重炭酸ナトリウム』の量は、人間に換算すると1日「約0.4g/kg」と記載されています。60kg で「24g」です。この投与量は「鎌状赤血球症」の臨床試験で1年以上の投与が行なわれています。

 しかし、人間で「がん予防」の目的での臨床試験には使うのが困難かもしれません。
 人間での「がん予防効果」の評価には「数年以上の長期間の試験」が必要だからです。
 しかし、もっと安全で有効な「pH 緩衝剤」が開発できれば、長期の「がん予防」試験にも利用できるかもしれないと言っています。



重炭酸ナトリウム』は「mTORC1 阻害剤」の効き目を高める

 以下のような論文があります。


   Acidic tumor microenvironment abrogates the efficacy of mTORC1 inhibitors.
    (腫瘍組織の「酸性の微小環境」は「mTORC1 阻害剤」の効果を阻害する
    〔Mol Cancer. 2016 Dec 5;15(1):78.


 「mTORC1哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1)」は「セリン・スレオニンキナーゼ(タンパク質の「セリン」や「スレオニン」をリン酸化する酵素)」の一種で、細胞の分裂や生存などの調節に中心的な役割を果たしています。
 栄養摂取やインスリン成長ホルモンIGF-1サイトカインなどの増殖刺激が細胞に作用すると、それらの受容体などを介して「PI3キナーゼ(Phosphoinositide 3-kinasePI3K)」というリン酸化酵素が活性化され、これが「Akt(別名Protein Kinase B)」という「セリン・スレオニンリン酸化酵素」をリン酸化して活性化します。
 活性化した「Akt」は、細胞内のシグナル伝達に関与する様々なタンパク質の活性を調節することによって細胞の増殖や生存()の調節を行ないます。この「Akt」のターゲットの一つが「mTORC1」というわけです。

 「Akt」によってリン酸化(活性化)された「mTORC1」は、細胞分裂や細胞死や血管新生やエネルギー産生などに作用して、がん細胞の増殖を促進します(下図)。


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【図】
◆◆ 栄養摂取やインスリンインスリン様成長因子-1IGF-1)、サイトカインなどの増殖刺激が細胞に作用すると「PI3K」が活性化され、その下流に位置する「Akt」の活性化、「mTORC1」の活性化と増殖シグナルが伝達される。「mTORC1」は栄養素の取込みやエネルギー産生、細胞分裂増殖、細胞生存、抗がん剤抵抗性、血管新生を亢進し、「オートファジー自食作用)」を抑制するので、「mTORC1」の活性化は がん細胞の発生や増殖や転移を促進する方向で働く。「ラパマイシン」は「mTORC1」の活性を直接阻害することによって「抗がん作用」を発揮する。
◆◆


 「mTOR 阻害剤」は「免疫抑制」という欠点を持ちますが、がん細胞や 肉腫細胞の多くにおいて「mTOR」が活性化されているため、「抗がん剤」として有効性が高く、すでに、いくつかの「mTOR 阻害剤」が開発され、「抗がん剤」として使用されています。
 「テムシロリムスTemsirolimus商品名「トーリセル」)」は「ラパマイシン」誘導体で、静脈内投与可能な「mTOR 阻害剤」です。経口「mTOR 阻害剤」として「エベロリムス商品名「アフィニトール」)」が承認されています。

 この論文では「ラパマイシン」を使って実験しています。
 マウスの移植腫瘍を使った実験で、がん組織の「微小環境」が「酸性」だと、「ラパマイシン」の「抗がん作用」は減弱する、ということです。
 そして、『重炭酸ナトリウム』をマウスに摂取させて、がん組織の「微小環境」の「酸性度」を低下させると、「ラパマイシン」の「抗腫瘍効果」は増強しました。

 『重炭酸ナトリウム』と「ラパマイシン」をそれぞれ単独で投与した場合に比べて、両者を併用して投与すると、移植腫瘍はほとんど消滅するくらいの「抗腫瘍効果」を示しています。

 この実験でも、『重炭酸ナトリウム』は 200mmol/L の濃度の「飲水」を自由摂取で投与しています。
 「弱アルカリ性」の「抗がん剤(ドキソルビシンなど)」も、『重炭酸ナトリウム』は「抗がん剤」の細胞内への取り込みを促進して「抗腫瘍効果」を高める、と記述しています。




『重炭酸ナトリウム』による がん組織の「アルカリ化」は「免疫療法」の効き目を高める

 「免疫療法」として注目されている「オプジーボ」や「ヤーボイ」や「養子免疫療法自己リンパ球療法)」のときに『重曹治療重炭酸ナトリウム)』を併用する価値はありそうです。

 以下のような報告があります。


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   Neutralization of Tumor Acidity Improves Antitumor Responses to Immunotherapy.
    (腫瘍組織の「酸性度」の中性化は「免疫療法」の「抗腫瘍応答」を改善する
    〔Cancer Res. 2016 Mar 15;76(6):1381-90.


【要旨】

 「免疫チェックポイント阻害剤」や「養子T細胞療法」のような「がんの免疫療法」は、臨床効果を発揮する場合もあるが、まだ解明されていない抑制メカニズムの存在によって、その有効性は低い。

 固形がんの「微小環境」は、高度に「酸性化」している特徴があり、この環境が「抗腫瘍免疫」の効果を妨げている可能性がある。

免疫細胞は「弱アルカリ性(pH 7.3~7.4)の下で正常に機能することができる」ので、免疫細胞は「酸性環境」の下だと機能が低下するために「抗腫瘍免疫」の効果を妨げる可能性があるのですブログ管理人

 この研究においては「免疫療法における腫瘍組織の酸性化」の影響を検討した。


 培養細胞を使った実験で、pH が「酸性」の条件では「T細胞」の活性化が阻害され、解糖による「グルコース代謝(ブドウ糖代謝)」が抑制された。
 「酸性 pH」による「インターフェロン-γ」の産生阻害は、「mRNA」転写のレベルではなく、タンパク質の翻訳後の阻害であることが示された。

 がん組織の「酸性化」は細胞内 pH(pHi)には影響しない。
 これは、細胞膜に発現している特殊な「pH 感受性受容体」が細胞外の「酸性化」を感知して、細胞内にシグナルを送ることを示唆している。「T細胞」には、このような「pH 感受性受容体」が4種類発現している。

 注目すべきことに、マウスに がん細胞を移植した実験系で、『重炭酸ナトリウム治療重炭酸ナトリウム』で腫瘍の「酸性度」を中和すると、移植腫瘍の増殖が抑制され、この腫瘍組織内で「Tリンパ球」の浸潤の増加が認められた

 さらに「抗CTLA-4抗体」や「抗PD1抗体」による治療や「養子T細胞療法」に『重炭酸ナトリウム治療重炭酸ナトリウム』を併用すると、多くの実験モデルにおいて「抗腫瘍応答」を増強し、いくつかの実験系では、がんが治癒した

 以上の結果から、pH を「アルカリ化」する「pH 緩衝剤」を「経口摂取」することによって「腫瘍組織内の pH を高める」ことは「免疫療法の効果を高める」ことができる。速やかに臨床で使用する価値がある。

一応、補足しておきますが、この研究から読み取るべきことは、この『重曹』の「経口摂取」による効果は何も「免疫療法」だけの話ではなく、『重曹』の「経口摂取」によって癌患者さんの「免疫細胞の癌細胞への攻撃」自体を高めることができる、ということです。「免疫機能」を改善している癌患者さんならば、『重曹』を「経口摂取」することによって、上述されている『重曹』の効果を得ることができるのですよ。分かりますよね!ブログ管理人


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 「細胞傷害性T細胞キラーT細胞)」は「抗原提示細胞樹状細胞マクロファージ)」から「抗原」を提示されると活性化されて、敵(病原菌や がん細胞など)を攻撃します。
 「細胞傷害性T細胞」には「PD-1」や「CTLA-4」という受容体が存在します。

 「PD-1」は「プログラム細胞死1(programmed death-1)」、
 「CTLA-4」は「細胞傷害性Tリンパ球抗原-4 (cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)」の略です。


 これらの受容体の「リガンド受容体に結合して作用する物質)」となる「PD-L1」や「B7(B7-1B7-2)」を「抗原提示細胞」が持つことによって「細胞傷害性T細胞」の働きを抑制しています。
 つまり、「PD-1 受容体」や「CTLA-4 受容体」が「リガンド」によって刺激されると「T細胞」の増殖が停止し、細胞死を来すことになります。このようにして「細胞傷害性T細胞」の過剰な応答を制御しています。


 「細胞傷害性T細胞」の働きを阻害する「PD-L1」や「B7」は、がん細胞にも発現しています。
 つまり、がん細胞は「免疫系の制御システム」を利用して、がん組織内の「細胞傷害性T細胞」の働きを阻止しています。
 「PD-1 受容体」や「CTLA-4 受容体」は「細胞傷害性T細胞を死滅させるスイッチ」のようなものなので、これらのスイッチが入らないようにすれば、「細胞傷害性T細胞」は生き残って「がん細胞への攻撃力」を高めることができます。

 「CTLA-4」に対する抗体(ヒト型抗ヒトCTLA-4モノクローナル抗体)の「イピリブマブ( ipilimumab米国での販売名「YERVOY」)」は「T細胞」の「CTLA-4」の働きを阻止することで、腫瘍抗原特異的な「T細胞」の活性化と増殖を促して「腫瘍増殖を抑制する作用」を発揮します。
 「PD-1」の阻害薬としては「ヒト型抗PD-1モノクローナル抗体」の「ニボルマブnivolumab商品名「オプジーボOpdivo)」があります。これらは「免疫チェックポイント阻害剤」と言います。

 体に備わった「がん細胞に対する攻撃力を高めて、がんを治療しよう」というのが「がんの免疫療法」の理論です。
 「免疫細胞を活性化する」という従来の「免疫療法」では充分な効果が得られなかったのですが、その大きな理由は「免疫応答にブレーキをかける仕組み」の存在であることが明らかになってきました。
 「このブレーキを解除して、免疫細胞に100%の力で がん細胞を攻撃させよう」というのが、「CTLA-4」や「PD-1/PD-L1」をターゲットにした治療法です(下図)。

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【図】
◆◆
①「抗原提示細胞」上には「MHCクラスIIMHC-II)」と言われる分子があり、抗原を介して「T細胞」上の「TCR(T細胞受容体)」と反応して「細胞傷害性T細胞」を活性化する。
②「T細胞」上には「CD28」と「CTLA-4」があり、「CD28」は恒常的に発現し、「抗原提示細胞」からの「B7-1」や「B7-2」という「リガンド」によって「T細胞」活性化に作用する。
③ 一方、「CTLA-4」は「T細胞」活性化に伴なって発現が誘導され、「B7-1」や「B7-2」によって刺激されると「T細胞」を抑制する。「CTLA-4」は「CD28」よりも「B7」に対する親和性が強いので、活性化した「T細胞」の過剰な応答を抑制する。
④ 同様に、「PD-1(Programmed death-1)」は「抗原提示細胞」の「PD-L1(別名B7-H1)」と結合することによって「抑制型の免疫調節シグナル」を活性化させる。がん細胞も「B7-1」「やB7-2」や「PD-L1」が発現しており、「細胞傷害性T細胞」の働きを抑制している。
⑤「T細胞」の「CTLA-4」と「PD-1」の働きを「特異抗体」で阻害すると、がん細胞に対する「細胞傷害性T細胞」の働きを高めることができる。
◆◆


 しかし、がん組織が「酸性化」していると「細胞傷害性T細胞」の働きは低下します
 「pH が低い(酸性化している)」という状況が、細胞の働きを弱めるからです

 「ナチュラルキラー細胞NK細胞)」活性が「酸性」の条件では低下することが報告されています。
 「ナチュラルキラー細胞NK細胞)」は「細胞傷害性リンパ球」の1種で、細胞を殺すのに「T細胞」とは異なり、事前に感作させておく必要がないということから「生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞(killer cell)」という意味で名付けられています。
 腫瘍細胞やウイルス感染細胞の拒絶に重要な働きを担っており、「ナチュラルキラー細胞NK細胞)」活性を高めることは「がん細胞の排除」に有効です。

 以下のような報告があります。


   Natural killer-cell activity under conditions reflective of tumor micro-environment.
    (腫瘍組織の微小環境を反映する条件下での「ナチュラルキラー細胞」の活性
    〔Int J Cancer. 1991 Jul 30;48(6):895-9.


 この論文では、がん組織の「微小環境」の特徴である「低酸素分圧」「低グルコース(ブドウ糖)濃度」「酸性」といった条件で、がん組織に存在する「ナチュラルキラー細胞NK細胞)」の活性がどのように影響を受けるかを検討しています。

 「低酸素(1% O2)」や「低グルコース(ブドウ糖)濃度(6mg/dl)」は「ナチュラルキラー細胞NK細胞)」活性を低下させませんでしたが、「無酸素(0% O2)」と「酸性条件(pH が 6.4、または、6.7)」では「ナチュラルキラー細胞NK細胞)」活性が顕著に低下することが報告されています。

 したがって、がん組織の「酸性化」を軽減する『重炭酸ナトリウム』の摂取を併用すると、「オプジーボ」や「ヤーボイ」などの「免疫チェックポイント阻害剤」や、活性化した「T細胞」を点滴する「養子免疫療法自己リンパ球療法)」や「NK細胞療法ナチュラルキラー細胞療法)」など「免疫療法」を行なうときには『重曹療法』を併用する価値はあります。極めて「安価な方法」で、高額な治療の効果を高めることができます。



がん組織における「乳酸産生」と「酸性化」を抑制する治療を組み合わせる がん治療

 「乳酸」も、がんの進展や「免疫細胞の抑制」に重要です。

 以下のような報告があります。


   Functional polarization of tumour-associated macrophages by tumour-derived lactic acid.
    (腫瘍由来の「乳酸」による「腫瘍関連マクロファージ」の機能的極性化
    〔Nature. 2014 Sep 25; 513(7519): 559–563.


 腫瘍細胞が産生する「乳酸」が「血管内皮細胞増殖因子VEGF)」の発現を亢進し、「腫瘍関連マクロファージ」を「M2型」に誘導します。
 がん組織に浸潤した「マクロファージ」を「TAM(tumor-associated macrophage腫瘍関連マクロファージ)」と言い、「血管新生」「増殖因子産生」「免疫抑制」「転移促進」などの様々な機能により「発がんがんの悪性化を促進する働き」をしています。
 活性化した「マクロファージ」から産生される「プロスタグランジンE2」や「炎症性サイトカイン」は、がん細胞を悪化させ、「抗腫瘍免疫」を抑制して がん細胞の増殖を促進し、転移や再発を促進することが明らかになっています。


 血中を循環する「単球」は、皮膚などの末梢組織に入ると「マクロファージ」と呼ばれる細胞に分化します。
 「マクロファージ」は「M1型」と「M2型」に分けられます。

 「M1型」は「がん細胞を攻撃する作用」がありますが、「炎症と組織傷害を進める作用」があります。
 一方、「M2型」は「炎症を収束させるように働きます」が、「CTL(細胞傷害性T細胞)」活性を抑制して「抗腫瘍免疫を阻止する作用」を持っています。

 「がんの免疫療法」の効果を高めるためには「M1型」を亢進し、「M2型」を抑制することが重要と考えられています。

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【図】
◆◆
①「シクロオキシゲナーゼ-2COX-2)」と「シグナル伝達兼転写活性化因子3Signal transducer and activator of transcription 3STAT3)」は「マクロファージ」を「M1型」から「M2型」に変換して活性化する。
②「M2型TAM(M2型マクロファージ)」は VEGF, FGF-2, IL-1, and IL-8 を産生して「血管新生」を亢進し、
③ EGF, FGF-2, IL-6, TGF-β, PDGF を産生して、がん細胞の増殖を亢進する。
④ さらに、がん細胞と融合したり、EGF, IL-6, IL-8 を産生して「がん幹細胞の性状」をがん細胞に獲得させる。
⑤ さらに「MMPs(matrix metalloproteinase)」や「EGF」の産生を促進して、がん細胞の浸潤性を高める。
  このようにして「M2型腫瘍関連マクロファージ(Tumor-associated macrophageTAM)」は、がん細胞の増殖転移治療抵抗性再発を促進する。(参考J Zhejiang Univ Sci B. 15(1): 1–15. 2014年, Fig.1) 。
◆◆


 「乳酸」は「M1型マクロファージ」を阻害し、「M2型マクロファージ」を亢進する、という結果です。
 その結果、「CTL(細胞傷害性T細胞)」の活性は抑制され、「抗腫瘍免疫」は低下します。
 したがって(がん細胞での)「乳酸の産生抑制」は、免疫細胞の働きを高めます


 したがって、がん細胞の解糖系を阻害する「2-デオキシ-D-グルコース」と「ジクロロ酢酸」と「ケトン食」、がん細胞外への「水素イオンプロトンH+)」の排出を阻害する「胃潰瘍治療薬」の「プロトンポンプ阻害薬」、そして、今回紹介した『重曹治療重炭酸ナトリウム』の併用は「抗がん剤治療」や「免疫療法」と併用する価値はあります。


 『重曹重炭酸ナトリウム)』は「医薬品レベルのもの」も、ネットで購入できます。


      

木曽路物産『内モンゴル天然トロナ鉱石から作る重曹』 ( 600g真中 1000g 2000g



 体重1kg 当たり、1日に「0.4g」を目安に摂取すると良いと思います。

     体重30kg の人は、1日に「12g」を目安に摂取する。
      体重35kg の人は、1日に「14g」を目安に摂取する。
      体重40kg の人は、1日に「16g」を目安に摂取する。
      体重45kg の人は、1日に「18g」を目安に摂取する。
      体重50kg の人は、1日に「20g」を目安に摂取する。
      体重55kg の人は、1日に「22g」を目安に摂取する。
      体重60kg の人は、1日に「24g」を目安に摂取する。
      体重65kg の人は、1日に「26g」を目安に摂取する。
      体重70kg の人は、1日に「28g」を目安に摂取する。
      体重75kg の人は、1日に「30g」を目安に摂取する。
      体重80kg の人は、1日に「32g」を目安に摂取する。
      体重85kg の人は、1日に「34g」を目安に摂取する。
      体重90kg の人は、1日に「36g」を目安に摂取する。
      体重95kg の人は、1日に「38g」を目安に摂取する。
      体重100kg の人は、1日に「40g」を目安に摂取する。



 がんが大きいときは、副作用が無ければ、もう少し増量しても問題ありません。

 「プロトンポンプ阻害剤」や「ジクロロ酢酸」などを併用すれば、『重炭酸ナトリウム』の量を減らせます。
 (ただし、副作用の観点から、組合せには充分な注意が必要です


上記の『重曹』は、自然食品の『太陽食品太陽食品 楽天市場)』さんが扱っている『天然の重曹』で、我が家が選んだ『重曹』であり、「福田一典」医師が推奨しているわけではありません。みなさんも、自宅で『重曹療法』を行なうときには、ご自分で納得のいく「食品グレード」や「医薬品レベル」の『重曹』を選ばれてくださいね!ブログ管理人




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