この記事は「シリーズ記事」になります。

    ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! 福田一典(著)①
     【 癌細胞の代謝の特徴:癌とブドウ糖の関係:
       ブドウ糖は、癌の発生・増殖・悪性化・転移・進行を促進する!】


    ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! 福田一典(著)②
     【 癌治療に「糖質制限食(ケトン食)」が有効する理由:
       ケトン体・ケトン食 自体に『抗がん作用』がある!】
本記事


    ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! 福田一典(著)③
     【 ブドウ糖を絶って癌が死滅しても、癌は治っていない!
       糖質制限食・ケトン食は 癌治療を有利に進める役割!】



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 当記事は「ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する!①」記事の続きになります。

 『銀座東京クリニック』院長「福田一典」医師の著書『ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~ 今あるがんが消えていく『中鎖脂肪ケトン食』』から、癌治療における「糖質制限食(ケトン食)」の価値を知るための部分をご紹介させて頂きます。

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 まずは、当記事でご紹介させて頂く内容の【目次】をご覧ください。


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     第5章 ケトン体とは何か

       がん細胞が利用できない「ケトン体」
       糖質は人体に必須ではない
       エネルギー源としての脂肪
       ブドウ糖が枯渇すると、脂肪が燃焼し始める
       ブドウ糖の代替エネルギーになるケトン体
       インスリンの働きが正常であれば、ケトン体が増えても怖くない
       ケトン体を利用すれば、がん細胞を兵糧攻めにできる


     第6章 ケトン体を増やすための『中鎖脂肪ケトン食』

      「カロリー制限食」と「糖質制限食」
       がん対策のための食事法
       ケトン食療法の効果と留意点
       ケトン食療法の歴史と現在
       ケトン食の抗がん作用
       ケトン食療法が進行がんに対して有効性を示した研究がすでに存在する
       長鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸
       長鎖脂肪酸の利用を助けるリパーゼとL‐カルニチン



             ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する!
                      ~ 今あるがんが消えていく『中鎖脂肪ケトン食』



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 「ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する!①」記事は、当記事の内容をよりよく理解するための「基本部分」であり、導入部です。
 癌治療における「糖質制限食(ケトン食)」の価値を知るためには、まずもって、当記事の内容を熟知する必要があります。「福田一典」医師は大変分かりやすく説明してくださっています。ぜひ、ご覧になられてみてください。
 癌治療における「糖質制限食(ケトン食)」の価値を、一般人でも理解できるように、ここまで分かりやすく書き上げてくださった「福田一典」医師に私は感謝しています。


 もはや「糖質制限食(ケトン食)」は、癌治療において世界の常識となりつつあります。
 「糖質制限食(ケトン食)」は体内の癌を追い詰めやすくし、癌治療をより有利に展開させる『食事療法』です。この「糖質制限食(ケトン食)」を実行するのとしないのとでは、癌治療に大きな差が生まれます。
 その理由を知るには、当記事をご覧になって頂くのが最適だと思います。

 どうぞ、当記事を通して、多くの癌患者さんに、癌治療における「糖質制限食(ケトン食)」の価値をよくご理解して頂けたらと思います。癌治療を有利に進めるためにも、癌患者さんはご自分なりに「糖質制限食(ケトン食)」を必ず実行しましょう!



 当ブログサイトでご紹介させて頂いているのは第1章から第6章までです。
 第7章以降から『中鎖脂肪ケトン食』の実践や注意点の内容に入っていきます。
 しかし、それは当ブログサイトの「中鎖脂肪ケトン食療法(福田一典 医師)」カテゴリ内にある次の記事の内容とほぼ同じです。『中鎖脂肪ケトン食』の詳しい内容につきましては、これらの記事を参照されてください。


    癌の『中鎖脂肪ケトン食療法』- 福田一典医師
     【 エネルギー源をブドウ糖から『ケトン体』へとシフトして、
       癌細胞だけを兵糧攻めにして死滅に追い込む、合理的な癌治療 】


    糖質は可能な限り減らす! - 福田一典 医師
     【 血糖値に関する「グリセミック指数」と「グリセミック負荷(ブドウ糖負荷)」の知識から
       『糖質の賢い摂取法』を見つめる!】


    癌治療に役立つ食材 『全粒穀物(玄米・雑穀米など)』 - 福田一典 医師
     【 全粒穀物・玄米が持つ有効性:生玄米粉の食後に血糖値が高くなる人がいるのは、なぜか?】


    大豆と糖質の少ない野菜・果物を多く摂取する - 福田一典 医師
     【 大豆イソフラボン、野菜や果物のフィトケミカル、アボカド、アブラナ科野菜、きのこ類、海草類 】


    青身魚の脂肪に含まれる DHA・EPA の 抗がん作用 - 福田一典 医師
     【 青身魚の脂肪に含まれる DHA・EPA は癌を抑制し、肉製品の脂肪は癌の増殖・転移を促進する!】



 『中鎖脂肪ケトン食』の詳しい内容を知りたい方は、上記の記事を参照して頂くか、『ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~ 今あるがんが消えていく『中鎖脂肪ケトン食』』を手に入れられてください。
 「福田一典」医師の著わされたこの名著は、癌患者さんが「糖質制限食(ケトン食)」を実行する上で熟知すべき内容が充実して分かりやすく載っています。ぜひ、この著書を熟読されてください。
 「Kindle 版」ならば、現在の価格で「¥386」と大変良心的で、非常にお求めやすくなっています。

 この著書の内容はすべて重要なので、私も本当は「すべてアップしたい」くらいです。
 しかし、私にはそれはできません。
 それをやってしまうと、完全に「著作権侵害」になります。
 「私は著作権を犯すために生まれて来たのではありません」的なものがあるのです‥(涙)


 社会貢献や社会的に意味を為す上での部分的な抜粋の場合には「著作権侵害」に当たりません。
 今回、私が当記事を作成しました理由は、世の癌患者さんで『癌患者が「ブドウ糖」を無制限に摂取する恐さ』を知らない方がまだまだ多いと感じ、もう一度、この基本の初心に戻るため、癌患者にとって重要な「癌とブドウ糖の関係」を知るための分かりやすい記事を作成しようと思いました。

 そこで、やはり「癌とブドウ糖の関係」を分かりやすく丁寧にまとめて書いてくださっている「福田一典」医師の名著『ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~ 今あるがんが消えていく『中鎖脂肪ケトン食』』を採用したというわけです。この著書に触れて頂くのが一番分かりやすいと思いました。

 ですから、この著書の中の、次の内容の部分を抜粋することを選択しました。

    癌患者が「ブドウ糖」を無制限に摂取すると、
     癌の発生増殖悪性化転移進行がますます増強されてしまう。
     よって、癌患者は「糖質制限食(ケトン食)」を実行すべきである。


    癌治療において、なぜ「糖質制限食(ケトン食)」が有効するのか?
     これは「癌細胞の代謝の特徴」「ケトン体の性質」などから理解する必要がある。


 今回は、この趣旨と目的に沿った部分を抜粋させて頂いたつもりです。
 残念ながら、私にはここまでしかできません。どうぞ、ご了承されてください。


 ここでご紹介させて頂きます「福田一典」医師の著書『ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~ 今あるがんが消えていく『中鎖脂肪ケトン食』』が、世の癌患者さんが「癌とブドウ糖の関係」について知り、癌治療における「糖質制限食(ケトン食)」おけるの価値を知る上で役立って頂けることを願っています。
 どうぞ、この「シリーズ記事」を活かしてください。よろしくお願いします m(__)m

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ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する!
今あるがんが消えていく『中鎖脂肪ケトン食』


福田一典(著) 彩図社出版  2013年刊




 第5章 ケトン体とは何か

がん細胞が利用できない「ケトン体」
 「第3章」では、がん細胞は正常細胞に比べてブドウ糖の消費が極めて高い理由を解説しました。がん細胞における「ブドウ糖の取り込み亢進」が、がん細胞の増殖や転移、そして、抗がん剤抵抗性などといった悪性腫瘍の性質を支配していると言っても過言ではありません。
 また「第4章」では「高血糖」と「高インスリン血症」が『がんを促進する』ことを解説しました。糖質を含む食事のたびに血糖が上がり、それを低下させるために「インスリン」が分泌されている状態が、恒常的に『がん細胞の成長を刺激している』ことになります。
 これは逆に言えば、食事から糖質を抜き、血糖やインスリンを上昇させないようにすれば、がん細胞の増殖を促進しなくなり、さらには腫瘍を縮小させることも可能だということです。
 糖質(炭水化物)と脂肪と蛋白質という三大栄養素のうち、がん細胞の増殖を促進するのは糖質のみであり、糖質を制限した脂肪や蛋白質の量が多い食事は、がんの発生や進行を促進することはありません。このように、「糖質のみが、がんを育てる」という点が重要なのです。

 がん細胞は、ブドウ糖が枯渇すると比較的短時間で死滅します
 ネズミにがんを移植した動物実験では、カロリー制限を行うと腫瘍の増殖が抑制され、生存期間が延びることが報告されていますが、カロリー制限をしなくても、糖質を減らすだけでがんの増殖を遅くできたという結果も得られています。
 前述の通り、カロリーを減らさずに糖質を減らすためには、脂肪の摂取量を増やすことになります。そして脂肪の取り過ぎは「発がんリスク」を高める』という常識は、糖質の摂取量を減らせば当てはまらないことが、多くの動物実験で確かめられています。
 その理由として、脂肪はインスリンの分泌を高めないということが挙げられます。
 また、脂肪酸が分解してできる「ケトン体」という物質があり、これは、ブドウ糖が枯渇したときの代替エネルギー源となりますが、正常細胞がケトン体をエネルギー源として利用できる一方、がん細胞はケトン体をエネルギー源として利用できないということも理由の1つです。
 加えて、このケトン体自体に『がん細胞の増殖を抑える作用』があることが分かっています。
 さらに、がん細胞は増殖するために脂肪酸の合成が亢進していますが、その代わりに脂肪酸を分解してATPを産生する代謝経路は抑制されています。これはつまり、脂肪はいくら食べてもがん細胞を増殖させないということです。
 なお、脂肪を多く摂取しても、炭水化物の摂取量が少なくカロリーがオーバーしない条件であれば、体の機能を損なうことはありません。
 実際、健常人による臨床試験で、カロリーの85%以上を脂肪で摂取するような食事を続けても、肝臓や腎臓や心臓などの臓器機能、また運動機能にも悪影響はないことが示されています。
 そこで「糖質を極端に減らし、代わりに脂肪を多く摂取してケトン体を増やす食事」が、がんを弱らせるための食事療法として提唱されています。これはつまり「がん細胞が、エネルギー源としてブドウ糖しか利用できないという特徴を利用した食事療法」です。


糖質は人体に必須ではない
 そもそも、糖質は人間に必須の栄養素ではありません。

 人間が生きていくうえで必須の栄養素は、

   
    必須アミノ酸  ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、
              フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン
    必須脂肪酸  リノール酸、α‐リノレン酸
    ビタミン  ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、
            チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビオチン、ビタミンB12
    ミネラル  カルシウム、リン、マグネシウム、鉄
    微量元素  亜鉛、銅、マグネシウム、ヨード、セレン、モリブデン、クロム
    電解質  ナトリウム、クロール、カリウム

 と、いくつかの超微量元素ということになっています。

 すなわち、糖質は「必須栄養素のリスト」の中に入っていないのです。
 エネルギーを産生するために糖質は役立ちますが、糖質の代わりに「脂肪」や「アミノ酸」がエネルギー源となるため、厳密には糖質がなくても人間は生きていけますし、また、脂肪に含まれる「グリセロール」や一部の「アミノ酸」から肝臓で糖を作ることもできます(  糖新生 )。
 さらに、糖質を摂らないことが健康を害するという証拠もないようです。
 むしろ、糖質を完全に断つ「断糖療法」を行っている医療機関からの報告によると、副作用はなく、様々な病気の治療に有効であることが示されています。
 つまり、糖質というのは「安価なエネルギー源」として人間に利用され、いつの間にか三大栄養素の1つになっているものの、実は「無くても構わない栄養素」だと言えるのです。



エネルギー源としての脂肪
 さて、私たちは食物から様々な種類の「あぶら」を摂取しています。
 一般に、常温で液体のあぶらを「油(oil)」、固体のあぶらを「脂(fat)」と表記し、両方を総称して「油脂」と言います。
 ほとんどの植物性油や魚油は常温で液体の「油」であり、一方、多くの陸上動物(牛脂、豚脂、人間の脂肪など)と 熱帯植物(ヤシ油、パーム油、ココアバターなど)のあぶらは常温で固体の「脂」です。
 油脂(中性脂肪)は、3価のアルコールであるグリセロール1分子に3分子の脂肪酸が結合した構造をしています。このグリセロール(グリセリンとも言う)には手( ─ OH )が3本あり、それに脂肪酸が結合して中性脂肪になっているのです(図14)。

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 脂肪酸は、複数個の炭化水素(CH2)の連結した鎖(炭化水素鎖)からなりますが、脂肪酸の炭素数が7以下のものを「短鎖脂肪酸」、8~12のものを「中鎖脂肪酸」、13以上のものを「長鎖脂肪酸」と言います。
 また、炭化水素鎖のすべての炭素が水素で飽和しているものを「飽和脂肪酸」と言い、炭化水素鎖中に1個ないし数個の二重結合( CH=CH )が含まれるものを「不飽和脂肪酸」と言います。
 食事から摂取した脂肪は、脂肪加水分解酵素(リパーゼ)の働きで、グリセロール1分子と脂肪酸3分子に分解(消化)されて小腸から吸収されます。
 ただし、脂肪酸の構造の違いによって融点などの化学的性状が異なってきます。よって例えば、二重結合を持つ不飽和脂肪酸の多い脂肪は常温で液状になりますが、飽和脂肪酸になると固まりやすくなります。
 なお、固まりやすい脂肪を多く摂取すると血液がドロドロになって動脈硬化が起こりやすくなります。
 このように、脂肪酸は構造が異なれば性質が異なり、生体機能に対する影響も異なるのですが、それについてのくわしい説明は第7章で行うことにして、ここでは、エネルギー源としての脂肪酸の役割に絞って解説していきます。


ブドウ糖が枯渇すると、脂肪が燃焼し始める
 血液中には、血糖として約100mg/㎗ の濃度でブドウ糖が存在します。
 人間の血液の量は体重の13分の1程度なので、60kg の人で約4.6リットルの血液が存在し、血中に含まれるブドウ糖の量は5g 程度です。
 人体内では、糖質はグリコーゲンとして貯蔵されており、必要に応じてグリコーゲンが分解され、ブドウ糖を血中に放出することによって血糖を維持しています。
 このグリコーゲンとは、ブドウ糖が多数結合したもので、おもに肝臓や筋肉に存在し、体全体に貯蔵されているグリコーゲンの量は100~300g 程度です。
 糖質1g で4キロカロリーのエネルギーを産生するため、体内に存在する糖質の総エネルギー量は、400~1200キロカロリー程度ということになります。
 そして、このことは「食事をしなければ、数時間~半日程度で体内のブドウ糖が枯渇する」ことを意味しています。
 ただし、体重60kg で体脂肪が20%の人は、12kg の脂肪を貯蔵しています。
 脂肪は1g で9キロカロリーのエネルギーを産生するため、約10万キロカロリーのエネルギー量を体脂肪として貯蔵していることになります。これは、約2ヶ月分のエネルギー量です。
 すなわち、グリコーゲンは、動物の体内でエネルギーをすぐに使えるように一時的に保存しておくための物質で、脂肪に比べて利用しやすいものの、すぐ枯渇するという欠点があります。
 一方、脂肪は体積あたりのエネルギー量が糖質より大きく、長期的なエネルギーの保存に適した物質だと言えます。
 よって、例えば絶食した際には、体内に蓄積されたグリコーゲンは数時間でなくなってしまいますが、血糖を維持する必要があるので、グルカゴンというホルモンの働きで、ピルビン酸や乳酸、あるいは一部のアミノ酸など、糖質以外の物質からブドウ糖が産生されます。これは肝臓で行われ、「糖新生」と呼ばれます。
 そして、さらに、体に蓄えられている脂肪を分解し、ATPを産生するようになります。その流れは、以下の通りです。
 まず、貯蔵脂肪が、リパーゼの働きでグリセロールと脂肪酸に分解されます。
 このうち、脂肪酸は筋肉や肝臓や心臓など他の臓器・組織の細胞に運ばれ、そのミトコンドリアで分解(酸化)されてエネルギーを産生します。
 一方、グリセロールは肝臓でブドウ糖に変換されてエネルギー源になります。1g のグリセロールからは、ほぼ1g のブドウ糖が産生(糖新生)されます。
 通常、食事中の脂肪100g が消化吸収され代謝された際には、約10g のブドウ糖と約90g の脂肪酸が産生されます。
 なお、通常であれば、細胞が必要とするATPは、ブドウ糖が解糖系から「ピルビン酸」と「アセチルCoA」を経て「TCA回路」へと代謝され、さらに「酸化的リン酸化」によって産生されますが、脂肪酸からエネルギーを産生する場合は、脂肪酸が β酸化という経路によって分解されてアセチルCoA を作り出し、このアセチルCoA がミトコンドリアのTCA回路で代謝されてATPが産生されるのです。


ブドウ糖の代替エネルギーになるケトン体
 脂肪酸の酸化で作られるアセチルCoA の多くはTCA回路に入りますが、絶食時など、ブドウ糖が少ない状況では、アセチルCoAをTCA回路で処理する際に必要な「オキサロ酢酸」ができないため、TCA回路が十分に回りません(TCA回路については「第2章」の図9を参照してください)。
 TCA回路の最初のステップは、アセチルCoA のアセチル基をオキサロ酢酸に渡してクエン酸に変換する反応ですが、オキサロ酢酸はピルビン酸から作られるので、解糖系でブドウ糖からピルビン酸が作られなければ、オキサロ酢酸もできないのです(図15)。

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 では、TCA回路で処理できなかった脂肪酸由来のアセチルCoA がどうなるのかというと、肝臓でケトン体の合成に回されることになります。
 肝細胞では、脂肪酸が分解されてできたアセチルCoA の一部がアセトアセチルCoA になり、3‐ヒドロキシ‐3‐メチルグルタリル‐CoA(HMG‐CoA)を経て、アセト酢酸が生成されます。
 さらに、アセト酢酸は脱炭酸によってアセトンに変換され、また、還元されて β‐ヒドロキシ酪酸に変換されます(図16)。

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 そして、このアセト酢酸、β‐ヒドロキシ酪酸、アセトンの3つが「ケトン体」と呼ばれているのです。
 脂肪酸と違って、ケトン体は水溶性であるため、特別な運搬蛋白質の助けがなくても肝臓からその他の臓器(心臓や筋肉や腎臓や脳など)に効率よく運ばれます。そして、細胞内でケトン体は再びアセチルCoA に戻され、TCA回路で代謝されてエネルギー源となります。
 ただし、この際、エネルギー産生に使われるのはアセト酢酸のみです。β-ヒドロキシ酪酸はアセト酢酸に変換されてからエネルギー産生に使用され、また、アセトンは呼気から排出されてエネルギー源にはなりません。
 なお、肝臓はケトン体を作り出しますが、肝臓自身はケトン体をエネルギー源として利用できません。なぜなら、肝臓はケトン体を他の臓器組織のエネルギー源として供給するための工場であり、作ったケトン体を自分で消費しないよう、ケトン体をアセチルCoA に変換する酵素が欠損しているためです。

 さて、人間が飢餓状態にあるときや絶食中、あるいはインスリン欠乏による糖尿病などでブドウ糖が利用できない場合には、ケトン体が重要なエネルギー源となります。
 例えば、脂肪酸は「血液脳関門」を通過できませんが、ケトン体は通過できるため、ブドウ糖が利用できない場合には、ケトン体が脳の唯一の代替エネルギーとなり得ます。
 人間を含め、哺乳動物は、長期間にわたる栄養不足に耐えるための代謝システムを進化させてきました。人間のおもなエネルギー源はブドウ糖ですが、ブドウ糖が利用できないときには他の方法を考えなければなりません。
 そのため、肝臓で脂肪酸からアセチルCoA がたくさん産生されますが、アセチルCoA の形のままでは細胞膜を通過できないので、体内の臓器にエネルギー源として届けることができません。このため、アセチルCoA をいったんケトン体に変換するように進化したのです。
 水溶性であるケトン体は、全身を巡ることができます。よって、ケトン体を代謝する酵素が欠損している肝臓、およびミトコンドリアがない赤血球以外の組織では、再びケトン体をアセチルCoA に変換し、エネルギー源として利用できるのです。

 なお、ケトン体は一部のアミノ酸からも産生されます。蛋白質はアミノ酸に分解されてから代謝されますが、アミノ酸ごとに代謝経路が異なります。
 アミノ酸のうち、脱アミノを受けたのち、その炭素骨格部分が脂質代謝経路に由来して、おもに脂肪酸やケトン体合成に利用されるものを「ケト原性アミノ酸(ketogenic amino acid)」と呼び、一方、TCAサイクルに入って糖新生に利用されるものを「糖原性アミノ酸(glucogenic amino acid)」と呼びます。
 このように、アミノ酸は細胞内で蛋白合成の材料として使われるだけでなく、ブドウ糖や脂肪酸が不足してエネルギー源がなくなれば、ブドウ糖やケトン体に変換され、エネルギー産生にも利用されるのです。

上記の「ケトン体」についての内容は「糖質制限食(ケトン食)」の価値を理解する上で結構重要です。
 ここにつきましては、次の記事を参照されてください。

   「ケトン体」とは、体内のブドウ糖が枯渇した時に、肝細胞のミトコンドリアで作られる『短鎖脂肪酸』のこと!
    【「ケトン体」とは、体が作り出した『短鎖脂肪酸』です!】


 この記事は、上記の「ケトン体」の内容を理解するのに適切です。「ケトン体とは何か?」また「身体がブドウ糖に枯渇した時に、なぜ、体内(肝臓)でケトン体が生成されるのか?」などがお分かり頂けると思います
ブログ管理人


インスリンの働きが正常であれば、ケトン体が増えても怖くない
 「ケトーシスケトン症ketosis)」という症状をご存知でしょうか。これは「血中のケトン体が増加した状態」のことを言います。
 ケトン体のアセト酢酸と β‐ヒドロキシ酪酸は酸性が強いため、ケトーシスになると、血液や体液の pH が酸性になります。このように、ケトン体が増えて血液や体液が酸性になった状態を「ケトアシドーシス(ketoacidosis)」と言います。
 そして、おもに1型糖尿病の患者さんに起こる「糖尿病性ケトアシドーシス」というものがあります。これは、インスリンが不足した状態で脂肪の代謝が亢進し、血中にケトン体が蓄積してアシドーシス(酸性血症)を来たすというもので、ひどくなると意識障害を引き起こし、治療しなければ死に至ります。
 こうした症状があるため、糖尿病の人にとっては、血液中のケトン体濃度の上昇が糖尿病の悪化を示すサインとして知られており、「ケトン体は体に悪い物質だ」と思われがちです。
 しかし、実際のところ、インスリンの働きが正常である限り、ケトン体は極めて「安全なエネルギー源」だと言えます。
 なぜなら、ケトン体は日常的に産生されているものであり、かつ、肝細胞と赤血球(ミトコンドリアが無い)を除くすべての細胞でアセチルCoA に変換され、生理的なエネルギー源として利用できるからです。なお、ケトン体は、ブドウ糖や脂肪酸よりも優先的に利用されます
 糖質を普通に摂っている人の血中ケトン体(アセト酢酸と β‐ヒドロキシ酪酸の合計)の基準値は、26~122μmol/ℓ ですが、絶食した場合などは、血中ケトン体が数日で基準値の30~40倍もの高値になります。
 それでも、インスリンの作用が保たれている限りは問題ありません。
 断食や糖質制限に伴うケトン体産生の亢進は生理的なものであり、一時的に酸性血症(アシドーシス)になることもありますが、血液の緩衝作用によって正常な状態に戻ります。
 ケトン体の増加が怖いのは、あくまで糖尿病など、インスリンの作用不足がある場合に限るのです。


ケトン体を利用すれば、がん細胞を兵糧攻めにできる
 すでに述べた通り、ブドウ糖が枯渇した状態でも、正常細胞はケトン体を利用して活動を続けることができる一方、がん細胞は、ケトン体をアセチルCoA に変換する酵素の活性が低下しているという特徴があるため、エネルギー源として利用できません。
 よって、食事の糖質を制限し、血糖とインスリンの追加分泌を低下させてケトン体を増やせば、がん細胞を弱らせ、増殖を抑えることができ、抗がん作用も強化されます。また、ケトン体のアセト酢酸と β‐ヒドロキシ酪酸には、それ自体に『抗がん作用』があることが分かっています
 がん細胞と正常線維芽細胞の培養細胞を使った実験で、培養液にアセト酢酸や β‐ヒドロキシ酪酸を添加すると、正常線維芽細胞の増殖は阻害されない一方、がん細胞の増殖は用量依存的に抑制されることが報告されているのです。
 これは、ケトン体ががん細胞のブドウ糖の取り込みと代謝を阻害するためだと考えられています。
 さらに、がん細胞を移植した動物実験でも、ケトン体を多く出させるために中鎖脂肪酸の豊富な高脂肪食を与えたところ、腫瘍の成長が抑えられ、がんによる体重の減少を防ぐことが報告されています。
 繰り返しになりますが、ブドウ糖の取り込みと消費が亢進し、エネルギー産生のほとんどをブドウ糖に依存しているがん細胞は、ケトン体をエネルギー源として利用できません
 加えて、ケトン体自体に『がん細胞の増殖を阻害する作用』があるため、血中のブドウ糖を減らし、ケトン体を増やせば、がん細胞だけを兵糧攻めにすることができるのです図17)。

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上記の内容は「糖質制限食(ケトン食)」の価値を理解する上で最も重要です。
 これを簡潔に説明しますと、次のようになるでしょう。

    癌細胞はエネルギー源をブドウ糖のみに頼っており、ケトン体をエネルギーとして利用できないため、
     糖質〔ブドウ糖〕の摂取量を制限して減らし、ケトン食によって体内〔肝臓〕でケトン体を生成しやすくすれば、
     「ブドウ糖エネルギー源」型の体質から「ケトン体エネルギー源」型の体質へと移行し〔ケトン体質となり〕、
     正常細胞を養いながら、癌細胞だけを選択的に兵糧攻め〔エネルギー源の枯渇〕にすることができる。
     このように「糖質制限食(ケトン食)」は、癌細胞だけを選択的に死滅に追い込むことができる食事療法である。


 また「ケトン体」自体に『抗がん作用』があることが科学的医学的に解かっています。
 ここは、次の記事を参照されてください。

    ケトン体には、癌の生存・増殖・悪性化・転移を阻害する「抗がん作用」がある!
     【「南フロリダ大学 高圧生体医学研究所」の癌研究:ケトン体の解説:福田一典 医師 】


 このように「糖質制限食(ケトン食)」は、癌治療に一番最適な食事療法であることがお分かり頂けると思います。しかも、現代人にとって深刻な健康問題となっている「糖質(ブドウ糖)の過剰摂取によって発生している諸病のリスク」を大幅に低下させることもできます〔おそらく、ほぼ発生しないと見て良いでしょう
ブログ管理人



 第6章 ケトン体を増やすための『中鎖脂肪ケトン食』

「カロリー制限食」と「糖質制限食」
 従来、糖尿病の食事療法の基本は「カロリー制限食」でした。
 カロリー制限食では、身体活動量などに合わせてカロリー計算を行いますが、通常、摂取総エネルギー量(=標準体重(kg)× 仕事別消費カロリー)の数値を出して、1日の摂取カロリーを、この数値内に収めるというものです。
 仕事別消費カロリーの具体的な数字は、軽労作(デスクワークがおもな仕事や主婦など)で25~30キロカロリー、普通の労作(立ち仕事が多い職業)で30~35キロカロリー、重い労作(力仕事が多い職業)で35キロカロリー以上となっています。
 よって、例えば標準体重60kg で、おもな仕事がデスクワークの人は、1日の摂取カロリーを1500~1800(=60×25~30)キロカロリー以内に制限するというものです。
 カロリー制限食では、基本的に食べてはならないものはなく、主食の糖質の量もカロリーに応じて減らすだけです。そして、総カロリーを制限しますが、カロリーの約半分は糖質から摂取し、食後に血糖が高くなることについては、糖尿病の薬やインスリンを用いて対処するというものです。
 しかし、このカロリー制限による食事療法では、血糖値を下げることも体重を減らすことも難しいということが指摘されています。加えて、空腹感によって長続きしにくいという欠点もあります。

 一方、数年前から、「糖質制限食」が糖尿病の食事療法として注目されています。
 この食事法は、減量(ダイエット)目的としても流行しており、「糖質を減らせば、肉や脂肪やアルコールを多く摂っても体重は増えない」といった内容の本も数多く出版されています。
 糖尿病対策として糖質制限食を行う根拠となっている考えは「食後に血糖値を上げるのは糖質だけなので、献立からご飯や麺類やパンを削れば血糖値は上がらない」というものです。
 実際、食後高血糖の是正という点では、糖質制限食は非常に優れた食事療法であることが示されており、さらに、体重減少や血糖値や血清脂質値の改善においても、糖質制限食はカロリー制限食と同等か、それ以上の効果を示しています。
 また、近年では糖質制限食の有効性を示すデータが蓄積され、米国糖尿病学会の2011年のガイドラインでは、糖質制限食が、カロリー制限食とともに糖尿病食事療法の選択肢として推奨されています。
 このように、糖尿病の治療法としての糖質制限食は賛否両論があるものの、最近の傾向では、糖質制限のメリットを認める専門家が増えているようです。
 ただし、極端な糖質制限(1日40g 以下)は、糖尿病治療としては推奨されていません。
 そして、本書で紹介しているがん治療のための糖質制限食(中鎖脂肪ケトン食)では、1日40g 以下の極端な糖質制限を目標にしていますので、「はじめに」でも述べた通り、重度の糖尿病の患者さんについては、この食事療法を推奨できません。


がん対策のための食事法
 一方、がんと各種食事法の関係ですが、まず、カロリー制限食ががん予防に効果があることは、すでに報告されています。
 また、カロリー制限の寿命延長効果が霊長類(アカゲザル)の実験でも示唆されていますので、カロリー制限はがんや老化性疾患の予防に役立つと考えられています。
 そして、さらに、最近では、より積極的にがん細胞の「ブドウ糖の取り込み」を阻害する目的で、1日40g 以下の極端な糖質制限や、「ケトン食(=低糖質+高脂肪食)」が試みられているのです。
 このケトン食とは、摂取エネルギーの60~90%を脂肪から摂取するという、言わば「超高脂肪食療法」です。
 これは、現在がんの発生や再発の予防に推奨されている食事療法とは全く逆です。
 なぜなら、がんの専門家のコンセンサスは、脂肪を減らすことががん予防で最も重要だということになっているからです。
 具体的には、全カロリーの45~65%を糖質から摂取するくらいの量が適切で、脂肪からのカロリーは食事全体のカロリーの20~30%程度、中でも、飽和脂肪酸からのカロリーは全カロリーの10%以下にするような脂肪の摂取が望ましいというのが一般的な意見です。
 しかし、本書ですでに解説してきたように、脂肪の取り過ぎが危険なのは、糖質も同様に摂取している場合のみです。
 つまり、食事からの摂取カロリーの半分以上を糖質から得る食事内容では、脂肪を摂り過ぎれば「発がんリスク」が高まりますが、糖質を大幅に制限すれば、高脂肪食が「発がんリスク」を高めることはないのです。
 また、がんや動脈硬化の原因になるのは、動物性の飽和脂肪酸、あるいは「ω‐6不飽和脂肪酸」の多い一部の植物油を多く摂取する場合です。
 むしろ逆に、オレイン酸を含むオリーブオイル、または「ω‐3不飽和脂肪酸」のエイコサペンタエン酸(EPA)や ドコサヘキサエン酸(DHA)を含む魚油、あるいは α‐リノレン酸を含む亜麻仁油(フラックスシードオイル)や 紫蘇油(エゴマ油)を多く摂取すると、がんも動脈硬化性疾患も減らせることが明らかになっているのです。


ケトン食療法の効果と留意点
 がん細胞にブドウ糖を与えないという目的から考えれば、断食療法やカロリー制限も効果はありますが、断食療法は体重が減少して栄養素が不足するという欠点が、カロリー制限も体重や体力を低下させるという欠点があります。
 よって、抗がん剤などで治療を行っているときには、断食やカロリー制限を実施しにくいと言わざるを得ません。
 一方、絶食と同じような効果があり、体力も栄養状態も悪化させない食事療法がケトン食療法であり、この食事療法は、てんかん治療の分野ではすでに確立されています。

 第5章で解説したように、ケトン体は、ブドウ糖が枯渇したときに肝臓で脂肪酸の分解が亢進したときにできる物質です。
 正常細胞では、ケトン体を使ってエネルギー(ATP)を産生することができますが、多くのがん細胞は、ケトン体からATPを産生するときに必要な酵素の活性が低下しているなどの理由から、ケトン体を利用することができません。
 そこで、がん細胞が利用できないケトン体を増やし、かつ、がん細胞が必要とするブドウ糖の量を減らして、がん細胞だけを死滅させることができるケトン食療法が注目されているのです。
 このケトン食を実践するにあたっては、脂肪としては中鎖脂肪酸、オリーブ油、ω‐3不飽和脂肪酸の魚油(DHA や EPA)、亜麻仁油、紫蘇油など『抗がん作用』のある脂肪を多く使い、また、蛋白源としてはがんを促進する赤身の肉(牛肉など)は控え、大豆製食品(豆腐や納豆)、魚、卵、鶏肉などを利用し、さらに、抗酸化物質や食物繊維、そして「がん予防」成分の豊富な野菜を多く摂取すれば『抗腫瘍効果』をより高めることができます。
 ただし、ケトン食では糖尿病治療では推奨されない「極端な糖質制限」を行いますので、再三述べている通り、重度の糖尿病があるがん患者さんにとっては危険な食療法です。また、高脂肪高蛋白になるので、重度の肝障害や腎臓障害がある場合も推奨できません。
 加えて、長期間におよぶ脂肪や蛋白質の取り過ぎがかえって発がんを促進するのではないかという懸念もあり、ケトン食を長期間行った場合の健康に対する影響については、まだ十分な研究結果は得られていません。
 したがって『新たな「がんの発生」を予防したい』などといった目標に関しては、ケトン食に効果があるのかどうか、まだ十分な根拠はありません。
 しかし、インスリン濃度を上げない糖質制限や「グリセミック指数」の低い食品の利用については、長期間の「がん予防」においても有効と言えます。
 そして、本書の最大のテーマである「今、体内に存在するがんを縮小消滅させる」という短期的な目的については、極端な糖質制限を行い、脂肪を多く摂取してケトン体を増やす食事療法が有効だということを示す報告が、最近増えてきているのです。


ケトン食療法の歴史と現在
 ケトン食というのは、体内でケトン体が多く産生されるように考案された食事です。
 古来から、「絶食療法」は様々な疾患を対象によく行われていたのですが、特に、てんかん発作は絶食によって減少することが昔から知られていました。
 そして「脂肪が多く炭水化物の少ない食事を摂れば、絶食と同等の効果が得られる」という考えのもと、1920年代に米国のメイヨークリニックで「ケトン食療法(ketogenic diet)」が発案されました。
 この当時のケトン食は「古典的ケトン食」と呼ばれ、蛋白質を体重1kgあたり1g、炭水化物は1日10~15g、残りのカロリー(90%以上)は脂肪からというものでした。
 このように、てんかんに対するケトン食療法の有効性は古くから証明されていたのですが、1938年に抗てんかん薬としてフェニトインが開発され、てんかんの治療は食事療法から薬物療法に移行し、ケトン食療法は行われなくなりました。
 1960年代には、中鎖脂肪酸を使うとケトン体の産生効率が高まるということが明らかになったため、脂肪の摂取割合は50%程度まで減り、蛋白質や炭水化物の摂取量の許容範囲が増えたことでケトン食は見直されましたが、その一方で、いくつものてんかんの治療薬も開発されました。
 そして、面倒な食事療法より薬物治療のほうが便利で有効性も高いということで、結局、ケトン食療法は次第に行われなくなりました。
 しかし1994年、ハリウッドの映画監督であるジム・エイブラハムズ(Jim Abrahams)が、ケトン食療法で自身の息子の難治性てんかんが劇的に改善した実話をテレビで放映し、ケトン食療法を広めるための基金も設立しました。
 その後、1997年にはこの話がテレビ映画化されるなどして、難治性てんかんに対するケトン食療法の有用性は、広く世界に知られるようになったのです。
 そして現在、ケトン食は、ブドウ糖を細胞内に取り込めない「グルコース・トランスポーターⅠ型欠損症」(てんかん発作や神経精神的退行を起こす)という疾患に極めて有効で、かつ唯一の治療法として用いられています。

 さらに、ケトン体は脳神経のエネルギー代謝を改善し、活性酸素や炎症から神経細胞を保護する作用があるため、アルツハイマー病やパーキンソン病、あるいは脳卒中などを原因とする脳神経細胞障害の進行抑制にもケトン食が利用されています。
 また、脳腫瘍の症状の1つとしててんかん発作があり、難治性てんかんの約4%が脳の腫瘍性病変によると言われていますが、ケトン食はてんかんの治療に効果があるので、脳腫瘍でてんかん発作を繰り返す状態にケトン食療法が試され、それによって腫瘍が縮小することが報告されています。
 加えて、脳腫瘍を移植したマウスに低糖質高脂肪のケトン食を投与すれば、腫瘍が縮小し、生存期間が延びることも明らかになっています
 このように、ケトン体は脳腫瘍の増殖を抑制し、てんかん発作を軽減し、腫瘍組織の活性酸素の発生を減少させ、脳組織のダメージを軽減するという効果があるため、特に脳腫瘍に対する有効性が期待されています。
 そして、他の腫瘍(がん)に対しても『抗腫瘍効果』を示唆する研究結果が報告されているのです。


ケトン食の抗がん作用
 すでに述べたように、がん細胞ではケトン体をエネルギー源として使うための酵素の活性が低下し、脂肪酸を分解してエネルギーを産生する代謝経路も抑制されています。
 したがって、糖質を極端に制限して脂肪を多く摂取するケトン食療法を行えば、ブドウ糖が枯渇してがん細胞は弱っていく一方、正常細胞は脂肪酸やケトン体を利用して活動を続けることができます
 そして、ケトン体のアセト酢酸や β‐ヒドロキシ酪酸には、それ自体に『抗がん作用』があることも知られています(第5章参照)。

 また、近年、がん治療において「ワールブルグ効果」をターゲットにした治療法の有効性が確認されるようになり、がんに対するケトン食療法が注目されるようになっています。
 このワールブルグ効果とは、「第3章」で説明した通り、「がん細胞は酸素が十分に存在する状態でも酸素を使わない方法(嫌気性解糖系)でエネルギーを産生するため、ブドウ糖の取り込みが亢進している」という現象です。
 これは言い換えれば「ブドウ糖の取り込みや嫌気性解糖系を阻害すれば、がん細胞は増殖も生存もできない」ということであり、ケトン食療法は、それをふまえた食事療法として注目されているのです。
 実際、がんを移植したネズミを使った実験では、ケトン食ががんの増殖速度を遅くし、生存期間を延ばす効果があることが報告されています。この場合、カロリー制限を併用すると『抗腫瘍効果』が高いのですが、中鎖脂肪酸を多く使い、効率良くケトン体の産生を増やすケトン食であれば、カロリー制限をしなくても、がん組織の増殖を抑え、生存期間を延ばすことが確認されています。
 そして、この「中鎖脂肪酸を多く使い、効率良くケトン体の産生を増やすケトン食」こそが、私が『中鎖脂肪ケトン食』と呼んでいるものであり、標準治療で効果がなくなった進行がんの患者さんや「再発リスク」の高いがんの治療後の患者さんに実践してもらいたいと考えている食事療法なのです。

 がん治療に関するケトン食の有効性が最初に明らかになったのは、1995年のことでした。
 進行した小児がん(脳腫瘍)の患者をケトン食を使って治療し、全身の栄養状態に悪影響をおよぼさず、がん細胞の増殖を抑えることができたという臨床試験の結果が、米国オハイオ州クリーブランドのケース・ウェスタン・リザーブ大学の栄養部門から報告されたのです。
 具体的には、進行した「悪性星細胞腫」という脳腫瘍の女児2名に対して、中鎖脂肪酸トリグリセリド(中鎖脂肪)を60%、他の脂肪を10%、蛋白質を20%、炭水化物を10%というケトン食を使い、8週間外来通院で治療を行うというものでした。
 すると、ケトン食を開始して7日後には血糖値が正常下限まで低下し、血中ケトン体は20~30倍に増加しました。また、PET検査の測定では、がん細胞の「ブドウ糖の取り込み」が平均21.8%低下しました。そして、患者の1人には、臨床症状の著明な改善と長期間の延命効果が認められたのです(J Am Coll Nutr. 14(2):202-8.1995)。
 また、浸潤性の星細胞腫の中で最も悪性度の高い「多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)」は、人間のがんの中でもとりわけ予後の悪いがんです。
 完全に切除できてもほとんどが再発するこのがんの治療は、手術後にテモダールという抗がん剤と放射線照射を併用するというものが標準ですが、平均生存期間は数ヶ月です。
 そして、多形神経膠芽腫が再発した場合、放射線と抗がん剤治療だけではまず治りません。
 ところが、多形神経膠芽腫の治療(抗がん剤治療+放射線治療)にケトン食療法を併用したところ、今までに見られなかった劇的な治療効果が得られたという症例報告があるのです。
 これは、手術で完全に切除できなかった65歳女性の多形神経膠芽腫の患者について、1日の摂取カロリーを600キロカロリーに制限し、ケトン比(脂肪:蛋白+炭水化物)を「4:1」に設定したケトン食を行ったところ、著明な抗腫瘍効果が認められたというものです(Nutrition & Metabolism. 7:33, 2010)。
 さらに、人間の胃がんをヌードマウスに移植した実験モデルでは、ω‐3不飽和脂肪酸と中鎖脂肪酸を使ったケトン食を用いてこのマウスを飼育すると、がんの増殖が遅くなったという報告があります。
 これは、魚油のDHAやEPAといった ω‐3不飽和脂肪酸には、がん予防効果やがん細胞の増殖を抑える効果があるためだと考えられます。

 これまで、がんの食事療法の定番だった「玄米菜食」や「ゲルソン療法」などは、玄米や雑穀や野菜を豊富に摂取し、動物性食品を減らすことが基本になっています。
 玄米や雑穀など、グリセミック指数が低い炭水化物はインスリンの分泌を抑えるという観点から見れば、確かに、これらの食事はがん細胞の増殖を促進しない効果はあります。
 よって、玄米菜食やゲルソン療法は健康的であり、がんの「予防」には向いているように思いますが、今、体内に存在しているがん組織を縮小させる効果は弱いと思います。
 なぜなら、玄米菜食やゲルソン療法で行う食事からは、がん細胞が必要とするエネルギーと物質合成の材料であるブドウ糖が豊富に供給されるからです
 今あるがん細胞を死滅させるには、糖質を減らすことが重要であるため、玄米菜食やゲルソン療法よりも、低糖質高脂肪食のケトン食を実践するほうが有効であることは明らかなのです

上記でもご紹介しましたが、この「ケトン体」による『抗がん作用』につきましては、次の記事を参照されてください。

    ケトン体には、癌の生存・増殖・悪性化・転移を阻害する「抗がん作用」がある!
     【「南フロリダ大学 高圧生体医学研究所」の癌研究:ケトン体の解説:福田一典 医師 】


 「糖質制限食(ケトン食)」によって「ケトン体」をうまく利用すれば、癌治療を有利に進めることができるのは明白です。「ケトン体」に『抗がん作用』があることは、癌治療における「糖質制限食(ケトン食)」の価値を一層際立たせている大きなポイントです
ブログ管理人


ケトン食療法が進行がんに対して有効性を示した研究がすでに存在する
 悪性度の高い大腸がん細胞をマウスに移植して「がん性悪液質」を起こす実験モデルで、ケトン食の効果を検討した研究があります。
 がん性悪液質とは、がんの増大によって筋肉と脂肪が減少する状態のことであり、がんを移植されたマウスも、がんの増殖に応じて、体の脂肪と筋肉の量が減少して体重が落ちます。
 このがん性悪液質が起きるのは、がん組織が出す炎症性サイトカインなどが、脂肪や蛋白質の分解(異化)を進行させるためです。
 ところが、前述の実験モデルにおいて、総カロリーの80%を中鎖脂肪酸から得るようなケトン食をマウスに与えると、体重の減少が抑制され、さらに、腫瘍自体の成長も抑えられるという結果が得られています。
 つまり、ケトン体には『がん細胞の増殖を抑える作用』だけでなく、『炎症を抑える作用』もあり、がん性悪液質の改善にも効果が期待できるということを示しています(Br. J. Cancer, 56: 39-43, 1987)。
 また、末期がんの患者16例を対象に、ケトン食の効果と安全性を検討した報告もあります。
 この報告では、脂肪と蛋白質を豊富に摂取し、炭水化物を1日70g以下に制限した食事は臓器の働きを良くし、症状を改善する効果があるという結論が得られています。
 これは、がん細胞はブドウ糖の利用が高い一方、筋肉組織などの正常組織では脂肪酸や蛋白質の需要が大きいので、糖質を少なくして蛋白質や脂肪を増やした食事のほうが、進行がん患者の状態を良くする効果が高いということです。なお、この食事による副作用は認められていません(Nutr Metab 8(1):54, 2011)。

 さらに、米国ニューヨーク州のアルバート・アインシュタイン医科大学の放射線科のグループが、ケトン体を増やす糖質制限食の安全性と有効性を検討する目的で、10例の進行がん患者を対象に臨床試験を行っています。
 この研究では、根治治療不可能な進行がん患者の腫瘍をPET検査で検出し、パフォーマンスステータス(performance statusPS)が0~2で比較的良く、諸臓器機能が正常で糖尿病がなく、最近の体重減少を認めず、BMI(Body Mass Index)が20kg/m2 以上の条件を満たす10例を対象に、26~28日間の糖質制限食を実施しました。
 その結果、食事療法開始前に腫瘍の早い進行を認めていた9例のうち5例で「病状安定(stable disease)」、あるいは「部分奏功(partial remission)」をPET検査で確認できました。
 なお、病状安定とはがんが大きくならなかったことで、部分奏功とは画像検査で長径が30%以上(あるいは面積が50%以上)縮小した場合を言います。
 効果を認めたこの5例は、進行を続けた4例と比較して、血中のケトン体の量が3倍くらい高かったという結果でした。
 そして、腫瘍増殖の抑制を認めた5例と腫瘍増殖が進展した4例の間には、カロリー摂取や体重減少の程度には差を認めませんでしたが、ケトン症のレベルは血清インスリンの濃度と逆相関の関係にありました(Nutrition 28(10): 1028-35, 2012)。

 つまり、この臨床試験では、

    インスリンの分泌を阻害する食事療法(糖質制限によるケトン食)は、
     進行がん患者に対して安全に実施できる。

    この食事療法による『抗腫瘍効果病状安定、および、部分奏功)』は、
     摂取カロリーや体重減少の程度とは相関せず、ケトン症の程度(血中のケトン体の濃度)に相関する。

 という2点が確認されたということです。

 この研究で最も重要なのは、血中のケトン体レベルが高いほど、がん細胞の『増殖抑制効果』が高いという結果が得られたという点です。すなわち、カロリー摂取や体重減少とは関係なく、血中のケトン体の濃度のみが奏功率と関連するということです。
 よって、糖質制限と高脂肪食によるケトン食を行うときには、ケトン体を効率良く増やす工夫が最も重要なのです。
 そのためには、すでに述べた通り中鎖脂肪酸を多く摂取することや、また、長鎖脂肪酸の吸収と β酸化による分解を促進するために、脂肪分解酵素である「リパーゼ」、あるいは「L‐カルニチン次頁参照)」を摂取することなどが有効です。
 こうした方法を用いて、ケトン体を多く産生させると、食事だけでがんを縮小できることが可能になるのです。


長鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸
 日本で使われている食用油(菜種油、大豆油、紅花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、コーン油など)は、長鎖脂肪酸(炭素数が13以上)が主成分です。一方、中鎖脂肪酸(炭素数が8~12)を多く含む油としては、ヤシ油(ココナッツオイル)があります。
 脂肪は、十二指腸で胆汁と混じって乳化され、胃液や膵液のリパーゼの働きによって、グリセロールと脂肪酸に分解されて吸収されますが、食事中に含まれる脂肪の主成分である長鎖脂肪酸は、小腸細胞に吸収されると上皮細胞内でカイロミクロンに合成され、リンパ管に入り、胸管を通って全身循環に入り、筋肉細胞や脂肪細胞に運ばれて貯蔵されます。
 このようにして貯蔵された長鎖脂肪酸は、必要に応じて分解され、ゆっくりと消費されるのですが、長鎖脂肪酸のうち、ごく一部は肝臓に運ばれ、肝細胞のミトコンドリアで脂肪酸の分解が行われます。
 ただし、このとき、長鎖脂肪酸は「L‐カルニチン」と結合しなければ、肝細胞のミトコンドリアに入れません。
 このL‐カルニチンとは、アミノ酸から生合成されるビタミン様物質で、生体内で脂肪を燃焼させてエネルギーを産生する際に、脂肪酸をミトコンドリア内部に運搬する役割を担っています。
 肝細胞のミトコンドリアに長鎖脂肪酸が入るのには、前述のような条件が必要になるので、長鎖脂肪酸はエネルギーとして代謝されにくく、体脂肪として蓄積されやすい脂肪酸であると言わざるを得ません。
 一方、中鎖脂肪酸は分子が小さいため、消化管から効率的に吸収され、門脈に入って直接肝臓に運ばれます。
 また、細胞のミトコンドリアに入るのに、L‐カルニチンと結合する必要はなく、ミトコンドリアに直接入って素早く β酸化され、大量のアセチルCoA を生じる特徴があります(図18)。

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 さらに、糖質が存在する状況だと、長鎖脂肪酸からのケトン体産生は抑えられますが、中鎖脂肪酸からケトン体を作る経路は糖質の影響をほとんど受けません。
 よって、中鎖脂肪酸を多用したケトン食では、1日の食事における脂肪の割合を60%程度まで減らし、糖質を1日40~60g 程度摂取しても、ケトン体を大量に産生することができるのです。

 また、エネルギーとして燃焼される効率が高く、体脂肪として蓄積しにくいというその特徴から、最近では、中鎖脂肪酸がダイエットや健康に効果的だと知られるようになっています。
 さらに、手術後や未熟児の栄養補給にも有用性が示されている他、米国では、中鎖脂肪酸トリグリセリド(caprylic triglycerideカプリル酸トリグリセリド)が、アルツハイマー病の治療に有効な医療食(medical food)として認可されてもいます。

 なお、日本では、ケトン食療法に適した、中鎖脂肪酸トリグリセリドを多く含むオイル( 日清オイリオの「MCTオイル(中鎖脂肪酸100%)」や キッセイ薬品の「マクトンオイル(中鎖脂肪酸85%)」)が市販されているので、こうした油を利用すれば、効率良く有効性の高いケトン食を作れます。

 このように、中鎖脂肪酸をうまく利用するのが、がん治療に対する『中鎖脂肪ケトン食療法』のポイントです。
 実際、古典的なケトン食では脂肪:非脂肪(糖質+蛋白質)の摂取割合を「4:1」くらいにしていますが、中鎖脂肪酸を多めに使えば、この比率を「1.5:1」程度にまですることが可能になります。


【ブログ管理人】

 この項で紹介されている「ココナッツオイル上段」と「MCTオイル下段」「マクトンオイル下段」は次の商品です。これは「糖質制限食(ケトン食)」の実践を支えてくれる定番アイテムで、これらのオイルには「中鎖脂肪酸」が多く含まれています。
 身体が「ブドウ糖」に枯渇した時に、体内の「中鎖脂肪酸」が肝臓で「ケトン体」になります。ゆえに、これらのオイルから「中鎖脂肪酸」を多く摂取すれば「ケトン体」が多く産生され、「ケトン体」エネルギー源に富んだ体内環境を実現することができますから「糖質制限食(ケトン食)」を楽に行なうことができるようになります。
 今、私の母も「糖質制限食(ケトン食)」を実践していますが、私の母は「ココナッツオイル上段」派です(笑)
 母は「ココナッツオイル上段」を毎日たらふく摂取しています♪
 この「ココナッツオイル上段」と「MCTオイル下段」「マクトンオイル下段」の中で、どれか、自分が気に入ったオイルを利用することは「糖質制限食(ケトン食)」を楽に行なえるようにする上で得策です。

      


          



長鎖脂肪酸の利用を助けるリパーゼとL‐カルニチン
 前述の通り、ケトン体を増やすためには中鎖脂肪酸を多く使用するのがポイントですが、『抗がん作用』のある長鎖脂肪酸を一緒に利用すると、料理にバリエーションができ、抗がん作用も強化できます。
 そのために用いるのが「リパーゼ」と「L‐カルニチン」です。

 脂っこい食事を摂って、胃がもたれる経験をされた方は多いと思います。日本食は脂肪の少ない食事であり、多くの日本人は脂肪の多い食事に慣れていません。脂肪の摂取割合を多くすると、消化がうまくいかず、腹痛や下痢の原因になってしまうこともあります。
 この場合、脂肪分解酵素のリパーゼを食後に服用し、脂肪の消化を助けると胃腸の負担を少なくできます。
 リパーゼは胃液や膵液に含まれ、脂肪(トリグリセリド)をグリセロールと脂肪酸に分解する消化酵素で、リパーゼを摂取するための医薬品としては、膵消化酵素補充剤の「リパクレオン(参照1参照2)」などがありますが、米国製の消化酵素のサプリメントの利用も安価で活性が高いので有用です。
 ただし、すでに解説した通り、リパーゼで脂肪(トリグリセリド)から脂肪酸の分解を促進しても、長鎖脂肪酸の場合は、ミトコンドリアで分解されるためにはL‐カルニチンが必要です。
 これは、中鎖脂肪酸はL‐カルニチンがなくてもミトコンドリアに入れる一方、長鎖脂肪酸はL‐カルニチンと結合しないとミトコンドリアに入れないからです。
 L‐カルニチンはヒトの体内で合成されますが、この合成には2つの必須アミノ酸(リジン、メチオニン)と、3つのビタミン(ビタミンC、ナイアシン、ビタミンB6)、そして還元型鉄イオンが必要で、これらの栄養素の1つでも不足すれば、L‐カルニチンは不足することになります。
 L‐カルニチンの合成は肝臓、腎臓、脳でのみ起こります。心臓と骨格筋は、脂肪酸の酸化によっておもなエネルギーを得ていますが、L‐カルニチンを合成できないため、血液中のL‐カルニチンを取り込んで利用しているのです。
 食事性カルニチンのおもな供給源は肉類と乳製品であり、穀類、果物、野菜にはほとんど含まれません。体内で合成されるものの、がんの治療で体力が消耗していたり、栄要素が不足するとL‐カルニチンの欠乏が生じ、細胞内でのエネルギー産生が低下します。
 実際、抗がん剤治療中には、腸粘膜の障害で食事性カルニチンの吸収が低下し、肝臓や腎臓機能のダメージで体内での合成が低下し、尿中の排泄量も増えることが指摘されています。
 そのため、がんの治療中には、L‐カルニチンの摂取を推奨します。
 なお、がんの代替医療では菜食主義を徹底する治療法もありますが、肉や乳製品を完全に排除する食事は、L‐カルニチンの不足を引き起こしやすくするので、注意が必要です。

以上の次の部分をご覧ください。

    食事性カルニチンのおもな供給源は肉類と乳製品であり、穀類、果物、野菜にはほとんど含まれません。
     体内で合成されるものの、がんの治療で体力が消耗していたり、
     栄要素が不足するとL‐カルニチンの欠乏が生じ、細胞内でのエネルギー産生が低下します。
     なお、がんの代替医療では菜食主義を徹底する治療法もありますが、
     肉〔肉製品〕や乳製品を完全に排除する食事は、L‐カルニチンの不足を引き起こしやすくするので、
     注意が必要です。


 ここを読むと、肉製品乳製品を摂取しないと「L‐カルニチン」が不足して危険だと受け取ることができます。
 しかし、なぜ、昔の日本人は伝統食〔民族食〕として肉製品乳製品をまったく摂らずとも、世界の中で長寿国を保っていたのか不思議に思います。日本の伝統食〔民族食〕には肉製品乳製品が含まれていませんが、日本人は昔から長寿国でした。
 また、世界の長寿地域には、肉製品乳製品をまったく摂らない民族が多くあります。
 このように、日本民族を含めた、世界の長寿民族の民族食〔伝統食〕における「食の実地」をよく見れば、肉製品乳製品を摂らないと「L‐カルニチン」が不足して危険だとするのは、ちょっと言い過ぎではないかと思うのです‥
ブログ管理人

 L‐カルニチンについては、サプリメントなどが市販されており、体脂肪の燃焼を促進することから、ダイエット目的にも使用されますが、細胞のエネルギー産生を高める効果があるため、様々な病気の治療にも応用されています。
 がん治療においても、L‐カルニチンが、抗がん剤治療による倦怠感や抑うつ気分を軽減するという効果が報告されており、臨床報告が存在します。
 例えば、イタリアのウルビーノ(Urbino)病院の研究では、抗がん剤治療を受けた後、倦怠感を訴えた50人を対象に、L‐カルニチン1日4gを7日間投与したところ、45人(90%)の患者で倦怠感が軽減しました(Br J Cancer. 86(12):1854-7.2002)。
 また、抗がん剤のアドリアマイシンの心臓へのダメージをL‐カルニチンが軽減したという報告もあり、さらに、動物実験や臨床試験を通じ、進行がんのがん性悪液質に起因する体重減少を軽減することも示されています。
 しかも、L‐カルニチンは極めて安全性が高く、ヒトにおける臨床研究においても有意な副作用は全く報告されていません。
 ただし、D‐カルニチンは、天然のL‐カルニチンの作用を阻害して、心筋および骨格筋におけるL‐カルニチン欠乏症を生じさせるので、天然型のL‐カルニチンを使用することが重要です。
 また、L‐カルニチンと補酵素Q10(CoQ10)とを組み合わせると、相乗的に働くことが分かっています。


    引き続き「ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する!③」記事をご覧ください。