当記事は、京都の『高雄病院』理事長の「江部康二」医師の人気ブログである「ドクター江部の糖尿病徒然日記」ブログからのご紹介です。

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『高雄病院』理事長 江部康二 医師


 次の記事にて「大規模コホート研究」による「糖質制限と総死亡率癌死亡率」に関する研究報告の記事をアップしました。

    肉食中心の糖質制限は 総死亡率・癌死亡率 が増加する!
     菜食中心の糖質制限は 総死亡率・癌死亡率 は減少するか増加しない!
     【 コホート研究が物語る、糖質制限の実地 】



 この研究報告は次の結論を出しています。

    肉製品を食べると、死亡率癌死亡率 が増加する。


 そして「糖質制限」に関しましては、

    動物由来の食品(動物性食品肉製品)を中心にした糖質制限食
    植物由来の食品(植物性食品)を中心にした糖質制限食

 で比較した結果、次の結果が出ました。

   総死亡率についても、癌死亡率についても、男性でも、女性でも、
   動物性タンパク質動物性脂質(主に肉製品)に基づいた「糖質制限」では、死亡率癌死亡率 が増加する。
   植物性タンパク質植物性脂質に基づいた「糖質制限」では、死亡率癌死亡率 は減少するか増加しない。



 この結果から、

    動物性タンパク質動物性脂質(主に肉製品)を中心とした「糖質制限」は、
     総死亡率癌死亡率が増加する。

    植物性タンパク質植物性脂質を中心とした「糖質制限」は、
     総死亡率癌死亡率は減少するか増加しない。


 という結論を出しています。


 つまり、この「大規模コホート研究」による研究報告が出した「糖質制限」に関する結論は、

    動物性食品(肉製品乳製品)を中心とした「糖質制限食」よりも、
     植物性食品 と 魚介類家禽類(鶏など)を中心とした「糖質制限食」のほうが安全である。


 ということになります(一度、上記の記事をご覧ください)。


 「江部康二」医師は当記事にて、この「大規模コホート研究」が出した「糖質制限」に関する結論(上記の内容)についての「ご自身の見解」を述べられています。

 特に肉製品乳製品を使用する「スーパー糖質制限食」を実行している方で、この研究報告の上記の内容を見て、

    高脂質高蛋白食(高動物性脂質高動物性蛋白質の食事スーパー糖質制限食)を長年続けたら、
     何らかの癌になりやすくなるのではないか?


 と不安に思われている方に対して「江部康二」医師は、

    スーパー糖質制限食と「発癌のリスク」に関するエビデンスはない。

 という結論を出され、

    スーパー糖質制限食で「発癌のリスク」が “増える” というエビデンスはない。

 とする一方、同時に、

    スーパー糖質制限食で「発癌のリスク」が “減る” というエビデンスもない。

 と仰られています。

 「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を実行されている方は、この「江部康二」医師の見解をぜひ参考にされてみてください。よろしくお願いします m(__)m



 ただ、元記事である「「スーパー糖質制限食に発ガンのリスク」というエビデンスはない」記事の【コメント欄】の一番最初に、次のような「T様」のコメントがあります。

   T様
   先生。いつもありがとうございます。
   『スーパー糖質制限食で「発癌のリスク」が増えるというエビデンスはない。
   いつも力強く仰って頂けるので、これで安心できました ^^!
   つまり現在のところ、スーパー糖質制限食と「発癌リスク」との関係は “不明” ということですよね ^^?
   スーパー糖質制限食集団を母集団にした研究結果を早く発表して、アンチ派を納得させたいです ^^


 私は「T様」を非難するつもりは毛頭ありません。
 しかし、この「T様」の感想に対して一言だけ真面目に意見させて頂きますと、これでは絶対に「ダメ」です!

 「T様」は、このように仰られています。

   現在のところ、スーパー糖質制限食と「発癌リスク」との関係は “不明” ということですよね?

 そうです。その通りです。

 当記事で「江部康二」医師も、

    これは「糖質摂取比率12%の集団」と「通常食の集団」における癌の発生を、
     10年、20年経過を追ったような臨床研究は、現時点で存在しないので当然の結論です。


 と仰られています。

 「江部康二」医師が仰られていますように、「スーパー糖質制限食」なる食事療法は、食事療法の中では真新しいものであり、最近になって登場してきたばかりの食事療法ですから、まだ臨床が少なく、実績の無い食事療法ゆえに「不明」な点ばかりなのです。

 だから「江部康二」医師は、糖質(ブドウ糖)「だけ」の視点をもってして「(今のところエビデンスはない」としか言いようがないのです。しかし、これが「絶対に安全です!」などとは言い難いのは言わずもがなです。

 それは「T様」も、ご自分で『現在のところ、スーパー糖質制限食と「発癌リスク」との関係は “不明” である』とちゃんと認識して理解しているはずなのに、なぜか『いつも力強く仰って頂けるので、これで安心できました』という「矛盾する言葉」を使っているのです。
 「スーパー糖質制限食」なんてまだ真新しすぎて研究実績が無いので「不明」な点ばかりであるにもかかわらず、「江部康二」医師が力強く言った「だけ」で、なぜ「安心」できるのか‥。
 これこそ、まさに「(まったくエビデンスはない」ですよ‥(涙)

 たぶん、「T様」は不安なんだと思います。
 だからこそ、「江部康二」医師の「力強い発言」を当てにし、それで「安心できる」と思いたいのでしょう。
 しかし、医師の言葉を鵜呑みにするのではなく、ご自分の頭で「しっかりと考え抜いて」頂きたいです。
 それができていないから、上記のような「意味不明なる矛盾の言葉」を発しているのです。

 今までも、医師が力強く言っていた「だけ」のことは多々ありました。
 しかし「力強く言う」なんてことは、だいたいどの著名な医師でも「勢いに乗っているうちはできる」のです。

 どんな著名な医師でも、必ず「盲点」があります。
 だから、必ず「自分の頭でよく考え抜くこと」です。
 そして、医師の見解はあくまで参考資料にし、「自分オリジナルの答えを求め見出すこと」です。
 私は、肉製品乳製品を中心とした「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を実行されている方に、もっと真剣に奥突っ込んで、ご自分の頭で「しっかりと考え抜いて」頂きたいです。
 すべては『自己責任』になるのですから、より慎重にどこまでも深く考えなければならないのです。
 私はそう思います‥。


 「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」で「癌が治る!」とか「癌にならない!」と思われている方々に、ぜひ、次の記事をご一読して頂きたいと願います。

   「断糖肉食」の 盲点!
    【「断糖肉食」によって体内の癌が消失して「癌が治ったァ!」と思い込んでいる癌患者さん、
     果たして、その癌は本当に治っているのでしょうか? 】


 「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」によって糖質(ブドウ糖)の摂取を断って「体内の癌が消失した」としても、それで本当に「癌が治った」のか、よく考えてみて頂きたいのです。


 また「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」によって糖質(ブドウ糖)の摂取を断っているうちは「癌が育たない体内環境」をつくることができますが、もし、長年「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を継続したら、身体は「耐糖能身体が持つグルコース〔ブドウ糖〕の処理能力)」が低下した状態になっているでしょうから(人体とは『使わざるは退化す』という仕組みがありますから、長年、糖から離れた身体はもはや「耐糖能」の機能が低下していて当然です)、また糖質(ブドウ糖)を普通に取り始めたら、その時は一体、どうなるのか‥。

 肉製品乳製品には『癌の発生、及び、癌細胞の増殖悪性化転移を促進させる作用』があることがすでに様々な癌研究報告で正式に解っていますから(肉食・乳製品の真実」カテゴリを参照してください)、長年、肉製品乳製品を中心とした「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を実行すれば「癌がより発生しやすく、癌がより蔓延りやすい体質(体内環境)になってしまう」と考えるのが普通です。
 ここにあるのは「糖質(ブドウ糖)を摂っていないから、癌が育たない‥」ということ「だけ」です。

 この身体の状態で、もし、長年継続した「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を事情によって止めて、また糖質(ブドウ糖)を普通に摂り始めたら、その時は一体、どうなりますか‥。
 その時は、身体の「耐糖能身体が持つグルコース〔ブドウ糖〕の処理能力)」が必ず低下していますよ‥。
 しかも、長年の肉製品乳製品の多食により「癌がより発生しやすく、癌がより蔓延りやすい体質(体内環境」になっているのです。
 この身体の状態で「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を事情によって止めて、よもや、また糖質(ブドウ糖)を普通に摂り始めたりでもしたら、その時は何が起こるか想定しているのでしょうか‥。

 一生涯「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を継続する勇気はおありですか‥。
 「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を継続すればするほど、「耐糖能身体が持つグルコース〔ブドウ糖〕の処理能力)」が低下した身体で、また糖質(ブドウ糖)を普通に摂ったら問題が発生すると思います‥。


 ましてや、です。

 私は上記で「(スーパー糖質制限食や 断糖肉食を)事情によって止めて‥」と書きました。
 これは「地球規模」で考えると、この日本においても「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を強制的に止めねばならない日が、この先、遠からず(「う~んと先の未来ではない」という意味です )、実際に現実としてやって来るかもしれないのです‥。

 アメリカがすでに「この先、地球は小氷河期に入り、寒冷化する」と正式に発表していますが、この先、もし地球全体が(アメリカが推測したように)「寒冷化」へと進み、「地球規模」で農作物の不作が続いた場合、日本の食料自給率は39%ですから、これが事実なら、その時、日本人は一気に「飢える」日が来るわけです。

 肉製品乳製品とは「穀物菜食が満足にできる時」に手に入る食品ですから、穀物菜食すら不足している時には、もう「肉製品乳製品なんて手に入らなくなる」のですよ‥。
 「小氷河期」ですから、魚介類だって、どれだけ獲れるのか分かりません‥。

 地球がそういう環境になった時には、もう「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」なんて物理的にまず実行不可能ですから、再び「糖質(ブドウ糖)に頼らなければならなくなる」わけです。

 「耐糖能身体が持つグルコース〔ブドウ糖〕の処理能力)」がある人は良いですが、「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を長年調子ぶっこいて絶好調で継続しちゃったあとで「耐糖能」が低下して失われた人たちは、上記のような体質(身体の状態)を抱えたまま、再び糖質(ブドウ糖)に頼った時、一体、どうなりますか‥。


 以上のことまで、細かくしっかりと考えるならば、私は「糖質制限」自体には賛成ですが、肉製品乳製品を中心とした「糖質制限食」、つまり「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」には、どうも賛成する気にならないのです。

 私も以前は「糖質(ブドウ糖)を断てば、どんな癌でも治る!」とか思い込んでいましたが、その後、いろいろと見つめていくと、それは「間違いだった」こと分かりました。
 何が「間違い」だったのか‥、その内容を上記の「「断糖肉食」の 盲点!」記事でお話しさせて頂いています。

 やはり「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」には慎重になったほうが賢明です。
 「スーパー糖質制限食」や「断糖肉食」を実行している方々は、どうぞ、何度でも振り返って、確認作業をされてみてください。よろしくお願いします m(__)m


.





 「スーパー糖質制限食に発ガンのリスク」というエビデンスはない
 【「ドクター江部の糖尿病徒然日記」
より 】


 お早うございます。

 精神科医師Aさんから、ハーバード大学の研究者が「Annals of Internal Medicine」に、
 2010年に論文発表した「コホート研究」についてコメントを頂きました。

 灰本医師と、野田医師が、
 『厳しく糖質制限食をすると「総死亡率」と「癌のリスク」が上昇する』という見解を述べておられます。

 これに対して、私の結論は、

(1)そもそも、そのようなエビデンスはこの論文には記載していない。
(2)糖質制限を厳しくすればするほど「総死亡率」は有意に上昇』というのは、
    何ら根拠のない、飛躍した単なる仮説である。
(3)この論文は、「高糖質食」と「中糖質食」を比較したもので、
   米国糖尿病学会(ADA)の定義に相当する「低糖質食(糖質制限食)」群は、まったく検討されていない。

 ということです。



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 精神科医師A 論文への見解2012/02/02

 この論文について、2名の医師の見解を示します。

    LCD(low-carbohydrate diet低炭水化物食、ローカーボ食
    HCD(high-carbohydrate low-fat diet高炭水化物低脂肪食


(1)南江堂「内科」108(4)671-676, 2011年10月号 灰本 元

ローカーボ食(炭水化物糖質制限食)による「2型糖尿病」の治療
  ローカーボ食の大規模長期観察コホー卜研究

 最近、「総死亡率」をアウトカムとして、
 HCD と LCD を比較した「大規模長期観察コホート(女8.5万人26年間男4.5万人20年間)」の結果が、
 米国から発表された。

 それによると、厳しく炭水化物糖質制限を制限すればするほど HCD群に比べて「総死亡率」は有意に上昇した。

 ところが、LCD群の食事内容をさらに詳しく解析すると、「総死亡率」を押し上げたのは、
 動物性脂肪動物性蛋白質を中心に摂取した「中くらいの炭水化物制限」の LCD群(35~37%C)で、
 HCD群に比べて年齢総摂取エネルギー調整ハザード比(HR)は1.66()~ 1.26()へ有意に上昇し、
 心血管死も癌死(特に肺癌と結腸癌)も有意に増えた。

 一方、植物性脂肪植物性蛋白質を中心に摂取した群では、
 炭水化物糖質制限も緩やかで(40~43%C)、HR は0.77()~ 0.77()、
 むしろ、有意に「死亡率」は減少した。

  (中略

 一方で、「大規模観察コホート研究」は LCD の課題も浮き彫りにした。
 厳しい LCD は重症DM ヘ短期間に限定するほうが安全である。
 長期的には、緩やかな炭水化物制限をしながら植物性脂肪植物性蛋白質を中心に摂取する LCD が、
 今後世界の主流になるであろう。


(2)Diabetes Frontier 22(1)35-39, 2011年2月

 野田絵美子 (東京医科大学内科学第三講座 糖尿病代謝内分泌内科

低炭水化物食と癌

 心疾患、癌、糖尿病を持たない男女に対し行なった米国での「コホート研究」によると、低炭水化物食の中でも、
 動物由来を中心とした高蛋白高脂質食では、癌や心血管イベントなどを含んだ「年齢別 総死亡率」は高く、
 植物由来を中心とした高蛋白高脂質食では「年齢別 総死亡率」は低かった。

 低炭水化物食の効果は、糖質以外の栄養素である脂質や蛋白質の種類に大きく影響されると考えられた。


両名の見解の特徴を示すと、

1)厳しい LCD は、重症糖尿病に対し、短期間に限定するほうが安全である。
  長期的には、緩やかな炭水化物制限をしながら植物性脂肪植物性蛋白質を中心に摂取する LCD が、
  今後、世界の主流になるであろう。

2)低炭水化物食の効果は、糖質以外の栄養素である脂質や蛋白質の種類に大きく影響されると考えられた。



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 精神科医Aさん。
 情報、ありがとうございます。


 まず、灰本医師と野田医師の見解は、完全な誤解です。

 そもそも、この論文には、糖質制限食をしたグループは登場していません。
 この論文はあくまでも、総摂取エネルギーの37.4%(女性)、35.2%(男性)を、
 炭水化物から摂取している「中糖質食の動物食グループ」における話です。

 『高雄病院』の「スーパー糖質制限食(総摂取エネルギーの12%を糖質から摂取)」を実践しているグループ は、
 この論文のどこにも登場しません。

 これだけの糖質摂取量だと、低炭水化物食(糖質制限食)の研究というには相応しくありません。
 「厳しい糖質制限食(スーパー糖質制限食)」を実践したグループの研究が行なわれていないのですから、
 その「発癌リスク」が増えるという根拠にはまったくなりません。

 ちなみに、ADA は130g/日以下、2000kcal/日で26%以下を「糖質制限の定義」としており、
 バーンスイタイン医師ら糖質制限食派の医師も、これを認めています。

 まずは、ブログ読者のみなさん、このように「スーパー糖質制限食」を実践して「発癌リスク」が増える、という記載は、
 この論文には存在しません。

 したがって、そのようなエビデンスもないことを明記したいと思います。


 ハーバード大学の研究者の「Annals of Internal Medicine」の論文、
 以前にも論評したことがありますが、再考察します。

 総摂取カロリーに対して、

  「脂質56%、タンパク質32%、糖質12%」

 という構成比が「スーパー糖質制限食」です。
 当然、従来の一般的な食生活に比べれば、高脂質高蛋白食となります。

 ブログ読者のみなさんが一番心配なのは、
 「高脂質高蛋白食を長年続けたら、何らかの癌になりやすくなるのではないか?」という懸念でしょう。

 これに対しては、

   「スーパー糖質制限食」と「発癌のリスク」に関するエビデンスはない。

 というのが結論です。

 すなわち、

   「スーパー糖質制限食」で「発癌のリスク」が増えるというエビデンスはない。

 ですし、一方、

   「スーパー糖質制限食」で「発癌のリスク」が減るというエビデンスもない。

 ということです。

 これは「糖質摂取比率12%の集団」と「通常食の集団」における「癌の発生」を、
 10年、20年経過を追ったような臨床研究は、現時点で存在しないので当然の結論です。



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<問題の論文の要旨>

『低炭水化物食』と「全死亡率」及び「死因別死亡率」2つのコホート研究

Annals of Internal medicine
September 7 2010 vol.153 Issue5 p289-298 
Low-Carbohydrate Diets and All-Cause and Cause-Specific Mortality:Two Cohort Studies
Teresa T. Fung, Rob M. van Dam, Susan E. Hankinson, Meir Stampfer, Walter C. Willett, and Frank B. Hu



【要旨】

 『低炭水化物食』と「死亡率」の関連を長期にわたって調べたデータはほとんどない。

 今回、「前向きコホート研究」で、
 Nurses' Health Study(訳注看護師の健康調査)に参加した85,168人の女性と、
 Health Professionals' Follow-up Study(訳注医療従事者追跡研究)に参加した44,548人の男性を、
 最大26年間追跡した。

 動物性脂肪、及び、動物性蛋白質を重視した食事では「全死亡率」「心血管死亡率」「癌死亡率」が高かった。
 一方、植物性脂肪、及び、植物性蛋白質を重視した食事では「全死亡率」と「心血管死亡率」が低かった。



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 この論文の【要旨】の、

    糖質制限食(低炭水化物食)で、動物性脂肪、及び、動物性蛋白質を重視した食事では、
     「全死亡率」「心血管死亡率」「癌死亡率」が高かった。


 を根拠にして、糖質制限食は「発癌のリスク」が懸念される、というのは根本的な誤解です。

 この論文はあくまでも、総摂取エネルギーの35.2~37.4%を炭水化物から摂取している「中糖質食」グループと、
 約60%の「高糖質食」グループを比較した時の話です。

 総摂取エネルギーの12%を糖質から摂取している「糖質制限食」グループは、
 この論文のどこにも登場しないので、比較不能です。

 つまり、『高雄病院』流の「スーパー糖質制限食」を実践している人においては、
 この論文はまったく参考になりません。

 炭水化物を総摂取エネルギーの60%食べているグループに比べれば、
 炭水化物35.2~37.4%のグループのほうが、確かに「低糖質食」です。
 それで「低炭水化物食のコホート研究」としたのでしょう。

 一方、糖質を総摂取エネルギーの12%しか食べていないグループに比べれば、
 炭水化物35.2~37.4%のグループは3倍以上の「高糖質食」であり、到底「低糖質食」とは言えません。

 これまで多くの研究で、高インスリン血症による『腫瘍増殖』『発癌促進作用』が示されてきています。
 すなわち、高インスリン血症には、明確な「発癌リスク」のエビデンスがあります。

 糖質を総摂取エネルギーの12%とする「スーパー糖質制限食」なら、食事1回分の糖質は10~20gで、
 追加分泌インスリンは、せいぜい基礎分泌の約2倍~4倍程度です。

 一方、炭水化物摂取比率35.2~37.4%のグループは、1回の食事の糖質量は50g以上であり、
 食事の度に約10~20倍の追加分泌インスリンが分泌されます。

 すなわち、炭水化物摂取比率35.2~37.4%のグループでは、
 明白な「発癌リスク」となるインスリン過剰分泌が改善できていません。

 これだけのインスリン分泌量は、糖質摂取比率60%のグループと、さほど変わらないと思います。
 「スーパー糖質制限食」なら「発癌リスク」のインスリン分泌は極少量で済みます。


 また「スーパー糖質制限食」なら、血中ケトン体が現行の基準値より高値となります。
 少なくとも、動物実験では、血中ケトン体に『癌細胞抑制作用』があることが確認されています。
 これらのことは、生理学的な事実です。


 また、国際糖尿病連合(International Diabetes FederationIDF)の
 「食後血糖値の管理に関するガイドライン」2007年によれば、
 食後高血糖そのものが、ある種の「癌のリスク」となります。

 糖質を総摂取エネルギーの12%とする「スーパー糖質制限食」なら、食後高血糖は生じませんが、
 炭水化物摂取比率35.2~37.4%のグループは、1日3回以上、食後高血糖を生じます。

    インスリン分泌が極少量
    食後高血糖がない
    血中ケトン体が高値

 という「発癌リスク」を軽減させる効果がある「スーパー糖質制限食」において、
 長年続けることで、それらを上回る何らかの「発癌リスク」が、存在するのかしないのかということは、
 今後、長期にわたり検討していく必要はあるでしょう。

 幸い、現在まで、そのような謎の「発癌リスク」は知られていませんが‥。


 結論です。

   「スーパー糖質制限食」と「発癌のリスク」に関するエビデンスはない。

 のですが、「発癌リスク」が明白に確認されているインスリンの分泌が、
 「スーパー糖質制限食」なら極少量に抑えられることは生理学的事実です。

 また「発癌リスク」の一つの食後高血糖も、「スーパー糖質制限食」なら生じません。
 さらに『癌細胞抑制作用』の可能性がある血中ケトン体が高値となります。