当記事は「命を育む医療」ブログ様から「肉食と死亡率癌死亡率の関係」及び「肉食と糖質制限食の関係」などを調査した著名な「大規模コホート研究」による研究報告をまとめた3つの記事をご紹介させて頂きます。

 この記事は大変素晴らしい内容で、よくぞ、ここまで分かりやすくまとめてくださったと思います。
 「命を育む医療」ブログの管理人さんは一般の方のようですが、ご本人 曰く「医療関係者向け」に記事を書いているようです。そう仰られるだけあって、非常に素晴らしい内容になっています。


 「コホート研究」というのは、長期間にわたり「追跡調査」を行なったものであり、一言で言えば「実地調査」であり、「実地」から導き出した(実地に現われている)『真実の見解』を伝える研究です。
 それに、当記事で紹介されている「コホート研究」は非常に大規模であり、このような著名なる「大規模コホート研究」の研究内容は真剣に重視すべきものです。


 当記事で紹介されている著名な「大規模コホート研究」の内容を簡潔に言いますと、

    肉製品を食べると、死亡率癌死亡率 が増加する。

 ということです。

 この著名な「大規模コホート研究」の内容に重なる(つまり、同じ結果を示す)研究報告など、世界中、以前から動物実験などで多数ある内容です。何も、この「大規模コホート研究」に始まった結論ではありません。

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【上図の注釈】

 上図の『肉食で死亡率は上がる。ちょっぴりね…』にある「ちょっぴりね…」の意味を説明します。
 上図の中の、次の「右上図」をご覧ください。

8fbce123[1a]

 これは4種類の「菜食主義者(ベジタリアン)」である「ビーガン」「ラクト・オボ・ベジタリアン」「ペスコ・ベジタリアン」「セミ・ベジタリアン」を比較したものです。

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 ご覧のように「菜食主義者(ベジタリアン)」は、

    ビーガン = 完全菜食主義者(菜食のみ
    ラクト・オボ・ベジタリアン = 菜食 + 卵 + 牛乳乳製品
    ペスコ・ベジタリアン = 菜食 + 魚
    セミ・ベジタリアン = 菜食 + 肉製品 + 卵 + 牛乳乳製品 + 魚

 という分類になっています。

 基本的には「菜食主義者(ベジタリアン)」であっても、菜食の他に「肉製品」「卵」「牛乳乳製品」を摂っている場合は、完全菜食主義者(ビーガン)や、菜食 + 魚(ペスコ・ベジタリアン)よりも「死亡率が “ちょっぴり” 上がりますよ」という意味で「ちょっぴりね…」と言っているわけです。

 当記事をご覧になって頂ければお分かり頂けますが、肉製品を多く摂取した場合、死亡率はも~っと上がります。
 特に「加工肉」を多く摂取した場合は、死亡率がさらに上がります。


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 「糖質制限食」に関しましては、

    動物由来の食品(動物性食品肉製品)を中心にした糖質制限食
    植物由来の食品(植物性食品)を中心にした糖質制限食

 で比較した結果、次の結果が出ました。

   総死亡率についても、癌死亡率についても、男性でも、女性でも、
   動物性タンパク質動物性脂質(主に肉製品)に基づいた「糖質制限」では、死亡率癌死亡率 が増加する。
   植物性タンパク質植物性脂質に基づいた「糖質制限」では、死亡率癌死亡率 は減少するか増加しない。



 これは、

    動物性タンパク質動物性脂質(主に肉製品)を中心とした「糖質制限」は、
     総死亡率癌死亡率が増加する。

    植物性タンパク質植物性脂質を中心とした「糖質制限」は、
     総死亡率癌死亡率は減少するか増加しない。


 という、「糖質制限食」を実行する上で注意すべき重大な内容となっています。


 つまり(詳しくは当記事をご覧頂きたいのですが)「糖質制限」を行なう場合は、

    動物性食品(肉製品乳製品)を中心とした「糖質制限食」よりも、
     植物性食品 と 魚介類家禽類(鶏など)を中心とした「糖質制限食」のほうが安全である。


 ということが、この著名な「大規模コホート研究」による研究報告から理解できるわけです。


 甲田光雄先生のお弟子さんが次の記事にて「肉食中心の糖質制限」は危険ゆえ、「菜食中心の糖質制限食」にしたほうが安全である、と訴えておられました。

    肉食中心の糖質制限は、死亡率・癌化を上昇させる
     【 動物性脂肪・動物性タンパク質の摂取量が増えると、総死亡率、癌死が増える!
       糖質制限は「菜食中心」が安全です!】


 甲田光雄先生のお弟子さんも、この著名な「大規模コホート研究」の研究報告をご覧になられて判断されたのだと思われます。至極当然なるご判断です。



 私は次の記事で、肉製品乳製品を中心とした「断糖肉食」の危険性を訴えました。

   「断糖肉食」の 盲点!
    【「断糖肉食」によって体内の癌が消失して「癌が治ったァ!」と思い込んでいる癌患者さん、
      果たして、その癌は本当に治っているのでしょうか? 】


 肉製品乳製品を中心とした「断糖肉食」で、癌細胞のエサとなる「ブドウ糖」を断って体内の癌が消失しても、果たして、それで癌が治っているのだろうか‥、「体内の癌が消えた」=「癌が治った」なのだろうか‥、こういう視点を癌患者のみなさんに持って頂きたかったのです。

 癌患者のみなさん、知っていますか?

 今の癌は進化しており、昔の癌とは別物になっています。
 昔の癌は食事療法や断食をすれば治ってしまう程度の癌でしたが、今の癌は進化して「特殊能力」をいくつも獲得しています。

 「特殊能力」を獲得した癌細胞は「中心部の懐死組織」を発酵させ、それを栄養としてゆっくりと増殖する癌細胞があるのです。この「特殊能力」を獲得した癌細胞にもなると、糖質制限で癌細胞に「ブドウ糖」に枯渇させても、もはや、死なない癌細胞になっています。

 今の癌はますます進化を遂げて、このような「生きるための栄養」を「自己生産」してしまう『栄養飢餓耐性化』した癌細胞がすでに現われているのです。
 私は、この「自己栄養生産」をして『栄養飢餓耐性化』した癌細胞を、勝手に勝手に『自己栄養生産型癌細胞』と名付けてやりました‥。
 お分かりだと思いますが、この『自己栄養生産型癌細胞』には、もはや、糖質制限は通じないでしょう‥(涙)

 『厳格な「ケトン食(糖質制限)」を行なっても、癌から助からなかった』というネガティブな報告があるのですが、おそらく、厳格な「ケトン食(糖質制限)」を行なっても癌の勢いを止められなかった、という実地は、まず、この『自己栄養生産型癌細胞』が実在することを意味しているのだと思います‥。

 私が「糖質制限さえすれば、癌なんて治っちまうぜ!」という浅はかな見解を示す人たちに危険性を感じるのは、この『自己栄養生産型癌細胞』を意識しているからです。
 その癌患者さんの癌の悪性度がまだ軽度であれば糖質制限が通じるのでしょうが、その癌患者さんの癌の悪性度が高くなっており、その癌患者さんの癌が進化を遂げて『自己栄養生産型癌細胞』にまで進行していたとしたら、その時は、もはや、その癌患者さんは糖質制限という方法が通じなくなっていると判断したほうが賢明だと思います。


 上記の「「断糖肉食」の 盲点!」記事にてお話ししていますように、「断糖肉食」で体内の癌が消失しても、そのまま「断糖肉食」を継続していけば、一体、どうなるのでしょうか‥。

 肉製品乳製品は『癌の発生、及び、癌細胞の増殖悪性化転移を促進させる作用』があることが医学的に正式に解っているのですから、この肉製品乳製品を中心とした「断糖肉食」を継続していけば、やがて、癌の悪性度が高まり、癌を進化させてしまう懸念があるのではないかと思います。

 ゆえに、その現われとして当記事が示す如く、この著名な「大規模コホート研究」によって『肉製品を中心とした糖質制限は「癌死亡率」が増加する』という実地のデータがありのまま出ているのではないかと思います。

 肉製品乳製品を中心とした「断糖肉食」や「MEC食」などを実行して、すべての癌が同等に安全に消えるなら『肉製品を中心とした糖質制限は「癌死亡率」が増加する』というデータが実地に出ていないはずです。

 まずもって、癌患者に対して「断糖肉食」や「MEC食」を平気で推奨している先生というのは、当記事の重要な研究報告をまったく知らないか、意識的に無視しています。
 だって、そういう先生は、当記事の重要な研究報告について、ま~ったく触れていません。
 これは、その先生が単なる「肉食愛好家」に過ぎないことを打ち明けるものです。
 また、実地を大無視ぶっこいた、頭の中は教科書しかない「頭デッカチ」先生だということです。
 こういう先生が一番危険であり、自分に都合の良い部分だけをチョイスし囁いては素人をたぶらかし、自分に都合の悪い部分に対しては物の見事に蓋をしてしまう嫌いが見受けられます。
 本物ならば、「断糖肉食」や「MEC食」の利点と共に、「断糖肉食」や「MEC食」の欠点をも伝えられる素養がなければなりません。それが無いということは、その先生は要注意人物である証拠です。

 特に、次の記事が示す通り、癌患者さんにおいては、肉製品は甘く見てはならない人もいることを決して忘れないでください。

    癌患者が獣肉食を甘く見るのは、ご自分の生命を軽く見るのと同意です
    【 獣肉を食べた直後から様態が激変して亡くなられる癌患者さんの症例から、獣肉食の答えを探る・・・ 】



 今、世間では「糖質(ブドウ糖)を断てば、癌が治っちゃう!」と安易に思い込んでいる人たちが増えています。当然、糖質(ブドウ糖)を断つことによって体内の癌が消失する症例はすでに世間にも現われていますが、しかし、これは「すべての癌患者が同等に上手くいくとは限らない側面がある」ことを決して忘れないでください。

 今の癌は進化を遂げて悪性度を高めていますので、癌治療は甘く考えないほうが良いです。

 当記事も、糖質制限を実行する上での参考にされてください。
 よろしくお願いします m(__)m

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 肉を食べることの意味 (2)エビデンス篇
 ① 死亡率と癌死亡率 (ⅰ)NHS と HPFS

 【「命を育む医療」
より 】


 ここでは、肉食について、
 2014年9月現在の時点で手に入る「筆者が最も信頼できる」と判断した文献をご紹介します。
 (文献の信頼性の判断基準については、いずれまとめます

 肉食も含めて生活習慣についての研究は、
 ランダム化も、二重盲検も、極めて困難な上に生活習慣の正確なアセスメントが難しいです。
 それは大規模になればなるほどより厳しくなり、ある程度の不正確さが入るのはやむを得ないことと思われます。

 そこで、このトピックについて最も質が高い研究は「大規模コホート試験」です。
 アメリカで3つ、ヨーロッパで1つの「大規模コホート試験」にて、
 肉食と「死亡率」「癌死亡率」の関係が研究されています。


1.Nurses` Health StudyとHealth Professionals Follow-up Study

Nurses` Health Study
 1976年に開始されたアメリカの女性看護師121700人を登録したコホート試験。
 開始時年齢30-55歳。2年ごとに追跡調査を施行。98%で死亡を確認した。

Health Professionals Follow-up Study
 1986年に開始されたアメリカの男性医師、歯科医師51529人を登録したコホート試験。
 開始時年齢40-75歳。2年ごとに追跡調査を施行。2014年夏期、現在までの追跡率は概ね93%。

 この2つの「コホート試験」は、非常に多くの参加者を2年ごとに可能な限り正確に評価を行ないつつ、
 30年以上にわたって追跡しているのに、脱落率が極めて低く、
 最善を尽くした質の高い「コホート試験」だと言えると思います。

 この2つの研究は、よく結果を結合して分析されています。
 肉食についての研究も、2つの研究を合わせたものになっています。


Red Meat Consumption and Mortality: Results from Two Prospective Cohort Studies 1)

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 2つの「コホート」のうち、開始時に心血管疾患も癌も患っていなかった83644人について、
 2960000人年に及ぶ観察を行なっています。

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 結果は、総カロリー摂取量、全粒穀物、果物や野菜の摂取量、
 年齢、BMI、人種、喫煙、飲酒、身体活動量、
 マルチビタミンの摂取、アスピリンの使用、
 糖尿病心筋梗塞癌の家族歴、開始時の糖尿病。高血圧高脂血症の有無。

 女性では、生理の有無とピルの使用などについて多変量解析を用いて調整されています。

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 結果です。

 横軸は肉の摂取量(g/日)です。
 まったく摂らない人を「1.0」とすると、摂取量が増えるにつれて少しずつ「死亡危険率」が上がっていきます。
 概ね、線型と言えるでしょう。

 一日に「250g」くらい摂取すると「死亡危険率」はだいたい割り増しになっています。
 これは日本人ではあまりない摂取量ですが、時々見かけます。

 横軸の数字が半端なのは、
 アメリカではこのような研究の場合、食物の摂取量をサービングという単位を用いて表現するからです。
 肉の「1サービング」は、およそ「85g」です。

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 原因疾患別の「死亡危険率」です。

 心血管疾患においても、癌においても、
 肉の摂取量が「85g」増えるごとに1~2割ずつ「死亡危険率」が上がっていきます。

 それを「非加工肉」と「加工肉(ハムソーセージベーコンなど)」に分けてみると、
 「加工肉」のほうが軒並みリスクが高くなっています。

 牛、豚、羊などの「赤身肉」を、
 他の「より健康的な食品」と置き換えた時に期待される「死亡危険率」の低下についても分析されています。

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 ナッツ、豆類、低脂肪乳製品、全粒穀物(玄米全粒粉パンなど)、
 ニワトリアヒルなどの家禽類、魚介類に置き換えると、
 いずれも、5から30%くらい危険率が低下しています。
 特に「ナッツ」の健闘が目立ちますね。

 こういうデータを見ると、僕は「人類って、やっぱりサルなんだよなぁ」って思います。
 進化の過程において大部分は木の上で生活して、
 ナッツ類や豆類(ツル性の豆もありますから)、果物、穀物類、
 樹上で見つかるような小動物などを食べてきたんだと思います。

 天候の激変に伴って木から下りる羽目になってからも、
 大部分の時期は同じようなものを食べるか、あるいは、魚が加わった程度でしょう。

 大型の動物を狩るようになったのは、
 道具を用いるようになり、集団で狩りをするようになってからでしょうから、
 人類史上はかなり新しいことだと思います。

 話がそれました。
 研究者は総括として以上のように述べています。

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 赤身の肉類は一日「42g」以下に制限したほうが良いという結論です。


Low-carbohydrate diets and all-cause and cause-specific mortality: Two cohort Studies 2)

 この論文は肉食について直接研究したものではありません。
 『成人で、厳しく糖質制限すると、しないのと比べて「総死亡率」及び「癌死亡率」はどうなるか』を比較しています。

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 その結果です。
 まず「総死亡率」です。

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 最も糖質制限を厳しく行なった場合(糖質制限スコア10)は、
 行なわなかった場合(糖質制限スコア1)と比べて、全体として1割程度「死亡率」が増加しています。

 糖質制限を行なうと、普通は脂質とタンパク質の摂取量が増えます。
 この研究では「動物由来の食品を中心にした場合」と「植物由来の食品を中心にした場合」にわけて、
 さらに分析しています。

 アメリカ人の場合は、厳しい糖質制限を行なうと、動物性タンパク質や動物性脂肪の摂取量が増加しやすいです。
 そうやって厳しい制限を行なうと、2割前後「総死亡率」が増加します。
 逆に、脂質を中心にした場合には「総死亡率」と「癌死亡率」が2割程度減少しています。

 もう少し詳しく見てみましょう。

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 「総死亡率」についても、「癌死亡率」についても、男性でも、女性でも、
 動物性脂質タンパク質に基づいた糖質制限では「死亡率」が増加しますが、
 植物性脂質タンパク質に基づいた糖質制限では「死亡率」は減少するか少なくとも増加はしません。


 「炭水化物制限スコア」の「1」は総カロリー量に対する炭水化物カロリーは概ね60%で、
 現在の「日本糖尿病学会」の推奨に相当します。

 「炭水化物制限スコア10」の35-25%は、糖質制限論者の言う「スーパー糖質制限」に相当し、
 ほとんど「まったく主食を摂らない食生活」です。

 日本で糖質制限を声高に主張する人は、
 同時に、肉や卵、乳製品はどの動物性タンパク質や動物性脂質の摂取を勧める傾向が強いです。
 しかし、このデータから判断すると、
 (動物性タンパク質や動物性脂質の摂取は)決して推奨できないことが分かります。

 また、大腸癌と肺癌については、
 「動物性食品」に基づいた糖質制限との直接の相関を認めました。

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 大腸癌と「赤身肉」の関係については、様々な研究でほぼ一貫して同様の結果が出ています。
 これは日本の「多目的コホート試験」でも同じです。

 以上より、糖質制限を行なう場合は、
 「動物性食品」よりも、「植物性食品」や「魚介類」を中心にした食事にしたほうが良いことが分かると思います。

 しかし、糖質制限を主張される方で、これに触れる人はほとんどいないように思います。

 「日本ローカーボ食研究会」の理事で「ゆるやかな糖質制限食」を推奨される「灰本元」先生は、
 同研究会のホームページや著書で、この問題を丁寧に分かりやすく説明されています。

 糖質制限を実践されている方、あるいは、これからしようとする方は、ぜひ、ご覧になってください。



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 今回、ご紹介した「コホート試験」は、大規模研究に伴う様々な制限はあっても、
 非常に質が高く、現在までのところ、最も信頼できる研究だと思います。

 しかし、単一の研究で結論を出すことは控えなければなりません。
 次回以降、順次、他の大規模コホート試験をご紹介していきます。


【参考文献】
1) Red Meat Consumption and Mortality: Results from Two Prospective Cohort Studies 
Pan A, Sun Q, Bernstein AM, Schulze MB, Manson JE, Stampfer MJ, Willett WC, Hu FB. Arch Intern Med. 2012 Apr 9;172(7):555-63. doi: 10.1001/archinternmed.2011.2287. Epub 2012 Mar 12.
2) Low-carbohydrate diets and all-cause and cause-specific mortality: Two cohort Studies Fung et al. Ann Intern Med. 2010 September 7; 153(5): 289–298. doi:10.1059/0003-4819-153-5-201009070-00003.





 肉を食べることの意味 (2)エビデンス篇
 ① 死亡率と癌死亡率 (ⅱ)セブンス・デイ・アドベンチスト研究

 【「命を育む医療」
より 】


 次にご紹介するのは「Seventh Day Adventist」というキリスト教教派の信徒を母集団とした研究です。

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 「セブンス・デイ・アドベンチスト」は宗旨として健康的な生活を強く勧めています。
 禁煙、禁酒、適度な運動、食生活では基本的に「菜食主義」を薦めています。

 この研究の参加者の中でも「非ベジタリアン」が48.2%で、
 残りがいろいろなタイプ(後述)の「ベジタリアン」です。


1.セブンス・デイ・アドベンチストの誕生

 「セブンス・デイ・アドベンチスト」は19世紀後半に興ったキリスト教の一教派です。
 中心となったのは「ウイリアム・ミラー」という農民で、敬虔なキリスト教信者でした。
 彼は聖書の文献的研究から「1844年に世界は終わり、キリストが再臨する」と予言しました。

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 「世界が終わる」というとギョッとしますが、
 彼らにとっては、それよりは「キリストの再臨」を願う気持ちが強いのでしょう。

 僕たちにとって幸いなことに、予言は外れました。
 すると、彼は再び研究して、別の年に「キリストが再臨する」と予言しました。
 もちろん、これも外れてしまいます。こんなことを何回も繰り返したようです。

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 これを見かねたのか、やはり、中心人物の一人である「エレン・グールド・ホワイト」は、
 第7日目の安息日(土曜日)にしっかりと休んでいないことが「キリストが再臨しない」理由だと言いました。

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 これが「セブンス・デイ・アドベンチスト(キリスト再臨待望者)」と呼ばれるようになった所以です。
 現在では、世界中に広がっています。日本にも多くの教会はもちろん、いくつかの病院まであります。


2.セブンス・デイ・アドベンチストの宗旨

 キリスト教徒ならぬ僕には、彼らの「キリスト再臨」に対するこだわりがよく理解できません。
 しかし、その宗旨には素晴らしいものがあります。

 私たちの体は「神の宮殿」であり、そこには「神の御霊」が宿るのだから「聖なるもの」である。
 自分の体は、神から借り受けて自分の中に宿っている「聖霊の宮殿」なのだから、
 もはや、自分自身のものではない。

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 だから「大切にしなくてはならない」と言うのです。
 節制して、タバコやアルコールは避けます。
 しっかり運動すると同時に、きちんと休息を取ることを大切にします。

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 自分の体は「自分だけの私有物」だから勝手に使って楽しんでいいと考えている人より、
 遙かに肉体的かつ精神的に健やかでいられるように思います。

 自分の健康は自分のためだけではない、家族のためでもあるし、組織のためでもあり、
 さらに、もっと大きい社会や世界のためでもあると考えられれば、
 仕事のために自分を犠牲にすることなどなくなると思います。

 仕事のために自分を犠牲にするようなプレッシャーのかかる職場は変えなければならないでしょう。
 そういう場所には未来がありません。

 でも、実際は、そんな患者さんが少なくありません。

 旧約聖書では、神と人間の「契約」が重視されていますが、
 はじめの人間(アダムとイブ)が生まれた時に「食べる」ことが許されたのは「植物」だけでした。

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 「動物」を食べるのを許されたのは、大洪水でほとんどの人間や生き物が滅んだ後に、
 ノアとその家族が陸に降りた時でした。

 洪水で草木がなくなり、他に食べるものがなかったからです。

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 そこで、「セブンス・デイ・アドベンチスト」では、信徒にできるだけ「菜食主義」でいるように勧めます。
 しかし、強制ではないので、実際には半分くらい「非ベジタリアン」もいます。

 健康的な生活の勧めは次のような「セブンス・デイ・アドベンチスト協会」のホームページでも、
 詳しく解説されていますのでご興味があればご覧ください。

  健康な生活 ー セブンスデイ・アドベンチスト大阪センター

 こうして、「セブンス・デイ・アドベンチスト」の教会員は、
 一般人口と比べて生活習慣が比較的健康的でバラツキが少なく、
 さらに、その中で様々なタイプの「ベジタリアン」がいます。

 そこで、それぞれのタイプの「菜食主義」の健康への効果を研究するためには理想的な研究対象なのです。


3.菜食主義の様々なタイプ

 様々な「ベジタリアン」のタイプについて説明します。

 「ベジタリアン」と言うと「動物性食品」をまったく食べないように思うかもしれませんが、
 実際には、いろいろな「動物性食品」を摂る場合が多いのです。

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 「動物性食品」をまったく摂らない場合は「ビーガン」と呼ばれます。

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 「赤身肉」はもちろん「白身」でも摂らないし、「魚」も摂りません。
 畜産物である牛乳やチーズなどの「乳製品」、「卵」も厳密に避けます。

 これらは様々な食品に原材料として含まれているので、
 お菓子、ほとんどのパン、加工食品、レトルト食品なども摂れないことになります。

 これだけ多くの食品を摂らないと栄養失調になりそうですが、実際はしっかりと気をつければ大丈夫です 1)

 でも、例えば「ビタミンB12」補充のために、
 「サプリメント」や「食品用イースト(ニュートリショナルイースト)」が必要になったりします。

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 「ビーガン」以外にも様々な「ベジタリアン」がいます。
 しかし、基本的には「陸上動物の肉」は食べません。

 「乳製品」を摂るベジタリアンは「ラクト・ベジタリアン」と言います。

 「卵」を食べると「オボ・ベジタリアン」です。
 「乳製品」と「玉子」を両方食べると「ラクト・オボ・ベジタリアン」です。

 「魚」だけ食べるベジタリアンを「ペスコ・ベジタリアン」と言います。
 これは「日本の伝統的な食生活」に近いものです。

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 「ベジタリアン」にも “なんちゃって” 的な存在があり「セミ・ベジタリアン」と呼ばれます。
 これは基本的には、上記のようないずれかの「ベジタリアン」の食生活を送っていますが、
 時々は「陸上動物の肉」を食べます。

 僕は基本的にはこの「ペスコ・ベジタリアン」で、自宅では「動物の肉」「卵」「乳製品」を食べませんが、
 外出時に目の前に出てくれば食べることにしているので、
 「ペスコ・ベジタリアン」タイプの「セミ・ベジタリアン」ということになります。

 「セブンス・デイ・アドベンチスト」研究では、
 「非ベジタリアン」と、これら様々なタイプの「ベジタリアン」を比較研究しています。


4.セブンス・デイ・アドベンチストⅡ 研究 2)

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 この研究は、以上で説明してきたような、
 カルフォルニアの「セブンス・デイ・アドベンチスト」73000人あまりを6年弱経過観察して、
 食事パターンを「総死亡率」や各種疾患による「死亡率」を比較したものです。

 参加者のうち、「ビーガン」が7.6%、「ラクト・オボ・ベジタリアン」が28.9%、
 「ペスコ・ベジタリアン」が9.8%、「セミ・ベジタリアン」が5.5%、「非ベジタリアン」は48.2%でした。


総死亡率

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 全体として「ベジタリアン」は「非ベジタリアン」と比べて「死亡率」が低い傾向にあります。
 特に「ペスコ・ベジタリアン」では有意差を持って約2割の「死亡率」低下が示されています。
 p値は「セミベジタリアン」以外では、すべて「0.05」以下になっています。


虚血性心疾患と心血管疾患

 虚血性心疾患では、概ね「非ベジタリアン」と比べて低い傾向が示されましたが、
 「ペスコ・ベジタリアン」では、信頼区間が比較的広いものの、有意差をもって4割もの「リスク」低下が見られました。

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 心血管疾患では、どのタイプも有意差は出なかったものの、同様の「死亡率」低下傾向が見られました。

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 これを男女別に分析すると、
 男性では「非ベジタリアン」以外で明らかな有意差をもって、かなり大きい「死亡率」の低下を認めました。
 「ビーガン」で約4割、「ペスコ・ベジタリアン」で3割5分ほどの「リスク」低下が見られます。

 これに対して、女性ではどのタイプでも有意差がなく、低下傾向ははっきりしません。
 特に「ビーガン」では2割程度「リスク」が上昇する比較的強い傾向を認めました。

 女性の場合は「ビーガン」は止めたほうが良いのかも知れません。


癌、その他

 「癌死亡率」でも有意差は出ないものの、全体として1割弱の低下傾向が見られました。
 しかし、心血管疾患と比べると、その差は大きなものではありません。

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 心血管疾患と癌を除いた他の死因でも、比較的大きな低下傾向がありました。
 ここでも「ペスコ・ベジタリアン」では有意差があり、3割程度の「死亡率」低下を認めます。


心血管疾患癌以外の死亡率

 心血管疾患と癌以外の疾患による「死亡」で比較的大きな差が出たことから、
 どのような疾患で大きな差が出るのか調べられました。

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 その結果、腎疾患(慢性腎不全など)と、内分泌疾患(糖尿病など)による「死亡率」で、
 大きな差があることが分かりました。

 しかし、ここでも、男性では有意差をもって大きな「リスク」低下が見られているのに、
 女性では優位差がなく、「リスク」低下の度合いも小さくなっています。

 男性の「リスク」低下が大きいために、全体としては有意差がついています。


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 「癌死亡率」でははっきりしませんが、
 「総死亡率」と「心血管疾患による死亡率」は「赤身肉」の摂取で上昇しています。

 前回の NHS と HPFS の2つの研究とほぼ同様の結果が出ていることになります。
 加えて、「赤身肉」に代えて食べるのには「魚」が良いことを示唆していると思います。


【参考文献】
1)ベジタリアンの医学」蒲原聖司 平凡社新書 2005
2) Vegetarian Dietary Patterns and Mortality in Adventist Health Study 2JAMA Intern Med. 2013;173(13):1230-1238






 肉を食べることの意味 (2)エビデンス篇
 ① 死亡率と癌死亡率 (ⅲ)アメリカとヨーロッパの超大型コホート研究

 【「命を育む医療」
より 】


 僕が検索して見つけられた肉食の健康への影響を調べた大規模研究、残りの2つをご紹介します。


1.Meat intake and mortality:
   a prospective study of over half a million people.
 1)

 この研究は「NIH Diet and Health Study」の一環です。
 最大の特徴は、なんと言っても、その参加人数です。
 「50万人」を越える「コホート」は、そうそう、いくつもありません。

 この研究では、1995年から1996年にかけて、
 「約350万人」に質問表を送って「50万人」以上から回答がありました。

 質問票では、食生活や他の生活習慣が詳しく問われています。
 この集団について、2006年から2007年にかけて、再び質問表を送ってデータを収集し解析しています。

 参加者は「6つの州」と「2つの大都市」に居住しており、年齢は50歳から71歳でした。

 〔 6つの州 カルフォルニア、フロリダ、ペンシルバニア、ニュージャージー、ノースカロライナ、ルイジアナ
 〔 2つの大都市 アトランタ、デトロイト

d1634de4[1]


 回答から「赤肉」や「白肉」の摂取量を概算し、摂取量について参加者を5段階に分けています。

 「赤肉」を最も少なく摂取したグループでは1日あたり「9.1g」であるのに対して、
 最も多く摂取していたグループでは1日「65.9g」と大きな差がありました。

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 結果です。

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 男性でも、女性でも、「総死亡率」「癌死亡率」「心血管疾患死亡率」のすべてにおいて、
 「死亡率」の有意な上昇を認めました。

 それは、ソーセージやベーコンなどの「加工赤肉」でも「非加工赤肉」でも同じでしたが、
 どちらかと言えば、「加工赤肉」のほうが「リスク」上昇の幅は小さい傾向がありました。

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 それに対して、「鶏肉」を代表とする「白肉」の摂取では、
 最も多く食べる「総死亡率」と「癌死亡率(データは見つけられず)」の低下が認められました。

 「心血管疾患死亡率」に関しては、男性では「白肉」摂取で多少死亡率が上昇していました。

 これが「赤肉」摂取量について調整されているかどうかの記載は見つけられませんでした。

 以上をまとめると、次のようになると思います。


b9901600[1]



2.Meat consumption and mortality - results from the European
   Prospective Investigation into Cancer and Nutrition.
 2)

 こちらも負けず劣らずの「大規模研究」です。
 この論文はヨーロッパの「EPIC」という「大規模コホート研究」の一環です。
 「EPIC」の概要を下に示します。

6868c4c5[1]


 アメリカも、ヨーロッパでも、よくぞ、このような「大規模の研究」を計画したものです。
 これを行なうためには、莫大な資金と、途方もない労力が必要です。

 さて、こちらの結果はどうだったでしょうか?

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010d79f8[1]


 こちらは「加工赤肉」の害が際立っています。
 「非加工赤肉」については有害である可能性が強いものの、有意差はついていません。
 「白肉」については、こちらも有意差はついていないものの、「死亡率」を減少させる傾向を認めました。

abf81a13-s[1]


 この研究の結果をまとめると、次のようなことになると思います。

ced69087-s[1]


 これら2つの研究は、「加工赤肉」と「非加工赤肉」のどちらがより有害かという点では結果が食い違っていますが、
 それ以外の点ではほぼ同じような結果が出ています。

 まとめると、次のように理解して良いかと考えています。

ba4559bb[1]


 次回は「赤肉」摂取のエビデンスシリーズの総括をしたいと思います。


【注】
1) Meat intake and mortality: a prospective study of over half a million people.
Sinha R1, Cross AJ, Graubard BI, Leitzmann MF, Schatzkin A.Arch Intern Med. 2009 Mar 23;169(6):562-71. doi: 10.1001/archinternmed.2009.6.

2) Meat consumption and mortality - results from the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition Rohrmann et al. BMC Medicine 2013, 11:63


この続きは、次の記事をご覧ください。

    肉製品は「糖尿病」の発症リスクを増加させる!【 コホート研究による「肉製品」と「糖尿病」の関係 】

 「肉食と糖尿病の関係」についての内容であり、結論は『肉製品の摂取量が多いほど「糖尿病の発症リスク」が増加する』となっています。肉製品は「糖尿病の発症リスク」をも増加させるのです。気をつけましょう!
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