この記事は、『銀座東京クリニック』院長の「福田一典」医師が公開されています「『漢方がん治療』を考える」からのご紹介です。「福田一典」医師が『ケトン体』やケトン食について分かりやすく説明されている記事をご紹介させて頂きます。『ケトン体』の概要を知るのにちょうど良い記事です。

 また「福田一典」医師は当記事の中で『ケトン体には、癌の生存増殖悪性化転移を阻害する「抗がん作用」のある』ことを、米国「南フロリダ大学」高圧生体医学研究所から発表された癌研究報告の論文を交えながら詳しく解説されています。癌治療におけるケトン食の価値を知るのに、非常にためになる記事です。

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 糖質制限食とは、ただ単に糖質の摂取量を制限していれば良いわけではありません。
 糖質を安全に制限するには “ブドウ糖の代替エネルギー源” を得ることが重要なのです。
 もし、これを守らなければ、次の記事が示すように、いろいろと問題が出てきます。


   徹底的な「ノンカーボ(炭水化物摂取制限)」を謳う食事療法を行ってはいけません!
    【世界一流の「MDアンダーソンがんセンター」が伝える、全粒穀物食・菜食の重要性】


   専門家が警告! 大ブームの「食事は炭水化物抜き」が一番危ない!
    糖質制限ダイエットで「寝たきり」が続出中!【炭水化物の主食を抜き、安易に獣肉食に走って良いの?】



 糖質を意図的に制限するのが糖質制限食なのですが、この糖質制限食を安全に実行するためには、必ず “ブドウ糖の代替エネルギー源” の摂取を絶対に確保せねばなりません。
 この “ブドウ糖の代替エネルギー源” として有効なのが、私が推奨しています『短鎖脂肪酸食』により「腸内細菌が産生する発酵産物」として多く得られる『短鎖脂肪酸』、または「福田一典」医師が推奨されています『中鎖脂肪ケトン食療法』により多く得られる『ケトン体』です。糖質制限食を安全に遂行するためには、必ず『短鎖脂肪酸』や『ケトン体』という “ブドウ糖の代替エネルギー源” の摂取を確保しなければならないのです。

 「福田一典」医師が推奨されています『中鎖脂肪ケトン食療法』の概要は、次の記事を参照されてください。


    癌の『中鎖脂肪ケトン食療法』- 福田一典医師
     【エネルギー源をブドウ糖から『ケトン体』へとシフトして、
      癌細胞だけを兵糧攻めにして死滅に追い込む、合理的な癌治療】



 糖質制限食を安全に遂行するためには『短鎖脂肪酸』や『ケトン体』といった “ブドウ糖の代替エネルギー源” の摂取を必ず確保せねばなりませんが、「福田一典」医師が推奨されるケトン食である『中鎖脂肪ケトン食療法』では『ケトン体』を多く摂取することができるように考えられていますので、非常に参考になると思います。
 『中鎖脂肪ケトン食療法』というのは「糖質を制限したケトン食(糖質制限食ケトン食)」のことなのですが、このケトン食を実行すれば『ケトン体』が多く得られ、この『ケトン体』が “ブドウ糖の代替エネルギー源” になることで、糖質制限食がより安全に、より楽にできます。


 脂肪酸や『短鎖脂肪酸』や『ケトン体』というエネルギー源を代謝することができるのはミトコンドリアです。
 癌細胞ではミトコンドリアが死滅していたり、機能不全を起こしているため、癌細胞は脂肪酸や『短鎖脂肪酸』や『ケトン体』というエネルギー源を代謝することができません。ですから、癌細胞が唯一利用できるエネルギー源は「ブドウ糖」だけとなります。つまり、癌細胞の唯一のエネルギー源は「ブドウ糖」のみなのです。

 癌細胞は解糖系による「ブドウ糖」の代謝のみでエネルギー(ATP)を産生して生きている細胞ですが、解糖系のエネルギー産生は非常に効率が悪く、そのため、癌細胞は正常細胞の数倍から数十倍もの大量の「ブドウ糖」を取り込まないと生きていけません。癌細胞は「ブドウ糖」に枯渇して飢えた時点で死滅してしまうという、飢餓に非常に弱い細胞なのです。

 糖質を制限して「ブドウ糖」の摂取量を減らせば、癌細胞に取り込まれる「ブドウ糖」が減る、または、無くなることにより、癌細胞をエネルギー枯渇させて衰退させ、死滅に追い込む込むことができます。
 正常細胞は飢餓には非常に強く、そう簡単には死にません。正常細胞ではミトコンドリアが正常に機能していますから、脂肪酸や『短鎖脂肪酸』や『ケトン体』がミトコンドリアで代謝されることによって(解糖系よりも)多くのエネルギー(ATP)が産生され、正常細胞は正常に生きることができます。

 糖質制限食によって「ブドウ糖」の摂取に制限をかけて、「ブドウ糖」の代わりに “ブドウ糖の代替エネルギー源” である『短鎖脂肪酸』や『ケトン体』を多く摂取すれば、正常細胞は正常に育てて生かし、癌細胞だけをエネルギー枯渇させて選択的に衰退させ死滅に追い込むという、癌治療において理想的な体内環境が成立します。


 『ケトン体』というのは、身体が「ブドウ糖」に枯渇した時に、肝細胞のミトコンドリアで 産生される “ブドウ糖の代替エネルギー源” ですが、『ケトン体』は肝細胞と赤血球以外の(脳細胞を含めた)全身の細胞で利用されます(肝細胞は『ケトン体』を産生しますが、肝細胞自身は脂肪酸をエネルギー源として利用します。また、赤血球にはミトコンドリアが無いため、脂肪酸も『短鎖脂肪酸』も『ケトン体』も利用することができません。ゆえに、赤血球が利用できる唯一のエネルギー源は「ブドウ糖」だけです)。

 しかし、上述の如く、癌細胞が唯一利用できるエネルギー源は「ブドウ糖」のみであり、癌細胞は『ケトン体』をエネルギー源として利用できませんので、癌細胞は「ブドウ糖」に枯渇した途端に衰退し、死滅に追い込まれることとなります。


 しかも、『ケトン体』自体に癌の生存増殖悪性化転移を阻害する「抗がん作用」があることが癌研究報告により明らかとなっており、ケトン食は「抗がん療法」としても期待されています。そして、まだまだ危険でリスクの高い標準療法(通常療法三大療法)に変わる新しい癌治療として注目されているのです。

 「福田一典」医師が当記事で紹介されています癌研究報告は昨年2014年発表の論文ですから、まだ新しい内容のものです。『ケトン体』自体に癌の生存増殖悪性化転移を阻害する「抗がん作用」のあることが解明されたのは、つい最近の出来事なのですね。

 ここにおいて、癌治療において食事療法が如何に重要な役割を担っているか、それが一層明らかとなってきた感があります。やはり、癌治療において食事療法は重要な母体なのです。


 このように、糖質を制限したケトン食は、癌治療の食事療法として理想的なものです。
 どうぞ、当記事を通して、『ケトン体』の価値、及び、ケトン食の価値を、ぜひ学ばれてみてください。
 そして、その重要性に気づかれた癌患者さんは、ご自分のできるところからケトン食を実行されてみてください。


 糖質を制限した時に『ケトン体』の産生量を増やすには、『中鎖脂肪酸』には『ケトン体』を大量に産生する特徴がありますので、この『中鎖脂肪酸』を多く含有する『ココナッツオイル』『マクトンオイル』『MCTオイル』などのオイルを、糖質制限食に組み合わせて「生のまま」摂取すると良いのです。

 このことを福田一典」医師が説明されている資料を、当記事のご紹介のあとにご紹介していますので、当記事の内容と併せてご覧になられてみてください。よろしくお願いします m(__)m



       健康になりたければ糖質をやめなさい! 糖質を減らせば、病気も肥満も遠ざかる

      
       ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する!- 今あるがんが消えていく『中鎖脂肪ケトン食』

       がんに効く食事 がんを悪くする食事

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 385)ケトン体の健康作用と抗がん作用
 【「『漢方がん治療』を考える(福田一典 医師)」
より 】

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【図1】
◆◆ 脳はグルコース(ブドウ糖)とケトン体をエネルギー源として利用できるが、糖質を十分に摂取している間はケトン体は産生されないため、主にグルコースがエネルギー源となる。
 【左図】グリコーゲンは肝臓(~100g)と筋肉組織(~400g)に貯蔵されており、半日から1日程度の絶食では、まず体内に貯蔵されたグリコーゲンが分解されてできるグルコースと、グリセロール(脂肪組織に貯蔵された中性脂肪がリパーゼによって脂肪酸とグリセロールに分解されて産生される)や筋肉組織から遊離される糖原性アミノ酸(TCA回路に入って糖産生に利用されるアミノ酸)から肝臓で糖新生によってグルコースが産生されて脳のエネルギー源となる。
 【右図】絶食が数日以上に及ぶと、脂肪組織から遊離した脂肪酸の分解(β酸化)が亢進し、肝臓でケトン体の産生が増え、血中のケトン体の濃度が上昇し、脳を含め多くの組織のエネルギー源としてケトン体が利用されるようになる。
 ケトン体は食事摂取ができない場合に貯蔵脂肪の燃焼によって産生される生理的なエネルギー源であり、ケトン体が上昇しても体に対する毒性はない。◆◆



脂肪が燃焼するとケトン体ができる

 グルコース(ブドウ糖)が枯渇した状態で脂肪酸が燃焼する時、肝臓では『ケトン体アセト酢酸と β-ヒドロキシ酪酸)』という物質ができます。このケトン体は、脳にエネルギー源を供給するために肝臓で作られる物質です。

 通常、脳はグルコースしかエネルギー源として利用できません。脂肪酸は「血液脳関門」を通過できないので、脳は脂肪酸をエネルギー源として利用できません。

 体はグルコースが枯渇した時に、脳のためにエネルギー源を作らなければなりません。そこで、肝臓では、脂肪酸を分解する過程でケトン体を生成するように進化したのです。

 ケトン体は水溶性で細胞膜や「血液脳関門」を容易に通過し、骨格筋や心臓や腎臓や脳など多くの臓器に運ばれ、これらの細胞のミトコンドリアで代謝されて “ブドウ糖に代わるエネルギー源” として利用されます。特に、脳にとっては(ケトン体は)グルコースが枯渇した時の唯一のエネルギー源となります。


 通常は、細胞が必要なエネルギー(ATP)は、グルコースが解糖系からピルビン酸アセチルCoA を経て TCA回路クエン酸回路へと代謝され、さらに酸化的リン酸化によって産生されます。

 一方、脂肪酸からエネルギーを産生する場合は、脂肪酸が分解(β酸化)されてアセチルCoA になり、このアセチルCoA がミトコンドリアの TCA回路で代謝されて ATP を作り出します。



 脂肪酸の酸化で作られるアセチルCoA の多くは TCA回路(クエン酸回路)に入りますが、絶食時など、グルコースの供給が少ない状況では、アセチルCoA を TCA回路で処理する時に必要な「オキサロ酢酸」が不足するため、TCA回路が十分に回りません。そのため、TCA回路で処理できなかった過剰のアセチルCoA は、肝臓でケトン体の合成に回されます(下図)。

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【図2】
◆◆ TCA回路の最初のステップはアセチルCoA とオキサロ酢酸が結合してクエン酸になる反応で、オキサロ酢酸はピルビン酸からできるので、グルコース(ブドウ糖)が制限された条件では、アセチルCoA はケトン体合成へ振り分けられる。
 この図で、長鎖脂肪酸がミトコンドリアに入る場合は L-カルニチンが必要であるが、中鎖脂肪酸の場合は L-カルニチンは必要ない。
◆◆



 すなわち、肝細胞では、脂肪酸が分解されてできたアセチルCoA の一部はアセトアセチルCoAになり、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAHMG-CoAを経てアセト酢酸が生成され、これは脱炭酸によってアセトンへ、還元されて β-ヒドロキシ酪酸へと変換されます。この アセト酢酸β-ヒドロキシ酪酸アセトン の3つをケトン体と言います(下図)。

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【図3】
◆◆ グルコース(ブドウ糖)が枯渇した状態で脂肪の摂取を増やすと、肝臓では脂肪酸の β酸化が亢進されて生成されたアセチルCoA はケトン体の産生に振り分けられる。アセト酢酸と β-ヒドロキシ酪酸は血液を介して他の組織や細胞に運ばれて、アセチルCoA に変換されて TCA回路で ATP産生に使用される。◆◆


 ケトンketoneは「R−C(=O)−R'」の構造式で表される有機化合物です。酸素と二重結合している炭素の両脇が炭素であるものをケトンと言います。
 β-ヒドロキシ酪酸はケトン基を持っていないケトン基が還元されて水酸基になっている)ので、正確には β-ヒドロキシ酪酸はケトンとは言えませんが、ケトンのアセト酢酸に変換されて代謝されるのでケトン体に含められています。

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【図4】
◆◆ β-ヒドロキシ酪酸は正確にはケトン基を持っていないが、脂肪酸の代謝で産生される アセト酢酸β-ヒドロキシ酪酸アセトン をケトン体と呼んでいる。◆◆


 脂肪酸と違ってケトン体は水溶性であるため、特別な運搬蛋白質の助けがなくても肝臓からその他の臓器(心臓や筋肉や腎臓や脳など)に効率よく運ばれ、細胞内でケトン体は再びアセチル-CoA に戻され、TCA回路で代謝されてエネルギー源となります。この際、エネルギー産生に使われるのはアセト酢酸のみで、β-ヒドロキシ酪酸はアセト酢酸に変換されて初めてエネルギー代謝に使用され、アセトンはエネルギー源にはならず呼気から排出されます(下図)。

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【図5】
◆◆ 肝臓で生成されたケトン体(アセト酢酸と β-ヒドロキシ酪酸)は肝臓以外の組織の細胞に運ばれ、ミトコンドリアの TCA回路と電子伝達系で ATP産生に使われる。
 すなわち、β-ヒドロキシ酪酸からアセト酢酸への変換時と TCA回路での反応で NADH や FADH2 に捕捉された電子は電子伝達鎖で受け渡され、最終的に ATP合成酵素によって ATPが合成される。
◆◆




インスリンの作用が正常なら、ケトン体はまったく無害

 ケトン体は19世紀中頃に糖尿病性ケトアシドーシスの患者の尿に大量に含まれることから最初に見つかったので、「ケトン体は糖代謝の異常によって生成される毒性のある代謝産物である」と、この時代の医師の多くが認識していました。
 「ケトン体は食事からの糖質や糖原性アミノ酸(glucogenic amino acid)の供給が不足した時に、肝臓で産生が増える正常な代謝産物である」ことに医者が理解するのに半世紀を要しています。
 しかし、残念なことに、「絶食やケトン食によって正常な人間に起こる安全で生理的なケトン症(ケトーシス)」と「インスリン欠乏性の糖尿病患者にみられる病的で制御不能なケトアシドーシス」の違いを理解できていない臨床医がまだ存在することです。

 ケトーシスケトン症ketosisは血中のケトン体が増加した状態です。ケトン体のアセト酢酸と β-ヒドロキシ酪酸は酸性が強いので、ケトン体が血中に多くなると血液や体液の pH が酸性になります。このようにケトン体が増えて血液や体液が酸性になった状態をケトアシドーシスketoacidosisと言います。



 糖尿病性ケトアシドーシスは主に1型糖尿病患者に起こり、インスリンが不足した状態で脂肪の代謝が亢進し、血中にケトン体が蓄積してアシドーシス(酸性血症)を来たし、ひどくなると意識障害を来たし、治療しなければ死に至ります。このように糖尿病の人では血液中のケトン体濃度の上昇は糖尿病の悪化を示すサインとして知られていますので、ケトン体は体に悪い物質と思われる方が多いと思います。しかし、実際は、インスリンの働きが正常である限り、ケトン体は極めて安全なエネルギー源です。
 血液には緩衝作用があるので、長期の絶食によって達し得る6~8mM 程度の高ケトン血症ではアシドーシス(酸性血症)にはなりません。

 ケトン体は肝細胞と赤血球(ミトコンドリアが無い)を除く全ての細胞で利用でき、日常的に産生されています。糖質を普通に摂っている人での血中ケトン体(アセト酢酸と βヒドロキシ酪酸の合計)の基準値は26~122μmol/l です。
 絶食すると、数日で血中ケトン体は基準値の30~40倍もの高値になりますが、インスリンの作用が保たれている限り安全です。一時的に酸性血症(アシドーシス)になることもありますが、血液の緩衝作用によって正常な状態に戻ります。



 つまり、ケトン体の上昇が怖いのは、インスリンの作用不足がある糖尿病の場合で、糖尿病性ケトアシドーシスはインスリン作用の欠乏を前提とした病態です。断食や糖質制限に伴うケトン体産生の亢進の場合は生理的であり、インスリン作用が正常であれば何の問題もないと言えます。



絶食で、なぜケトン体が産生されるのか

 長期に及ぶ絶食の時には、ケトン体が脳のエネルギーの60%以上を供給しています。したがって、グルコース(ブドウ糖)を1日80gも節約でき、もし、ケトン体が供給されなければ、体のタンパク質を分解してエネルギー源を産生することになります。

 飢餓状態の時にケトン体を産生するのは、食事が摂れない時に体を動かすエネルギーを作り生命を維持するためです。
 血液には緩衝作用があるので、非糖尿病の人間であれば、長期間の絶食によって血中のケトン体のレベルが6~8mM 程度まで上昇しても、臨床的に危険なアシドーシス(酸性血症)にはなりません。
 肥満者が絶食した場合の血中のグルコース、β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、遊離脂肪酸の推移が報告されています。
 (New Eng J Med 282: 668-675, 1970年

 グルコースの分子量は180で β-ヒドロキシ酪酸の分子量は104です。下図でグルコースの4mM は72mg/dl、5mM は90mg/dl になります。絶食を長期間行なってても、肝臓で糖新生が起こるので、血糖は4mM 前後に維持されます。
 一方、絶食を行なうとアセト酢酸と β-ヒドロキシ酪酸は上昇し、特に β-ヒドロキシ酪酸は6mM 程度まで増えます。β-ヒドロキシ酪酸の分子量は104なので、6mM は62.4mg/dl になります。

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【図6】
◆◆ 肥満者に40日間の絶食を行なった場合の β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、グルコース、遊離脂肪酸の血中濃度の推移(出典N Eng J Med. 282: 668-675, 1970年◆◆


 絶食でケトン体産生が起こる理由を理解するためには、次の「4つの生理学的な事実」を知る必要があります。


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4つの生理学的な事実

(1)体内にはグルコース(ブドウ糖)の直接的な供給源であるグリコーゲンの貯蔵量は少量しかない。
   肝臓には「~100g」程度、筋肉には「~400g」程度のグリコーゲンが貯蔵されているが、
   これは「半日~1日のエネルギー量」に過ぎない。

(2)体内のタンパク質の貯蔵は少量しかない。

(3)人間の体内の脂肪組織には、大量の中性脂肪が貯蔵されている。
   この中性脂肪は、標準的な体格の人で「約2ヵ月分のエネルギーの貯蔵」に相当する。

(4)炭素数が12個以上の長鎖脂肪酸は「血液脳関門」を通過できない。


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 これらの条件から、食事が摂れない時には、中性脂肪を燃焼させてケトン体を産生し、そのケトン体が脳のエネルギー源として利用されるように体が適応するように進化したと考えられます。
 正常な体型の70kg の男性では、体内には12kg の中性脂肪がエネルギー源として貯蔵されています。筋肉量は約6kg であり、糖質(グリコーゲンとして)の貯蔵量は肝臓にせいぜい100g程度、筋肉には400g以下しかありません。

 通常は、グルコースが脳のエネルギー源となっています。
 一晩の絶食によって、血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌が増え、インスリンの分泌は減少します。その結果、脂肪組織から脂肪酸が遊離し、筋肉組織での脂肪酸の利用が増え、肝臓ではケトン体の産生が増えます。
 しかしながら、糖質欠乏の初期の段階では血中のケトン体の濃度はまだ低く、脳のエネルギー源はまだグルコースに大きく依存しています。

 摂取カロリーが減ると、脂肪組織から脂肪酸と一緒に遊離したグリセロールを使って肝臓で糖新生が起こります。あるいは、貯蔵されたタンパク質が分解して生成するアミノ酸のうちの糖原性アミノ酸を使って肝臓で糖新生が行なわれます。
 さらに絶食状態が続くと、糖新生が十分に行なわれなくなり、肝臓は脂肪酸の分解で生成されたアセチルCoA からケトン体を産生するようになるのですトップの図を参照)。
 ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(陽電子放射線断層撮影PET参照)を使ったラットの研究では、ケトン食や絶食の時には、脳のケトン体の取込みは通常の7~8倍に増加することが示されている。



ケトン体を増やせば、がん細胞は死滅する

 がん細胞ではケトン体をエネルギーに変換する酵素系の活性が低下しているので、ケトン体をエネルギー源として利用できません。
 また、がん細胞では細胞を増やすために脂肪酸を合成する酵素系の活性が非常に高くなっていますが、逆に脂肪酸を分解してエネルギーを産生する酵素の活性は低下しています。
 つまり、体内のグルコース(ブドウ糖)の量を減らし、脂肪酸の分解で ATP を得ている体内状況を作り出せば、ミトコンドリアの機能が正常な正常細胞は脂肪酸の代謝によって ATP を効率的に産生できるので生存できるのに対し、がん細胞は脂肪酸から ATP を産生できないため、エネルギーが枯渇して死滅するのです。

 さらに、ケトン体のアセト酢酸と β-ヒドロキシ酪酸には、それ自体に「抗がん作用」があります
 がん細胞と正常線維芽細胞の培養細胞を使った実験で、培養液にアセト酢酸や β-ヒドロキシ酪酸を添加すると、正常な線維芽細胞の増殖は阻害されず、がん細胞の増殖は用量依存的に抑制されることが報告されています。ケトン体が、がん細胞のブドウ糖の取り込みと代謝を阻害するためだと考えられています。
 また、がん細胞を移植した動物実験でも、ケトン体を多く出させる中鎖脂肪酸の豊富な高脂肪食を与えると、腫瘍の成長が抑えられ、がんによる体重の減少を防ぐことが報告されています。

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【図7】
◆◆ がん細胞では、ブドウ糖の取込みが亢進している。ブドウ糖の摂取で分泌が増えるインスリンは、がん細胞の増殖を刺激する。脂肪の分解でできるケトン体を、がん細胞はエネルギー源として利用できない。さらに、ケトン体自身にがん細胞の増殖を阻害する作用がある。正常細胞は、ブドウ糖も、ケトン体も効率的に利用できる。糖質の摂取を減らし、脂肪の分解でできるケトン体を多く産生する食事は、がん細胞の増殖を阻害し、死滅させる効果がある。◆◆


 ケトン食でケトン体を増やす治療法の他に、最近は体内でケトン体に変換される『ケトン体前駆物質を食事から摂取させる研究が報告されています。ケトン食を実施しなくても、糖質を普通に摂取しても、『ケトン体前駆物質を食事から摂取することで、がん細胞の増殖を抑えることを目的としています。

ケトン体前駆物質』とは、体内で直ぐにケトン体〔アセト酢酸か β-ヒドロキシ酪酸〕になる物質ですブログ管理人


 以下のような論文があります。


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 Ketone supplementation decreases tumor cell viability and prolongs survival of mice with metastatic cancer.
 (ケトン体の補給はがん細胞の生存率を低下させ、転移がんのマウスの生存期間を延長する
 〔
Int J Cancer. 2014 Feb 26. doi: 10.1002/ijc.28809. [Epub ahead of print]

【要旨】
 がん細胞は「遺伝子変異」と「ミトコンドリアの機能異常」によって、グルコース(ブドウ糖)の消費量が顕著に増加している。がん細胞は正常細胞と異なり、ケトン体をエネルギー源として利用できないことが知られている。

 さらに、培養がん細胞を使った実験で、ケトン体はがん細胞の増殖や生存を阻害することが示されている。
 がん細胞における解糖系亢進という「ワールブルグ効果」は、増殖の早い転移がんに顕著に認められる。
 そこで、食餌にケトン体を加えて与えると、生体内において、がんの転移を阻害する作用が期待できる。

 高度に転移性の性状を持つ VM-M3細胞を「ケトン体の β-ヒドロキシ酪酸」を添加した培養液で培養して細胞増殖や生存率を測定した。
 オスの VMマウスに、ホタル・ルシフェラーゼで標識して発光するように改変した転移性のがん細胞(VM-M3)を移植し、体内でケトン体(β-ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸)に変わる「1,3-ブタンジオール(1,3-butanediol)」または「ケトンエステル(ketone ester)」を食餌に添加して、腫瘍組織の増殖に対する影響を検討した。腫瘍の増殖は生体内蛍光イメージ法(in vivo bioluminescent imaging)で評価し、生存期間、腫瘍増殖速度、血糖値、血中 β-ヒドロキシ酪酸値、体重を測定した。

 培養細胞を使った in vitro の実験では、グルコース濃度(ブドウ糖濃度)が高い条件でも、ケトン体の投与によって VM-M3細胞の増殖と生存は減少した
 移植腫瘍の実験モデルでの検討では、食餌からのケトン体の補給は VM-M3 を移植して全身に転移した状態のマウスの生存期間を延ばし、「1,3-ブタンジオール」の投与で51%、「ケトンエステル」の投与で69%の生存期間の延長を認め、これは統計的に有意な差であった(p<0.05)。

 ケトン体の投与は、血糖値のレベルやカロリー制限とは独立して、培養細胞(in vitro)、及び、移植腫瘍(in vivo)の実験モデルで抗腫瘍効果を示した。
 将来の臨床試験へ向けて、ケトン体の前駆物質の補給によるがん治療の有効性と安全性を、動物実験でさらに検討する必要がある。


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 この論文は「南フロリダ大学の高圧生体医学研究所(Hyperbaric Biomedical Research Laboratory at the University of South Florida)」の「ドミニク・ダゴスチノ」博士(Dr. Dominic D’Agostinoの研究室からの報告です。
 この研究グループは、今回と同じ悪性度の高い転移性のがんを移植するマウスの実験モデルで、ケトン食と高圧酸素療法を組み合わせた治療で生存期間を延ばすことを報告しています。
詳しくは「副作用の無いがん治療法が転移したがんに有効であることが示される」へ

 ケトン食は、エネルギー産生の栄養素を糖質から脂質にシフトさせ、脂質の代謝によってできるケトン体の産生を増やす食事です。

 正常な細胞は、エネルギー源が糖質(グルコースブドウ糖)からケトン体に代わっても容易に適応できます(ケトン体をエネルギー源として利用できる)。しかし、がん細胞は「ケトン体を利用する」というエネルギー産生における適応能力が欠けています。したがって、糖質摂取が減ってグルコース(ブドウ糖)の利用ができなくなると、がん細胞が選択的にダメージを受けることになります。

 この論文では、直接的にケトン体を食餌から摂取させる方法で実験して、グルコース濃度(ブドウ糖濃度)が高い状態でも、ケトン体自身に抗腫瘍効果があることを示しています。
 穀物のデンプンが消化管で分解されて(消化されて)グルコースとして吸収されてエネルギー源となるように、体内でケトン体になってエネルギー源となるような食品が開発されれば、ケトン食も楽になります。

 この研究で使用されている「1,3-ブタンジオールや「ケトンエステルは人間が食べられるようなものではなく(味と価格から)、まだ、ケトン体そのものを食事から摂取することは現実的ではありません。β-ヒドロキシ酪酸も原料として入手は可能ですが、1日100gを食べると1ヵ月で数十万円になるような状況ですので、まだ現実的ではありません。

 『中鎖脂肪酸 中性脂肪中鎖脂肪酸トリグリセリド)』を多く摂取するケトン食のほうが、現時点では現実的です。
 つまり、現時点では、低糖質食(糖質制限食)にケトン体の産生を増やす『中鎖脂肪酸』を多く摂取するのが最も実施できる方法と言えます。

中鎖脂肪酸』は、分子が小さいため消化管から効率的に吸収され、カイロミクロンを作らずに門脈に入って肝臓に運ばれ、肝細胞のミトコンドリアで素早く酸化されて、大量の ATP と「ケトン体」を生じる特徴があります。ですから、糖質制限食に『ココナッツオイル』『マクトンオイル』『MCTオイル』などの『中鎖脂肪酸』を多く含有するオイルを組み合わせて共に摂取すれば、「ケトン体」が多く産生され、糖質制限食を安全に行なうことができます〔下記にてお話ししています〕。
 「ケトン体」は身体が「ブドウ糖」に枯渇して飢えた時でなければ産生されませんから、「ケトン体」を得るには、基本的に「糖質制限食」を実行していることが絶対条件になります
ブログ管理人

 多くの研究で、血中のケトン体濃度を高めるほど抗腫瘍効果が高まることが報告されています。
 その当たりの考察は、この論文のイントロダクション(Introduction)と考察(Discussion)を読めば納得できると思いますので、この論文の「イントロダクション」と「考察の部分の抜粋」を以下に記載しておきます。



インドロダクションの日本語訳

 約1世紀前、「がん細胞は酸素が十分に存在する状況でも酸素を使わずに乳酸を生成する解糖系が亢進している」という特徴的な代謝異常を「オットー・ワールブルグ」博士が発見し、この現象は「ワールブルグ効果」として知られている。 
 
 この「ワールブルグ効果」によって、がん細胞はグルコース(ブドウ糖)の取込みが非常に亢進しており、これを利用したのが、グルコースを標識した「18F-フルオロデオキシグルコース」の取込みで “がん組織を画像化” する「FDG-PET検査PET参照)」の原理になっている。

 従来の毒性のある抗がん剤治療に代わって、代謝異常をターゲットにした新しいがん治療法が検討されている。
 がん細胞の生存と増殖におけるグルコースへの依存度が高いことが、がん細胞の弱点になっている。
 絶食やカロリー制限や低糖質ケトン食(糖質を制限したケトン食)は、がん細胞のグルコース利用を制限することによって、がん細胞の増殖速度を低下させることが、多くの動物実験や臨床試験で確認されている。

 このような食事療法は、グルコースへの依存度が高いがん細胞の代謝環境を、がん細胞の増殖に都合の悪い代謝環境に変更させることになる。
 これらの食事療法の抗腫瘍効果は血中を循環するグルコースの量を減らすことによって、がん細胞へのエネルギー供給を減らすことが主な作用機序と考えられてきた。しかし、最近の研究結果より、血中ケトン体の上昇自体に抗腫瘍効果が認められることが示されている。

 最近、「Fine」博士の研究グループが、進行した転移がんの患者において、糖質を制限したケトン食が、がんの増殖や進展を抑制し、腫瘍を縮小させる効果があることを報告している。
 この研究では、血糖値の低下は認めず、グルコースの利用の阻害が抗腫瘍効果の直接の原因ではないことを示している。興味深いことに、この食事療法による抗腫瘍効果は血中のケトン体の量が最も関係しており、ケトン体が多く産生された場合ほど、腫瘍の縮小や安定の効果が得られている

 主なケトン体はアセト酢酸と β-ヒドロキシ酪酸で、アセト酢酸から非酵素的に分解してアセトンが生成されるが、アセトンは呼気から排出される。
 培養がん細胞を使った実験では、ケトン体のアセト酢酸は増殖の早いヒト大腸がんと乳がん細胞の増殖と ATP産生を阻害したが、正常な線維芽細胞の増殖は阻害しなかった。
 同様に、β-ヒドロキシ酪酸は、形質転換したリンパ芽球細胞、Hela細胞、悪性黒色腫細胞の増殖を用量依存的に阻害した。
 神経芽細胞腫に対しては、βヒドロキシ酪酸とアセト酢酸は生存率を低下させ、アポトーシスを誘導したが、正常線維芽細胞には増殖抑制作用は示さなかった。

 ケトン体は、肝臓と赤血球以外の細胞でエネルギー源として利用される。
肝臓はケトン体を合成するが、エネルギー産生に利用するための酵素が無い。赤血球は「ミトコンドリア」が無いので、ケトン体は代謝できない
ケトン体」は「ミトコンドリア」で代謝されて ATP が産生されるため、「ミトコンドリア」の無い赤血球はケトン体」をエネルギー源として利用できません。ここは「『赤血球』はミトコンドリアを持たないため、「ブドウ糖」が唯一のエネルギー源です! 生体にとって「ブドウ糖」は必須栄養です!」記事を参照してくださいブログ管理人

 しかし、がん細胞はケトン体をエネルギー源として利用することができない。その理由は、多くのがん細胞ではミトコンドリアの数が少なく、ミトコンドリアの構造的異常も多く、その他、様々な原因でミトコンドリアの機能が低下しており、ケトン体をエネルギー源として利用できないためである。
 ケトン体はミトコンドリアで代謝されてエネルギー(ATP)を産生するので、ミトコンドリアの機能が低下しているがん細胞ではケトン体を十分に利用できない。
 実際、グルコースの枯渇によって誘導される「グリオーマの細胞死」をケトン体は阻止できない。
 ( つまり、「グリオーマ細胞」はケトン体を利用できないグリオーマ=神経膠腫〔参照

 このように、がん細胞におけるミトコンドリアの異常が、がん細胞がケトン体をエネルギー源として利用できない理由と考えられるが、培養細胞を使った実験で、グルコースが正常の濃度存在するのに、ケトン体を添加すると、がん細胞の増殖が抑制される理由を説明できない。
 これは、ケトン体自身に「がん細胞の増殖や生存を阻害する直接的な作用」を有する可能性を示唆している

 例えば、次のような可能性がある。


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(1)ケトン体は解糖系を阻害するので、がん細胞の主要なエネルギー産生系が低下する。

(2)がん細胞は「活性酸素」の産生が多い環境で生存できるが、
   レドックス(酸化還元)状態のわずかな変化にも、非常に感受性が高く反応する。
   ケトン体は、正常細胞に対してはミトコンドリアでの「活性酸素」の産生を減らし、内因性の抗酸化活性を高めるが、
   がん細胞に対しては、そのような作用は認めない。
   そのため、がん細胞の近くの正常細胞におけるケトン体の代謝は、
   がん細胞の生存にとって不利なレドックス環境(酸化還元する環境)を作り出すことによって、
   がん細胞の増殖を阻害している可能性がある。

(3)ケトン体は「モノカルボン酸トランスポーター(monocarboxylate transportersMCT」を使って
   細胞内に取り込まれる。
   この MCT は、がん細胞内に多く産生される乳酸を細胞外に排出するトランスポーターでもある。
   MCT活性の阻害や乳酸の排出阻害は、がん細胞の増殖と生存を著明に阻害する。
   ケトン体は「モノカルボン酸トランスポーター」を競合的に阻害することによって、
   がん細胞からの乳酸の排出を阻害することによって、がん細胞の増殖と生存を阻害する可能性がある。

(4)最近「Verdin」らのグループは、
   β-ヒドロキシ酪酸には内因性の「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤」としての作用があることを報告している。
   絶食やカロリー制限や「ケトンエステル」によるケトン体の補給で容易に達し得る数ミリモルの濃度で
   「ヒストン脱アセチル化酵素阻害作用」を示すので、
   がん遺伝子や、がん抑制遺伝子の発現に影響して、がん細胞の増殖や生存を抑制する可能性がある。


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 このように、ケトン体はがんの代謝をターゲットにした様々な特徴的な作用を示すことが報告されている。
 「ワールブルグ効果」は、増殖速度の早いがん細胞や、転移性のがん細胞において、特に強く発現している。

 転移というのは、がん細胞が元の場所(原発巣)から離れた別の部位に腫瘍を形成することで、がんによる死亡の90%以上は、がんが転移することによって起こっている。がんの治療成績がなかなか良くならない最も大きな理由は、全身に転移したがんに対する有効な治療法が無いためであり、また、そのような治療法や治療薬の開発に有用な実験モデルが無いためである。

 本研究で用いた VM-M3モデルは、がんの自然の進展や、がん細胞の浸潤や、転移の研究に有用な実験モデルである。
 元の VM-M3主要は VM/Dkマウスに自然発生した脳腫瘍で、培養細胞として樹立され、ホタル・ルシフェラーゼ遺伝子を導入して、その蛍光によって生体内で腫瘍の増大を観察できるように改変されたがん細胞である。
 VM-M3細胞は、マクロファージやミクログリアの性質を兼ね備えた「ヒトの膠芽腫」に特徴的な性質を持っている。皮下に移植すると、形態学的に組織球のような形態に変化し、肝臓や肺や腎臓や脾臓や脳や骨など全身に転移する。
 VM-M3細胞は免疫システムが正常なマウスにおいて自然に転移し、抗がん剤治療によって転移や増殖が抑制される。
 このように、VM-M3実験モデルは「がんの転移のモデル」として有用であるので本実験で用いた。

 ケトン体が培養がん細胞の増殖を抑制することは、多くの研究で示されている。
 しかし、生体内におけるがん細胞の増殖に食餌性のケトン体の補給ががん細胞の増殖にどのような作用を示すのか、まだ検討されていない。

 糖質制限によるケトン食を行なわなくても、ケトン体の前駆物質である「1,3-ブタンジオール食品添加物、及び、血糖降下物質として市販されている)」を食餌に添加することによって、肝臓で β-ヒドロキシ酪酸に変換されて体内のケトン体レベルを高めることができる。
 「ケトンエステルはアセト酢酸と β-ヒドロキシ酪酸の量を用量依存的に高めることができ、通常のケトン食や治療用の絶食よりもケトン体を高めることができる。
 「1,3-ブタンジオール」及び「ケトンエステル」を経口投与すると、ラットにおいて240分間以上、血中ケトン体レベルを高めることができる。

上述されていますように、「1,3-ブタンジオール」や「ケトンエステル」は人間が食べられるようなものではなく、味と価格の面で現実的ではありません。「ケトン体を多く得るためには、素直に糖質制限によるケトン食を実行して『中鎖脂肪酸』を多く摂取すれば良いだけです。そのほうが遥かに経済的であり、不要で不健全な糖質(ブドウ糖)の摂取を制限したほうが身体には非常に良く、ましてや、癌の生存増殖悪性化転移を阻害する天然の「抗がん療法」になり得るのですから、迷わずに糖質制限によるケトン食を実行すべきです。癌以外の他の持病まで改善することでしょう!ブログ管理人

 ケトン体は抗腫瘍効果を示し、また、がん細胞の転移はがんの治療における最も困難な障害であるので、VM-M3細胞株を用いた「がん転移の実験モデル」で、ケトン体の補充療法の有効性を検討した。

 ( 以上、論文の「イントロダクション」



考察の日本語訳(抜粋

 
全てのがん細胞ではないにしても、ほとんどのがん細胞では、解糖系が亢進しているという「ワールブルグ効果」を示している。がん細胞の代謝異常をターゲットにしたがん治療は有効な治療法となり得るので、がん細胞における代謝の特徴を明らかにすることは重要である。

 がん細胞ではミトコンドリアの異常によってエネルギー産生や代謝の過程において様々な欠損が存在し、そのため、ケトン体をエネルギー源として有効に利用できない
 この研究において、ケトン体の補給は VM-M3細胞の増殖能と生存率を低下させることが示された。他の培養がん細胞の実験系でも同様の結果が得られており、今回の結果は、今までの報告をさらに支持するものである。

 したがって、我々は、ケトン体の前駆体を食餌から投与することは、生体内のがん細胞に対しても同様に増殖を抑制することができると推測した。
 実際に、ケトン体の前駆物質である「1,3-ブタンジオール」及び「ケトンエステル」を食餌に混ぜて投与すると、転移した VM-M3移植腫瘍を持つマウスの生存期間を、それぞれ51%と69%延長させた。
 これらのデータは、ケトン体の補給という治療法が実施可能で有効ながん治療であることを示しており、臨床での利用の可能性を確かめるために、さらに他の動物実験モデルなどで検討する必要がある。

 急速にケトン体を補給すると血糖値が低下する。長期にわたって補給すると体重が減少する。正常なマウス、及び、がん細胞を移植されたマウスの両方において、高糖質の食餌を与えていても、ケトン体を供給するとケトン症を維持することができる。
 今回の実験では、正常な Vm/Dkマウスと、VM-M3がん細胞を移植されて7日後のマウスにおいて「1.3-ブタンジオール」と「ケトンエステル」を食餌に混ぜて投与すると、血中のケトン体の濃度を12時間以上にわたって著明に高めることができることが示された。

 以前は、がん治療における食事療法の研究は「ワールブルグ効果」をターゲットにした糖質制限カロリー制限が主な対象になっていた。カロリー制限は、様々ながんの実験モデルにおいて、がんの進行を遅くする効果が示されている
 食事で誘導されたケトン症はしばしば食欲を低下させ、そのためにカロリー摂取が減り、体重が減少する。そのため、ケトン体の補給による抗腫瘍効果は、間接的にカロリー制限が関与している可能性がある。
 興味深いことに、カロリー制限は血糖値を低下させ、血中ケトン値を上昇させるが、カロリー制限マウスは、対照群と比べて腫瘍の進展を遅くし、生存期間を延ばす傾向は認められたが、統計的な有意差は認められなかった。

 ケトン食の抗腫瘍効果の多くは、上昇したケトン体によるものである」ことがいくつかの実験結果から示されている
 おそらく、外来性の食事からのケトン体の補充や、ケトン食によるケトン体の上昇は、カロリー制限などで起こる脂肪酸の燃焼によって誘導される「内因性のケトン体産生」よりも、がん治療法としてより効果が高いと予想される。
 さらに、ケトン体の補給はカロリー制限よりも筋肉量の維持においてより効果が高いので、健康状態を高める目的では、カロリー制限よりもケトン体の補給のほうがメリットがあると思われる。

 カロリー制限のマウスは、腫瘍進行までの期間や生存期間を延ばす傾向を示し、体重減少は生存期間と相関していた。
 したがって、ケトン体の補給による抗腫瘍効果が間接的にカロリー制限の効果が関与している可能性は示唆されるが、ケトン体の補給による抗腫瘍効果の全てを説明することは困難である。
 それは、ケトン体を補給されたマウスの生存期間の延長は、カロリー制限のマウスよりも顕著に長いからである。

 しかも、「1,3-ブタンジオール」は生存期間を51%延長させたが、血糖値はコントロールと比べて差がなかった。これは、ケトン体補給による抗腫瘍効果はグルコース(ブドウ糖)の利用の低下によるものでないことを示している。
 「ケトンエステル」の投与は「1,3ブタンジオール」投与群に比べて69%の生存期間の延長を認めた。
 注目すべき点は、「ケトンエステル」を投与された群では「1,3ブタンジオール」投与群より血糖値と体重はより減少し、血中ケトン体はより高値を示した。これは、間接的なカロリー制限と、「1,3ブタンジオール」投与よりも「ケトンエステル」投与のほうがより効果が高いことを示している。

 培養VM-M3細胞を使った in vitro の実験では、5mM の β-ヒドロキシ酪酸を培養液に添加すると、25mM のグルコースの入った培養液でも VM-M3細胞の増殖を抑制し、生存率を低下させた
 実際に、ケトン体の添加は、VM-M3細胞の増殖と生存率の抑制において、グルコースの濃度(ブドウ糖の濃度)を3mM に制限するのと同じレベルの効果を認めた。
 これらの結果は、ケトン体が糖質制限やカロリー制限とは独立にがん細胞の増殖を抑制するという「Fine」博士や、その他のグループの in vitro、及び、in vivo での研究結果を支持している。


 「Listanti」博士のグループは『腫瘍組織に存在する線維芽細胞(tumor-associated fibroblasts)がケトン体を産生して、がん細胞にエネルギー源として供給している』という実験結果を報告している。これらの報告において、著者らはケトン体合成の律速酵素を遺伝子改変で過剰発現させた「不死化した線維芽細胞」と、ケトン体を利用できる酵素を過剰発現するように遺伝子改変した「乳がん細胞」を一緒に培養する実験系で検討している。
 しかし、この現象は著者らによって作られた実験系で起こっていることであり、このような現象が自然の生体内で起こっているという証拠はない。

 前述のように、多くのがん細胞はケトン体をエネルギー源として有効に利用できないことを、多くの研究結果が強く示している。
 多くのがん細胞は、ケトン体を利用する際に必要な酵素である「サクシニルCoA 3-ケト酸CoAトランスフェラーゼsuccinyl CoA 3-ketoacid CoA transferase)」を発現していない。培養がん細胞の研究で、がん細胞はケトン体を利用できないことが報告されている。
 また、ケトン体の産生はほとんどが肝臓で行なわれることは広く知られている。線維芽細胞がグルコースからケトン体を産生する代謝系は知られていない。
 自然の細胞環境においてこの現象を支持する証拠が無い以上、がん細胞がエネルギー源としてケトン体を有効に利用できないという事実は正しいということになる。

 ケトン食は「放射線治療」と「抗がん剤治療」の両方の抗腫瘍効果を増強することが報告されている。
 ケトン体を食事として補給することは、ケトン食によって誘導される生理的なケトン症と同じような効果を示す。
 がんの標準治療(通常療法三大療法)とケトン体補給とを組み合わせることは、標準治療(通常療法三大療法)とケトン食との併用と同様の効果が期待でき、ケトン体の補充療法は、例え普通の食事を行なっていても効果が期待できる。

 さらに、ケトン体は神経細胞を保護する効果があることが知られている。
 ケトン体はミトコンドリアにおける「活性酸素」の産生を減らし、内因性の抗酸化力(抗酸化酵素 と 活性酸素消去物質)を増強することによって、正常細胞を「酸化傷害」から守る作用がある。

 「放射線治療」と「抗がん剤治療」はがん組織において「活性酸素」の産生を高めることによって抗腫瘍効果を発揮するが、同時に正常組織にもダメージを与える。ケトン体は正常細胞における「酸化ストレス」を軽減する作用があり、がんの標準治療(通常療法三大療法)の副作用を軽減する効果がある。

 我々のデータは、ケトン体を補給する治療は安全で実現可能で、かつ、費用対効果の高いがん補助療法となり得ることを示唆している。したがって、この治療法を前臨床試験や臨床試験で検討する必要がある。

 ( 以上、論文の「考察の部分の抜粋」



最後に(この項は、分かりやすいようにブログ管理人が独断で設けました

 β-ヒドロキシ酪酸が「ヒストン脱アセチル化酵素」を阻害することによって、エピジェネティックな遺伝子発現調節作用によって、抗酸化力の増強や寿命延長効果があることは「(322)β-ヒドロキシ酪酸はヒストンのアセチル化を亢進する:ケトン食の酸化ストレス軽減作用」で解説しています。

 また「Fine」博士の臨床試験の論文は「進行がんに対する代謝治療としてのインスリン阻害を目指す治療:10例のがん患者を対象にした安全性と妥当性を評価する予備試験」で紹介しています。

 体内で直ぐにケトン体(アセト酢酸か β-ヒドロキシ酪酸)になる『ケトン体前駆物質が安価に入手できるようになれば、この『ケトン体前駆物質を砂糖やデンプンのように食事に添加して、体内のケトン体の濃度を高めるがん治療が実現できるかもしれません。

 しかし、現時点では、「1,3-ブタンジオール」や「ケトンエステル」を1日100g以上摂取する場合の安全性は確立されておらず、この摂取量では極めて高額な費用になるので現実的ではありません。そのうち、安全で安価な『ケトン体前駆物質が開発される可能性はあります。

 現時点では、肝臓で代謝されてケトン体を迅速に産生し、安全性が確立されている『中鎖脂肪酸トリグリセリドMCTオイル)』を摂取して、肝臓でケトン体を産生させるほうが安価で安全です(下記にてお話ししていますブログ管理人)。



【参考文献】
  Starvation in man. New Eng J Med 282:668-675, 1970年
  Ketoacids? Good medicine? Trans Am Clin Climatol Assoc. 114:149-61, 2003年
  Ketone supplementation decreases tumor cell viability and prolongs survival of mice with metastatic cancer.
   Int J Cancer. 2014 Feb 26. doi: 10.1002/ijc.28809. [Epub ahead of print]



      健康になりたければ糖質をやめなさい!- 糖質を減らせば、病気も肥満も遠ざかる

      ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する!- 今あるがんが消えていく『中鎖脂肪ケトン食』

      がんに効く食事 がんを悪くする食事




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 『中鎖脂肪酸』を多く含有するオイルを摂取すれば、「ケトン体」が多く生産される

 『中鎖脂肪酸』を多く含有する『ココナッツオイル』『マクトンオイル』『MCTオイル』を摂取すると、糖質制限をした時に「ケトン体」が多く生産されます。

 「福田一典」医師は「癌の『中鎖脂肪ケトン食療法』- 福田一典医師」記事において、このようにお話しされています。


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糖質を制限すれば、高脂肪食でもがんを促進しない


 がんの発生や再発の予防を目的とした食事療法では、脂肪を減らすことが推奨されています。全カロリーの45~65%を糖質から摂取し、脂肪からのカロリーは食事全体のカロリーの20~30%程度が望ましいと言うのが一般的な意見です。 しかし、脂肪の取り過ぎが危険なのは糖質を主食にする場合です。食事からの摂取カロリーの半分以上を糖質から摂取する食事内容では、脂肪の摂り過ぎは発がんリスクを高めます。しかし、糖質を制限した場合には高脂肪食は発がんリスクを高めることありません。その第一の理由は、脂肪を摂取しても血糖もインスリンの分泌も増えないからです

 また、がんや動脈硬化の原因になるとなるのは、動物性の飽和脂肪酸や ω6不飽和脂肪酸の多い一部の植物油を多く摂取した場合です。逆に、オレイン酸を含むオリーブオイルや ω3不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)を含む魚油、αリノレン酸を含む亜麻仁油(フラックスシードオイル)や紫蘇油(エゴマ油)を多く摂取するとがんも動脈硬化性疾患も減らせることが明らかになっています

 つまり、糖質の摂取を減らすことと、がん予防に有効な脂肪を主体にすれば、脂肪の摂取量を増やしても、がん細胞の増殖を促進することは無いのです。


絶食と同じ効果があるケトン食療法

 がん細胞にブドウ糖を与えないという目的であれば、断食療法やカロリー制限は効果がありますが、断食療法は体重が減少し栄養素が不足する欠点があり、カロリー制限も体重や体力を低下させる欠点があります。抗がん剤などで治療を行っているときには、断食やカロリー制限は実施しにくいと言わざるを得ません。

 絶食と同じような効果があって体力も栄養状態も悪化させない食事療法として「ケトン食」があります。これは糖類の摂取を極端に減らし、脂肪を多く摂取しケトン体を産生させるという食事で、てんかんの食事療法として確立されている食事法です。

 ケトン体はブドウ糖が枯渇したときに肝臓で脂肪酸の分解が亢進したときにできる物質です。正常細胞では、ケトン体を使ってエネルギー(ATP)を産生することができるのですが、多くのがん細胞はケトン体を利用できません。ケトン体から ATP を産生するときに必要な酵素の活性が低下しているからです。そこで、がん細胞が利用できるブドウ糖の量を減らし、がん細胞が利用できないケトン体を増やしてがん細胞だけを死滅させる食事療法としてケトン食が注目されています。 食事の糖質を制限して血糖とインスリンの分泌を低下させれば、がん細胞の増殖を抑えることができます。ケトン体を増やせば、さらに抗がん作用が強化されるという理論です。がん細胞だけを兵糧攻めにできる食事療法と言えます。


中鎖脂肪酸はケトン体の産生効率を高める

 脂肪はグリセロール(グリセリンとも言う)1分子に3分子の脂肪酸が結合した構造をしています。食事から摂取した脂肪は、十二指腸で胆汁と混じって乳化され、胃液や膵液のリパーゼによってグリセロールと脂肪酸に分解されて吸収されます。グリセロールは肝臓でブドウ糖に変換されてエネルギー源になります。脂肪酸は複数個の炭化水素(CH2)が連結した鎖からなり、炭素数が7以下のものを『短鎖脂肪酸、8~12のものを『中鎖脂肪酸、13以上のものを『長鎖脂肪酸と言います。

 長鎖脂肪酸は腸壁を通り抜けると、腸管粘膜上皮細胞内で再びグリセロールと結合して中性脂肪(トリグリセリド)になり蛋白質などと一緒になってカイロミクロンというリポ蛋白質粒子になります。カイロミクロンとなった脂肪酸はリンパ管や血管を経て脂肪組織や筋肉組織に運ばれて一旦貯蔵され、グリコーゲンが枯渇したときに分解されて、ゆっくりと消費されます。つまり、長鎖脂肪酸はエネルギーとして代謝されにくく、体脂肪として蓄積されやすい脂肪酸です。

 一方、中鎖脂肪酸は分子が小さいため消化管から効率的に吸収され、カイロミクロンを作らずに門脈に入って肝臓に運ばれ、肝細胞のミトコンドリアで素早く酸化され、大量の ATP とケトン体を生じる特徴があります。中鎖脂肪酸はエネルギーとして燃焼される効率が高く、体脂肪として蓄積しにくいので、最近では中鎖脂肪酸を含む脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリド、あるいは中鎖中性脂肪)はダイエットや健康によい油として急速に普及しています。手術後や未熟児の栄養補給に医療現場でも利用されている健康的な脂肪です。

 長鎖脂肪酸は糖類が存在するとケトン体産生が抑えられますが、中鎖脂肪酸からケトン体を作る経路は糖質の影響をほとんど受けずにケトン体が多量に産生されます。肝臓ですぐに分解される中鎖脂肪酸を利用すると、脂肪の割合を60%程度に減らし、糖質を1日40~60g 程度摂取しても、ケトン体を大量に産生することができます。

 日本で使われている食用油(菜種油大豆油紅花油ごま油オリーブ油ひまわり油コーン油など)は長鎖脂肪酸(炭素数が13以上)が主成分です。一方、中鎖脂肪酸(炭素数が8~12)を多く含む油としてはヤシ油ココナッツオイルがあります。ココナッツオイルには、60~70%の中鎖脂肪酸トリグリセリド(中鎖脂肪)が含まれていますが、ケトン食療法用の中鎖脂肪酸トリグリセリド100%のオイル(キッセイ薬品のマクトンオイルや日清オイリオ社の MCTオイル)も市販されています。中鎖脂肪酸が長鎖脂肪酸よりもケトン体を多く産生でき、炭水化物や蛋白質の許容量が高いので、より調理がしやすく食べやすいケトン食を作れます。このように、中鎖脂肪をうまく利用するのが、がん治療に対する中鎖脂肪ケトン食療法のポイントになります。古典的なケトン食は脂肪:非脂肪(糖質蛋白質)を4:1くらいにしていますが、中鎖脂肪酸を多めに使うとこの比率を2以下まで減らせます。

ketogenic-7
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【図6】
◆◆ 脂肪はグリセロール(グリセリンとも言う)1分子に3分子の脂肪酸が結合した構造をしており、これを中性脂肪(トリグリセリド)と言います。食事から摂取した脂肪は十二指腸や小腸内で膵液中のリパーゼによって加水分解され、トリグリセリド(中性脂肪)から脂肪酸とグリセロールが分離されます。グリセロールは水溶性なのでそのまま小腸から毛細血管に吸収され、解糖系で代謝されたり、糖新生によってブドウ糖に変換されます。
脂肪酸は水に不溶性ですが、胆嚢から十二指腸に分泌される胆汁中に含まれる胆汁酸やホスファチジルコリンやコレステロールによって乳化されたミセルを形成します。ミセルというのは、水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(親油基)をもつ物質が、水の中で親水基を外に親油基を内に向けて球状に会合した粒子です。ミセルは水溶性で受動拡散によって消化管粘膜の吸収上皮細胞内に吸収されます。
 脂肪酸が腸管から吸収されるとき、脂肪酸の大きさ(炭素鎖の長さ)の違いによって代謝のされかたが異なります。炭素数が13以上の長鎖脂肪酸の場合は、腸壁を通り抜けると、腸管粘膜上皮細胞内で再びグリセロールと結合して中性脂肪(トリグリセリド)になり蛋白質などと一緒になってカイロミクロンというリポ蛋白質粒子になります。カイロミクロンはリンパ管から胸管に入り、鎖骨下静脈から大循環系に入って全身に運ばれます。主に脂肪組織や筋肉組織に取込まれ、一旦貯蔵されてからグリコーゲンが枯渇したときに分解されて、ゆっくりと消費されます。つまり、長鎖脂肪酸はエネルギーとして代謝されにくく、体脂肪として蓄積されやすい脂肪酸です。
炭素数が8~12の中鎖脂肪酸は胆汁酸によるミセル化は不要で、小腸吸収細胞に容易に吸収され、分子が小さいことから腸管で毛細血管に吸収され、長鎖脂肪酸のように中性脂肪に再合成されず、カイロミクロンを作らずに遊離脂肪酸のまま門脈に入って肝臓へ運ばれ、速やかにエネルギー源となって代謝されます。中鎖脂肪酸は肝細胞内のミトコンドリアに入り、炭素分子が1つおきに酸化される β酸化という過程に入ってアセチルCoA  を生じて TCA回路に入って代謝されますが、ブドウ糖の補給が少ない状況ではアセチルCoA はケトン体産生に利用されます。
 脂肪酸が β酸化のためにミトコンドリアに取込まれるとき、長鎖脂肪酸は L-カルニチンが必要ですが、中鎖脂肪酸は L-カルニチンの助けなしにミトコンドリア内に入って速やかに代謝されます。中鎖脂肪酸はエネルギーとして燃焼される効率が高く、体脂肪として蓄積しにくい脂肪酸です。
 中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸より約4倍も吸収が速く、代謝も5~10倍も速いと言われています。このように中鎖脂肪酸のエネルギー利用速度は速いので、激しい運動の持続時間を延長する効果も報告されています。また、長鎖脂肪酸は感染防御や免疫系に負荷がかかりますが中鎖脂肪は影響が少なく、また組織への蓄積傾向や臓器障害のもととなる脂質過酸化反応も少ないためより安全に摂取できます。
 長鎖脂肪酸は糖類が存在するとケトン体産生が抑えられますが、中鎖脂肪酸からケトン体を作る経路は糖質の影響をほとんど受けずにケトン体が多量に産生されます。肝臓ですぐに分解される中鎖脂肪酸を利用するとケトン体を大量に産生することができます。
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 以上のように、『中鎖脂肪酸』を多く含有する『ココナッツオイル』『マクトンオイル』『MCTオイル』を摂取すると、糖質制限をした時に「ケトン体」が多く生産されますので、糖質制限食を安全に行なうことができます。

 ケトン食というのは、基本的には「糖質制限をしている上で成り立つもの」です。
 「ケトン体」が産生されるようになるには、身体が「ブドウ糖」に枯渇して飢えている条件が必要だからです。

 糖質制限食を安全に遂行するためには、必ず “ブドウ糖の代替エネルギー源” を得る必要があります。
 糖質制限とは、ただ単に糖質の摂取量を制限すれば良いわけではありません。

 「ケトン体」は「ブドウ糖」よりも遥かに優れた “ブドウ糖の代替エネルギー源” になります。
 しかも、当記事にてお話しされていたように、「ケトン体」には癌の生存増殖悪性化転移を阻害する「抗がん作用」がありますので、ケトン食は立派な「抗がん療法」にもなり得るのです。


 「ケトン体」を多く得るには、以下のような『ココナッツオイル』『マクトンオイル』『MCTオイル』などの『中鎖脂肪酸』を多く含有するオイルを活用すると良いです。ご参考にされてください m(__)m

 私は個人的には、甲田療法の『生玄米粉食』と『生菜食療法』をベースに置いた『短鎖脂肪酸食』に、以下の『中鎖脂肪酸』を多く含有するオイルを組み合わせる方法を推奨します。

 先日、甲田光雄先生のお弟子さんが次の記事で提案してくださっている糖質制限食は、玄米菜食が身体によく合う癌患者さんであれば、「植物の生食」の力を活かしていますので一番理想的だと思います。この記事の中で、甲田光雄先生のお弟子さんは『ココナッツオイル』の使用を推奨されています。


    甲田療法式「糖質制限食」のレシピ【 糖質を完全に抜いた食事療法は大変危険です!:
     糖質制限食の肉食は、獣肉食には弊害があるため、獣肉よりも、鶏肉・魚肉を選んで!】



 どうぞ、これらの情報を学び得て考慮しながら、ご自分の身体に合う食事療法を自ら導き出してください。
 そして、食事療法は信念を持って、素直な感謝を添えながら実行されてください。
 感謝なきところに、好結果は生まれません。

 好結果とは「」結果です。
 好結果というのは、それに対して「好む愛する感謝する)」想いを持って向き合いながら実行することによって、そこではじめて「自力で」生み出すことができる「良い結果」なのです。もし嫌々な想いを持って行なえば、それからも「嫌がれる」結果となって終わるでしょう・・。

 食事療法を「嫌々」行なう人は、その食事療法が如何に優れていようとも「好結果」が出ません。
 「嫌々心」と同じ「嫌な結果」に終わることが多いのです・・。


 「ウィスコンシン大学」医学部や「スタンフォード大学」医学部で教鞭を取る「ブルース・リプトン」博士は、世界的に著名な細胞生物学者として知られています。「ブルース・リプトン」博士は、このように言われてます。

   細胞は遺伝子に従うのではなく、人間の思考意識心の力に従っている。

 つまり「ブルース・リプトン」博士は『遺伝子は単なる設計図に過ぎず、細胞の生命をコントロールしているのは遺伝子ではない! 細胞の生命は人間の思考意識心の力によってコントロールされている!』と言われているのです。

 「ブルース・リプトン」博士の著書は、霊学潜在意識の分野でよく言われている「心の力」「心の作用」「心の影響力」について科学的に知りたい方には非常に面白い内容です。
 流石は世界的に著名な細胞生物学者の先生ですから、大変説得力があります。


         「思考」のすごい力

         思考のパワー ~ 意識の力が細胞を変え、宇宙を変える



 「ブルース・リプトン」博士が伝えるものは、医学的生化学的栄養学の常識を覆すパラダイムシフトの一つです。
 人間の思考意識心の力が物事を決しているという事実に、今こそ、自ら進んで気づくべき時です。


 癌治療における食事療法の重要性に気づき、ご自分が見出された食事療法が何かあるのならば、その食事療法が自分の身体をつくり変え、癌や持病を治す方向性と力を与え、自分の身体を育ててくれるわけですから、ご自分なりにその食事療法を全力で好み、真っ直ぐな愛情を持ち、心素直に感謝の想いを持って向き合いながら行なうべきです。それでこそ、「好ましい」結果が生まれます。ご自分が「結果」に出会えるのです。

 どのような食事療法であろうとも、嫌々やるのであれば、やはり、結果も「嫌な結果」に終わるでしょう・・。
 人間の思考意識心の力を甘く見てはなりません。ここは、潜在意識の分野で言われている通り「心のままの結果が出る」という側面がこの世にはあるのです。

 もっと言えば、ご自分を助けてくれる存在に対して、好むこともせず、愛情も持たず、感謝もない・・、こんなんで「好結果」に出会えるとでも思いますか・・・。私には、とても考えられないことです・・・。

 今思えば、私がこの8~9年間、ずっと生菜食を継続し、我が家に生菜食を導入することで家族の持病を改善する「好結果」が頂けたのも、私が生菜食を心から好み、生菜食に真っ直ぐに愛情を持ち、生菜食に対する無上の感謝を心素直に持ち得ていたからだと回顧します。もし、私が生菜食に対して、好むこともなく嫌々根性で行ない、愛情も持たず、感謝もなかったならば、生菜食を継続することなど、とてもできなかったでしょう・・。ましてや「好結果」を頂くなどということはあり得なかったはずです・・・。

 私は生菜食に対して無限の妙利を感じていましたし、何よりも、私は生菜食が大好きでした。
 それに、生菜食を信じる思いが不思議とありました。
 『人間は信じるものと一体となる』と言いますが、たぶん、そうなんだと思います。

 でも、この『信じる』という想いには「理解する」という内訳が必要です。
 それを学んで「理解する」ことなく『信じる』というのは、これを『盲信』と言うのです。

 本当の『信じる』には、必ず「深い理解感得感応」があるものです。
 必ず、それを深く学んでいるものです。

 それを学んでもいない・・、理解もしていない・・、それで『信じる』と言われても、これは『鵜呑み』としか言えません。
 この『盲信』『鵜呑み』は『無知の罪』を生みます。これは絶対に避けましょう!

 私の『信じる』という認識は、それを学び、深く理解し、揺るぎない『信念』にまで高まった時の想いだと感じています。
 そこには、慎重性が常に同居し、『自己責任』が伴っています。
 『自己責任』の無い『信念』など存在し得ないと、私は思っています。


 食事療法に活路を見出される癌患者さんは、どうぞ、ご自分の選択したその食事療法に対して、好む想い、愛情の想い、感謝の想いを、心に素直に持ちながら行なって頂きたいです。自分の思考意識心の力が、その食事療法の結果の良し悪しを左右する可能性を感じながら取り組まれて頂きたいと思います。

 そして、ご自分なりに糖質制限食を正しく学び、「ケトン体」を多く産生することができるようになる『中鎖脂肪酸』を多く含有する『ココナッツオイル』『マクトンオイル』『MCTオイル』などのオイルを取り入れて活用する工夫をされて頂きたいと思います。


 糖質制限食で失敗している方々は、だいたいが、ただ単に「糖質を断って、肉を喰ってれば良い!」と思い込んでいた人たちで、糖質を断つ代わりに、焼肉とんかつからあげフライばかり食い漁り、酒を飲み・・、このような乱暴な食事ばかりしていた人たちです。その末に、身体を壊しています・・。
 このような食事内容の「危険性」が認識できない時点で、その人の意識はすでにおかしいのです・・・。

 上述のような食事内容では「糖質を断った普通食」です。これでは問題が発生して然るべきです。
 次の記事のように「糖質制限食の危険性」を伝えるものもあります。


   専門家が警告! 大ブームの「食事は炭水化物抜き」が一番危ない!
    糖質制限ダイエットで「寝たきり」が続出中!【炭水化物の主食を抜き、安易に獣肉食に走って良いの?】


   肉を好きなだけ食べてやせる「糖質制限ダイエット」で死亡率上昇


 糖質制限食という食事法は、今も世間でブームを巻き起こしている「糖質制限ダイエット」のような、単なる「ダイエット食(減量食)」ではなく、あくまで食事療法なのです。糖質制限食はアメリカでも研究が進められています。

 糖質制限食は、ケトン食と組み合わせれば安全にできます。
 糖質制限食も、ケトン食も、必ずしっかりと学び得てから実行してください。
 ろくに学びもせず、我流でやったり、いい加減にやったり、テキトーにやったりだけは絶対にしないでください。
 必ず、安全性を確保して行なっていきましょう! よろしくお願いします m(__)m




    ココナッツオイル

          

             

          



    マクトンオイル       MCTオイル