元記事は、2012年の黙示録です。

 「病気ではないけれど、健康とは言えない人」のことを、「未病」と言うそうです。「病気予備軍」ということでしょうか。著者は、最近の日本人には未病の人が増えていると述べています。そして、その原因が食べ物にあることを、胃相・腸相という新しい医学的所見に基づいてわかりやすく説明してくれています。
 自分や家族の健康について少しでも不安に感じることがある人はもちろん、健康には大いに自信があるという方も、まずはこの新谷医師の説明に耳を傾けてみて下さい。
 これまで信じていた栄養学がいかに間違ったものであるかがわかります。特に、肉や牛乳が健康によくない食べ物である理由は大変説得力があります。
 (なわ ふみひと)



病気にならない生き方

新谷弘実(著)  サンマーク出版


   いまからでも、遅くはありません ・・・・・・・・


 プロローグ

 医師になって45年間、私は一度も病気になったことがありません。私自身が医師の治療を受けたのは、19歳のときにインフルエンザにかかったのが最初で最後です。私は現在もアメリカと日本の医療現場で働いています。医者というのは肉体的にも精神的にもハードな職業ですが、健康を保ちつづけていられるのは、ある健康法を日々実践しているからです。その健康法の効果を実感してからは、私が治療した患者さんたちにも実践していただいています。その結果はすばらしいものでした。それ以来、私の治療したガン患者のガン再発率はゼロ%といえるほどになったからです。

 いまから約35年前、私は世界で初めて、大腸内視鏡を使うことによって開腹手術することなくポリープを切除することに成功しました。これは当時、画期的なことで、この技術を持つ世界でただ一人の医師として、私は引っ張りだこになったのです。そして、まだ30代の若さで米国の大病院の外科胃腸内視鏡部長となり、朝から晩まで治療にあたってきました。気がついてみると、胃腸内視鏡外科医として、これまでに約30万例以上の人の胃腸を診てきたことになります。その膨大な臨床結果から、私は「健康な人の胃腸は美しく、不健康な人の胃腸は美しくない」ということを教えられました。こうした胃腸内の状態を、私は「人相」になぞらえて「胃相」「腸相」と読んでいます。健康な人の胃相・腸相はよく、不健康な人の胃相・腸相は悪いということです。胃相・腸相にもっとも大きな影響を与えるのは、食歴と生活習慣です。そこで私は診療の際に、患者さんたちに食歴と生活習慣に関するアンケートを行ないました。すると、よい胃相・腸相をしている人の食事や生活習慣と、悪い胃相・腸相をしている人の食事や生活習慣には、はっきりとした特徴があることがわかったのです。

 本書でご紹介するのは、こうした多くの患者さんたちの協力のうえにたどりついた「健康で長生きする方法」なのです。では、どうすれば健康で長生きできるのか ―― ひとことでいえば「ミラクル・エンザイム」を消耗しない生活を送るということでした。「ミラクル・エンザイム」というのは、かんたんにいうと、人間の生命活動を担っている5000種以上の「ボディ・エンザイム(体内酵素)」の原型となるエンザイムのことです。

 「エンザイム(酵素)」というのは、生物の細胞内に作られるタンパク質性の触媒の総称で、植物でも動物でも、生命があるところには必ずエンザイムが存在しています。私たちの健康は、日常何気なく行なっているさまざまな行為に支えられています。食事、水補給、運動、休養、睡眠、精神状態、―― こうしたもののどれか一つにでも問題が生じれば、その影響は体全体におよびます。そんな人体の複雑なつながりを担い、健康に生きるために必要な恒常性を保つ役目を果たしているのが、 ミラクル・エンザイムであると考えています。

 ところが現代社会は、その大切なミラクル・エンザイムを消費する要因に充ち満ちています。お酒やたばこといった嗜好品、食品添加物、農薬、さらに薬やストレス、環境汚染、電磁波なども、ミラクル・エンザイムを消耗させる原因となっています。そんな現代社会で健康を維持していくためには、自分の体の仕組みを知り、自分の健康は自分で守るという明確な意志を持って生活することが大切です。




元気な百歳になる方法

 東洋医学には「未病」という言葉があります。健康とはいえないが、まだ病気になっていないという「病気の一歩手前」の状態を表す言葉です。現在の日本人には、こうした「未病」の人がとても多いのです。自分は健康だと思っている人のなかにも、慢性的な便秘や下痢、不眠症や肩こりなどに悩まされている人は少なくないはずです。こうした症状は、未病の体が送っているSOS信号といえます。「いつものことだから」と軽く見ていると、大きな病気に進行してしまう危険性だってあるのです。

 元気に生活している百歳の人と、寝たきりの百歳の人、その違いを生んだのは年齢ではありません。両者の違いは、それまでの百年間をどのように積み重ねてきたのかによって生じるのです。ひとことでいえば、健康でいられるか否かは、その人の食事・生活習慣次第だということです。では、どのような生活習慣を身につければ、健康で長生きできるのでしょうか。


流行の健康法にはウソがいっぱい

一般的に健康によいといわれているもののなかには、実際には健康に害を及ぼすものがたくさん含まれています。たとえば、あなたは次のような健康法を信じて実践していませんか?

 ○ 腸のために、毎日ヨーグルトを食べるようにしている。

 ○ カルシウム不足にならないよう、毎日牛乳を飲んでいる。

 ○ 果物は太りやすいので控え、ビタミンはサプリメントでとるようにしている。

 ○ 太りすぎないよう、ごはんやパンなど炭水化物はなるべく控えるようにしている。

 ○ 高タンパク、低カロリーの食事を心がけている。

 ○ 水分は、カテキンの豊富な日本茶でとるようにしている。

 ○ 水道水は残留農薬を抜くために、必ず一度沸騰させてから飲んでいる。


 これらはすべて胃相・腸相を悪くする「間違った健康法」なのです。事実、毎日ヨーグルトを食べているという人で、よい腸相の持ち主に会ったことがありません。

 アメリカ人の大半は毎日たくさんの牛乳を飲みますが、非常に多くの人が骨粗鬆症に悩まされています。お茶の先生など、仕事で大量のお茶を飲んでいる人には、胃ガンの前駆症状ともいえる萎縮性胃炎を起こしている人が少なくありません。胃相・腸相の悪い人に健康な人はいません。


肉を食べても、スタミナはつかない

 1977年、アメリカで食と健康に関する非常に興味深いレポートが発表されました。そのレポートは、発表した上院議員ジョージ・S・マクガバン氏の名を取って「マクガバン・レポート」と呼ばれています。このレポートがまとめられた背景には、アメリカの国家財政を圧迫するほど巨額にふくれ上がった医療費の問題がありました。医学が進歩しているにもかかわらず、ガンや心臓病をはじめとする病気にかかる人の数は年々増えつづけ、それに伴い国家が負担する医療費も増えつづけ、ついには国家財政そのものをおびやかすところまで迫っていたのです。なんとかして、アメリカ国民が病気になる原因を解明し、根本的な対策を立てなければ、アメリカは病気によって破産してしまうかもしれない。そんな危機感から、上院に「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」が設立されたのです。マクガバン氏はその委員長でした。委員会のメンバーは、世界中から食と健康に関する資料を集め、当時最高レベルの医学・栄養学の専門家らとともに、「病気が増えている原因」を研究・調査しました。その結果をまとめたのが、5000ページにもおよぶ「マクガバン・レポート」です。

 このレポートの公表は、アメリカ国民に大きな選択を迫ることになりました。多くの病気の原因がこれまでの「間違った食生活」にあると結論づけられていたからです。当時アメリカでは、分厚いステーキのような高タンパク・高脂肪の食事が食卓の主役でした。タンパク質は体を構成するもっとも基本的な物質ですから、体をつくるうえでとても大切な栄養素だということで、動物性タンパクをたくさん含んだ食事をとることが、スポーツ選手や成長期の若者はもちろん、体の弱い人やお年寄りにもよいとされていました。日本で根強い「肉こそ活力の源」という考えは、このころのアメリカ栄養学の影響です。

 ところが「マクガバン・レポート」は、こうした当時の食事の常識を真っ向から否定しました。そして、もっとも理想的な食事と定義したのは、なんと元禄時代以前の日本の食事でした。それは、精白しない穀類を主食に、おかずは季節の野菜や海藻類、動物性タンパク質は小さな魚介類を少量といったものです。近年、日本食が健康食として世界的な注目を集めるようになったのは、じつはこれがきっかけなのです。

 たしかに、肉を食べなければ筋肉が育たないというのは真っ赤なウソです。これは自然界を見ればわかります。肉食動物の代表ライオンは、とても強いため、さぞかし立派な筋肉を持っているだろうと思いがちですが、実際には馬や鹿のような草食動物のほうが、はるかに発達した筋肉をもっています。その証拠に、ライオンや虎は、獲物を捕らえるとき長々と追いかけたりはしません。彼らが得意とするのは、瞬発力を生かしたスピード勝負です。持久力では、筋肉の発達した草食動物にかなわないことを彼ら自身が知っているからです。

 肉を食べなければ大きくならないというのもウソです。象やキリンは、ライオンや虎の何倍もの大きさがありますが、これらは草食動物です。ただし、動物性タンパクをたくさん食べると、人間の成長が速くなるということは事実です。最近の子供たちの成長スピードが速いのは、動物性タンパクの摂取量が増えたためと考えられています。しかし、ここにも動物食の危険な落とし穴があります。それは「成長」はある年齢を超えた時点で「老化」と呼ばれる現象に変わるということです。つまり、成長を速める動物食は、老化を速める食事ということになるのです。


胃相と腸相が教えてくれたこと

 人間の顔に人相のよしあしがあるように、胃腸にも「胃相」「腸相」のよしあしがあります。人相にはその人の性格が表れるといいますが、胃相・腸相にはその人の健康状態が表れます。体に痛みや不調が生じていない「未病」の人に、「腸相が悪くなるから動物食は控えてください」といっても、素直に忠告に従って実践する人はあまり多くありません。そこには、動物食がおいしいからという理由もありますが、いちばんの理由は「見えないから」だと思います。肉食を続けたとき、腸の中でどのような変化が起きるのか、ぜひ知っていただきたいと思います。

 肉食が腸相を悪くする最大の理由は、肉には食物繊維がなく、脂肪やコレステロールを大量に含んでいることにあります。肉食を続けていると、腸壁がどんどんかたく厚くなりますが、これは食物繊維がないために便の量が極端に少なくなり、その少ない便を輩出するために腸が必要以上に蠕動(ぜんどう)しなければならなくなるからです。つまり、過剰な蠕動運動により、腸壁の大部分を構成する筋肉が鍛えられて厚く大きくなってしまうのです。こうして腸はかたく短くなっていきます。腸壁が厚くなると、内控は狭くなっていきます。かたく狭くなった腸の内圧は高くなるのですが、動物性タンパクに加えて脂肪も大量に摂取して腸周辺の脂肪層が厚くなるので、さらに腸壁に圧力がかかります。こうして腸内の圧力が高くなると、中から外に向かって粘膜が押し出されるという現象が起きます。この現象が「憩室(けいしつ)」と呼ばれる「ポケット状のくぼみ」を作り出します。こうなると、ただでさえ量の少ない便は腸の中を進むのがむずかしくなります。その結果、腸の中に長く停滞する「停滞便(宿便)」がたまってきます。その停滞便は腸壁にこびりつくようにたまるのですが、そこに憩室があれば、そのポケット状のくぼみに停滞便が入り込み、さらに排出されにくくなります。憩室やひだの間にたまった停滞便は毒素を発生し、その部分の細胞に遺伝子変化を起こさせポリープを作り出します。そのポリープが成長し、ガン化していくのです。腸相の悪化は、大腸ガン、大腸ポリープ、憩室炎などさまざまな大腸の病気を引き起こすだけでなく、子宮筋腫、高血圧、動脈硬化、心臓病、肥満、乳ガン、前立腺ガン、糖尿病などの生活習慣病を発病します。


食の常識を信じていると、命が危ない

 牛乳は日本人に不足しがちなカルシウムを多く含むという理由で、とてももてはやされています。でも、実は牛乳ほど消化の悪い食物はないといっても過言ではありません。牛乳に含まれるタンパク質の約8割を占める「カゼイン」は、胃に入るとすぐに固まってしまい、消化が悪いのです。

 さらに市販の牛乳はその成分がホモゲナイズ(均質化)されています。つまり、搾乳した牛乳の脂肪分を均質化させるために撹拌されているのです。撹拌するときに牛乳に空気が混じり、乳脂肪分が過酸化脂質になってしまっています。過酸化脂質というのは「酸化がとても進んだ脂」という意味です。いわば「錆びた脂」ということです。これは体に非常に悪い影響を及ぼします。その錆びた脂を含んだ牛乳を、今度は100度以上の高温で殺菌します。エンザイム(酵素)は熱に弱いため、48度から115度の間で死滅します。つまり、市販の牛乳というのは、大切なエンザイムを含まないのです。しかも、脂肪分は酸化し、タンパク質も高温のため変質しているという、ある意味で最悪の食物なのです。その証拠に、市販の牛乳を母乳の代わりに子牛に飲ませると、その子牛は4、5日で死んでしまうそうです。エンザイムのない食物では命を養うことはできないということでしょう。


牛乳を飲み過ぎると骨粗鬆症になる

 市販の牛乳が悪いということを、35年前に私に最初に教えてくれたのは、私の親戚の子供たちでした。その子供たちは、2人ともアメリカで生まれ育ったのですが、生後6、7カ月でアトピー性皮膚炎を患いました。子供たちの母親は、かかりつけの小児科医の指示に従っていたのですが、いくら治療を受けてもアトピーは改善されず、3~4歳になったころから、ひどい下痢を起こすようになったのです。そしてついに血便まで出るようになってしまいました。びっくりした母親が私を頼ってきたので、すぐに内視鏡を入れて中を見ると、その子供は潰瘍性大腸炎の初期でした。私はすぐ子供たちが普段からよく食べている食物を調べました。そして、彼らがアトピーを発症した時期が、医師の指導のもとに授乳を打ち切り、牛乳を与えるようになった時期であったことがわかったのです。私は子供たちの食事から、すぐに牛乳と乳製品をすべてカットするよう指示しました。すると案の定、血便も下痢も、アトピーすらもピッタリ治まったのです。

 のちに私の患者さんたちに食歴のアンケートをとるとき、牛乳・乳製品をどれぐらいとっているかという項目を設けたのも、この時の経験があったからでした。その臨床データによれば、牛乳や乳製品の摂取はアレルギー体質をつくる可能性が高いことが明らかになっています。妊娠中に母親が牛乳を飲むと、子供にアトピーが出やすくなるという最近のアレルギー研究の結果とも一致しています。

 日本ではここ30年ぐらいの間に、アトピーや花粉症の患者が驚くべきスピードで増えました。その数はいまや5人に1人といわれるほどです。なぜこれほどアレルギーを起こす人が急増したのか、さまざまな説がいわれていますが、私はその第一の原因は、1960年代初めに始められた学校給食の牛乳にあると考えています。過酸化脂質を多く含む牛乳は、腸内環境を悪化させ悪玉菌を増やし、腸内細菌のバランスを崩します。その結果、腸内には活性酸素、硫化酸素、アンモニアなどの毒素が発生します。

 こうした毒素がどのようなプロセスを経て、どのような病気を招くかはまだ研究段階ですが、牛乳はさまざまなアレルギーだけではなく、子供が白血病や糖尿病などシリアスな病気を発症する原因となっているという研究論文がいくつも出ています。こうした論文はインターネットなどで見ることができますので、ぜひご自分の目で確かめていただくといいでしょう。

 いろいろな健康被害をもたらす可能性をもっている牛乳ですが、最大の誤解は、牛乳が骨粗鬆症の予防に役立つといわれていることです。これは大きな間違いです。牛乳の飲み過ぎこそ骨粗鬆症を招くのです。牛乳のカルシウムは、小魚などの食物に含まれるものより吸収がよいと言われますが、それは少し違います。人間の血中カルシウム濃度は一定しています。ところが牛乳を飲むと、血中カルシウム濃度は急激に上昇するのです。そのため、体は血中のカルシウム濃度をなんとか通常の状態に戻そうというコントロールが働き、血中の余剰カルシウムを腎臓から尿に排泄してしまうのです。つまり、カルシウムをとるために飲んだ牛乳は、かえって体内のカルシウム量を減らしてしまうという皮肉な結果を招くのです。牛乳を毎日たくさん飲んでいる世界四大酪農国であるアメリカ、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの各国で、股関節骨折と骨粗鬆症が多いのはこのためでしょう。これに対し、日本人が昔からカルシウム源としてきた小魚や海藻類に含まれるカルシウムは、血中カルシウム濃度を高めるほど急激に吸収されることはありません。ですから、牛乳を飲む習慣のなかった時代の日本には、骨粗鬆症はなかったのです。


「ヨーグルト神話」には疑問を感じます

 ヨーグルトを常食していると、腸相は悪くなっていきます。これは30万例の臨床結果から自信をもっていえます。もしあなたがヨーグルトを常食しているなら、便やガスのにおいが強くなっているはずです。これは腸内環境が悪くなってきている証拠だと思ってください。くさいのは、毒素が腸内で発生しているからです。


あなたは、あなたが「何を食べているか」で決まる

 あなたは、何を基準に日々の食べ物を選んでいますか。英語には ≪ You are what you eat. ≫ という格言があります。これは「あなたは、あなたが何を食べているかで決まる」ということです。私たちの体は、日々の食事によって養われています。つまり、健康も病気も日々の食事の積み重ねの結果であるということです。

 日本の厚生省(現厚生労働省)は1996年、ガン、心臓病、肝臓病、糖尿病、脳血管疾患、高血圧症、高脂血症など、それまで「成人病」といっていたものを「生活習慣病」と改めました。それは、これらの病気が「年齢」ではなく「生活習慣」に由来するものであることが明らかになったからです。いま、私たちのまわりには多種多様な食物があふれています。多くの食物のなかから、日々何を選ぶかによって、あなたの健康状態は決まります。健康で長生きしたいと思うなら、単においしいから、好きだからということだけで食べ物を選んではいけないことがおわかりいただけると思います。

 ところが現代西洋医学では、その人がこれまで何を食べてきたかという「食歴」について患者さんに尋ねることはほとんどありません。食歴と病気の関係がもっと研究されるようになれば、「原因不明」の病気はずっと少なくなるはずです。どんな人でも、若いときからたばこを吸って、毎日お酒を飲み、食事は肉中心で野菜や果物はほとんど食べない、そして牛乳やヨーグルト、バターなどの乳製品を食べていたら、60歳ぐらいには間違いなく生活習慣病になります。病院で診察を受けるときなどに生活習慣を聞かれることがあっても、多くの場合、「現在」のことしか注目していません。でも、それではあまり意味がないのです。なぜ病気になったかを知るには、「食歴」つまりその人がいつどのようなものをどれぐらいの頻度で食べてきたのかを知る必要があるのです。

 ガン患者の食歴を調べていくと、動物食(肉や魚、卵や牛乳など動物性の食物)をたくさんとっていたことがわかりました。しかも、早い年齢で発病している人ほど、早くから動物食(とくに肉、乳製品)をひんぱんにとっていたことがわかったのです。ガンの種類はさまざまですが、この傾向だけは同じでした。そして、どんなガンを発病した人も例外なく腸相が悪かったのです。そのため、私は体のどこかにガンができた人は、大腸ポリープや大腸ガンができている可能性が高いので、必ずコロノスコープの検査を受けるよう、いいつづけてきました。

 食事が原因で起きる病気は、それを食べたからといってすぐに発病するようなものではありません。しかし、体の中では、これまでの食生活が確実に蓄積されています。今現在、症状が表れていないからといって安心することはできません。「継続は力なり」といいますが、よいほうにも悪いほうにも大きな力になるということを忘れないでください。


とにかく、エンザイム(酵素)の多い食べ物を食べなさい

 ライオンなどの肉食動物は、獲物を捕まえたとき、かならず内臓から食べ始めますが、それは内臓がエンザイムの宝庫だからです。エスキモーのように植物のほとんど育たない極寒の地で暮らす人々も、アザラシを捕らえると真っ先に内臓を食べます。ウサギは自分の一度目のやわらかい糞を食べますが、これも未消化のエンザイムを再吸収するためです。

 最近、ペットの病気が急増していますが、その原因も想像できます。ペットフードです。ペットフードはペットが生きるうえで必要な栄養バランスが含まれているといいますが、それはあくまでもエンザイムを無視した現在の栄養学にもとづいてのことです。

 カロリーやビタミン、ミネラル、タンパク質、脂肪などの栄養が足りていても、エンザイムが含まれていなければ、生命は養うことはできません。しかし、その大切なエンザイムは熱に弱く、48度から115度で死滅してしまいます。にもかかわらず、ペットフードは必ず加工工程で加熱されていますから、エンザイムはなくなっているのです。


人間よりも体温の高い動物の肉は血を汚す

 新谷食事健康法では、穀物と野菜中心の食事をし、肉、魚、乳製品、卵などの動物性の食物はなるべく少なく(全体の15%以下)するよう指導しています。動物食に含まれるタンパク質は、現在の栄養学では理想的なものが多く、腸内でアミノ酸に分解・吸収され、血や肉になるとされています。しかし、どんなによい食物であっても必要以上にとりすぎれば、体にとっては毒になります。特に動物性タンパク質は、とりすぎると胃腸で分解・吸収がしきれず、腸内で腐敗し、大量の毒素を作り出してしまいます。そして、その毒素を解毒するために腸内や肝臓で大量のエンザイム(酵素)が消費されるのです。

 牛や豚の体温は、人間よりも高い38.5~40度。鶏はそれよりもさらに高い41.5度です。こうした動物の脂は、その温度でもっとも安定した状態にあるということです。つまり、それよりも体温の低い人間の体内に入ったときには、ベタッと固まってしまいます。この脂のベタつきが、血液をドロドロにしてしまうのです。ドロドロになった血液は、流れが悪くなり、血管の中で停滞したり詰まったりします。これを私は「血が汚れる」と称しています。

 一方、魚は変温動物ですから、通常の状態であれば人間よりはるかに低い体温をしています。その脂が体温の高い人間の体内に入るとどうなるでしょう。フライパンなどで脂を熱すると、溶けてサラサラの液体になります。それと同じことが起こるということです。魚の脂が血液をサラサラにし、悪玉コレステロールを下げるといわれているのは、このためです。ですから、同じ動物性タンパク質でも、肉でとるより魚でとるほうが、人間の体にははるかによいのです。


人間の歯の数は、なぜ32本なのか

 人間の歯の数は32本(親知らずを含む)あります。その歯の門歯と犬歯の内訳を比率で見ますと、肉(動物食)を食べるための犬歯が「1」なのに対し、植物を食べる門歯と臼歯を足すと「7」あります。この「7対1」という歯の割合を、そのまま植物食と動物食に当てはめたのが、「植物食を85%、動物食を15%」という食事バランスなのです。

 植物食のウエイトが多いように思うかも知れませんが、人間の遺伝子ともっとも近い遺伝子をもつ生物、チンパンジーの食事を見ると、その95.6%は植物食です。 その内訳は、果物が50%、木の実や芋類が45.6%、そして残りのわずか4~5%がアリなどの昆虫を主とした動物食なのです。彼らは魚すら食べません。

 そんなチンパンジーの胃腸を内視鏡で見たことがありますが、胃腸を見ているだけでは人間かチンパンジーかがわからないほど似ています。そして何よりも驚いたのは、彼らがとてもきれいな胃相・腸相をしていることです。

 人間と違い、野生動物は病気になるとすぐに死んでしまいます。彼らは、食が自分たちの命を養い、健康を守る大切なものであることを本能的に知っているのです。私たち人間も自然にならい、もっと謙虚な心で「食」の基本に立ち返ることが必要だと思います。


まずいものを食べていては、健康になれない

 人間は進化の過程で食物を「調理する」ということを覚えました。それによってより多くの食物を楽しんだり、食物を保存したりすることができるようになりました。しかし、その反面、貴重なエンザイム(酵素)を調理の熱によって失うというデメリットを負うことになりました。野生の動物で、食物を調理したり、精製したり、加工したりする生き物はいません。ですから、健康によい食事を研究している人のなかには、人間もいっさいの食物の加工をやめ、すべて生の状態で食べるべきだという人もいます。でも、私はそうは思いません。なぜなら、健康に生きるためには人が幸福であることが大切だからです。食事は人間にとってもっとも大きな喜びを与えてくれるものです。無理してまずいものを食べていたのでは健康にはなれないのです。ですから新谷食事健康法では、自然に学びながらも、楽しみながらそれを続けることが何よりも大切だと考えています。そのためのポイントをまとめますと、次の通りです。

 ○ 植物食と動物食のバランスは、85(~90)対 15(10~)とすること。

 ○ 全体としては、穀物(雑穀、豆類を含む)を50%、 野菜や果物を35~40%、
   動物食は10~15%とすること。

 ○ 全体の50%を占める穀物は、精製していないものを選ぶこと。

 ○ 動物食は、できるだけ人間より体温の低い動物である魚でとるようにすること。

 ○ 食物はどれも精製していないフレッシュなものを、なるべく自然のままとるようにすること。

 ○ 牛乳・乳製品はできるだけとらないこと。
   乳糖不耐症やアレルギー体質の人、牛乳・乳製品が嫌いな人は、いっさいとらないようにすること。

 ○ マーガリンや揚げ物は避けること。

 ○ よく噛んで、小食を心がけること。


 「自然の摂理」と「人間の体の仕組み」を知って、これらのポイントを守れば、健康によい食事を楽しみながら続けることは、それほどむずかしいことではありません。いちばんいいのは、子供のときから習慣づけることです。分厚いステーキやチーズやお酒も、それが「おいしい」という喜びになるのなら、たまになら食べても飲んでも大丈夫です。食事は日々の積み重ねです。たまに羽目を外すことがあっても、ほかの95%が健康に留意した食事をしていれば、ミラクル・エンザイム(酵素)があなたの健康を守ってくれます。大切なのは、楽しみながら、正しい食事を長く続けていくことです。



  【「新谷弘実 」教授の著書 】

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