この記事は「日本ビフィズス菌センター」と「ヤクルト中央研究所」の『短鎖脂肪酸』の解説です。
 『短鎖脂肪酸』がどういうものかについて、とりあえずこの記事を一通りざっと目を通して頂いてから、この記事のご紹介のあとの【『短鎖脂肪酸』について 】にて “短鎖脂肪酸の要点の雰囲気” を簡単にお話ししていますので、ご一読されてみてください。よろしくお願いします m(__)m





 短鎖脂肪酸(Short-chain fatty acids)
 【「日本ビフィズス菌センター〔The Japan Bifidus Foundation〕」
より 】

 『短鎖脂肪酸』(short-chain fatty acids)はアルキル基にカルボキシル基が一つ結合した脂肪酸のうちで炭素数7以下のものをいう。常温では液体で、水にも溶解する。『短鎖脂肪酸』の pKa は4.6から4.9なので中性の水中では98%以上が解離する。
Fukushima M. "Chemistry of Short-Chain Fatty Acids", In: Physiological and Clinical Aspects of Short-Chain Fatty Acids, eds. Cummings JH, Rombeau JL, Sakata T, Cambridge University Press, Cambridge, pp. 15-34, 1995

 脊椎動物の前胃や盲腸を含む大腸近位部では、細菌生態系によって炭水化物から酢酸やプロピオン酸、n-酪酸などの直鎖の『短鎖脂肪酸』が生産される。収率の上限は60%ほどである。ただし、pH が6以下になると乳酸から『短鎖脂肪酸』への変換が、5以下になるとコハク酸から『短鎖脂肪酸』への変換が阻害され、乳酸やコハク酸が蓄積する。また、消化管内微生物はアミノ酸から iso-酪酸や iso-吉草酸という分岐脂肪酸を生産する。

 消化管内で生産された『短鎖脂肪酸』の95%以上が受動拡散及び担体輸送で吸収される。『短鎖脂肪酸』の一部は前胃や大腸の上皮細胞に消費されるが、残りは門脈を経て肝臓に至り、脂肪合成の基質として用いられる。その残りは全身の細胞のエネルギー源や脂肪合成の基質として用いられる。『短鎖脂肪酸』は反芻(はんすう)動物では維持エネルギーの8割をまかない、ヒトでも場合によっては20%以上をまかなう重要なエネルギー栄養素である。インスリン作用に依存しないで細胞に取り込める点や脳血管関門を通過する点が特徴的である。乳酸やコハク酸はほとんど吸収されず、上皮細胞のエネルギー源にもならない。

 『短鎖脂肪酸』は、Na や水の吸収、消化管上皮細胞増殖、大腸での粘液分泌、大腸の相性収縮や持続性収縮、末梢での免疫細胞の機能などに影響を与える。『短鎖脂肪酸』のアルキル基が直鎖か分岐鎖か環状かによって作用が異なる場合がある。また、『短鎖脂肪酸』の作用は用量によって逆転することも多く、前歴の影響も大きいので、体外系でのデータの解釈は慎重を要する。

 『短鎖脂肪酸』の作用と乳酸やコハク酸の作用とは大きく違うことが多い。すなわち、『短鎖脂肪酸』の作用は『短鎖脂肪酸』からの水素イオンの作用ではなく、非解離の『短鎖脂肪酸』あるいは『短鎖脂肪酸アニオン』の作用である。
坂田隆「短鎖脂肪酸研究の落とし穴」消化管の栄養・生理と腸内細菌、アニマルメディア社、東京、pp.27-32、2011




 短鎖脂肪酸
 【「ヤクルト中央研究所」
より 】

 「脂肪酸」とは、油脂を構成する成分のひとつで、数個から数十個の「炭素」が鎖のようにつながった構造をしています。そのうち炭素の数が6個以下のものが『短鎖脂肪酸』と呼ばれ、それには酢酸、プロピオン酸、酪酸などが含まれます。

 『短鎖脂肪酸』は、ヒトの大腸において、消化され難い「食物繊維」や「オリゴ糖」を腸内細菌が発酵することにより生成されます。生成された『短鎖脂肪酸』の大部分は大腸粘膜組織から吸収され、上皮細胞の増殖や粘液の分泌、水やミネラルの吸収のためのエネルギー源として利用されます。

 また、一部は血流に乗って全身に運ばれ、肝臓や筋肉、腎臓などの組織でエネルギー源や脂肪を合成する材料として利用されます。その他にも『短鎖脂肪酸』には、腸内を弱酸性の環境にすることで有害な菌の増殖を抑制する、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進する、ヒトの免疫反応を制御する、など様々な機能があることが知られています。




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 『短鎖脂肪酸』について

 ここでは、短鎖脂肪酸の小難しい知識を見るのではなく、短鎖脂肪酸の要点の雰囲気だけでも知って頂こうと思いまして、ちょっとお話ししていきます。

 上述にあります通り、「脂肪酸」とは油脂を構成する成分のひとつで、数個から数十個の「炭素」が鎖のようにつながった構造をしており、そのうち炭素の数が6個以下のものを『短鎖脂肪酸』と呼んでいます。

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   炭素の数が1個の脂肪酸が「蟻酸」
   炭素の数が2個の脂肪酸が「酢酸」
   炭素の数が3個の脂肪酸が「プロピオン酸」
   炭素の数が4個の脂肪酸が「酪酸」
   炭素の数が5個の脂肪酸が「吉草酸」
   炭素の数が6個の脂肪酸が「カプロン酸」

 これらを「炭素の鎖が短い脂肪酸」という意味で『短鎖脂肪酸』と呼んでいます。

 生玄米の「β(ベータ)デンプン」や食物繊維はヒトの消化酵素では消化されない「難消化性成分」であるため、消化されずにそのまま小腸を通り抜けて大腸へと運ばれます。未消化のまま大腸に届いた「β(ベータ)デンプン」や食物繊維のうちの「水溶性食物繊維」が大腸の腸内細菌に発酵分解されて『短鎖脂肪酸』が生成されます。腸内細菌の発酵産物として生成された『短鎖脂肪酸』が大腸で吸収されて「生体のエネルギー源」となるわけです。

 ですから『短鎖脂肪酸』とは、ヒトの消化酵素では消化されない「難消化性成分」である「β(ベータ)デンプン」や「水溶性食物繊維」が大腸の腸内細菌に発酵分解されることで産生される「発酵産物」である、ということです。この『短鎖脂肪酸』は生体の重要なエネルギー源となる他、生命活動を良好にしてくれる様々な働きを有しています。

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この絵では「オリゴ糖」とありますが、ここではこの「オリゴ糖」を
「β(ベータ)デンプン」や「食物繊維」に置き換えて見てください



 そして、この炭素が6個以上つながっている脂肪酸を『中鎖脂肪酸炭素数7~12程度)』『長鎖脂肪酸炭素数13以上)』『極長鎖脂肪酸炭素数24~28程度)』と呼んでいます。
 調べてみますと、この炭素の数と「短鎖」「中鎖」「長鎖」の区分けは資料によってバラバラであまり定まっていません。

 次の図が『中鎖脂肪酸』と『長鎖脂肪酸』のイメージです。

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 ついでに、どのような食品からどの脂肪酸を摂取できるか、という表が次のものです。

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 また、こちらが『短鎖脂肪酸』『中鎖脂肪酸』『長鎖脂肪酸』に関する表です。

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 それで、この『短鎖脂肪酸』は「生体のエネルギー源」になるだけでなく、生命活動を良好にする様々な働きがあります。
 次がそれを表わすものです。

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 そして、『中鎖脂肪酸』『長鎖脂肪酸』にも、それぞれ働きがあります。

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 ここでは『短鎖脂肪酸』に的を絞っていますので、『中鎖脂肪酸』と『長鎖脂肪酸』の詳しい説明は省きます。



 もう一度、『短鎖脂肪酸』について、まとめていきます。

 炭水化物とは【糖質】【食物繊維】の総称で、次のように分類されています。

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 このうち、『短鎖脂肪酸』は、上の【糖質】では生玄米の「β(ベータ)デンプン」経路で得られ、下の【食物繊維】では「水溶性食物繊維」経路で得られます。


 【糖質】には「糖類(単糖類二糖類)」と「その他の糖質(三糖類以上)」とがありますが、この「その他の糖質(三糖類以上)」に該当するものに「デンプン」があります。『天然のままの結晶性デンプン』を「β(ベータ)デンプン」と言いますが、これは消化され難い「難消化性デンプン(レジスタントスターチresistant starch)」で、ヒトの消化酵素では消化されません。この「β(ベータ)デンプン」は消化されずに(つまり、ブドウ糖まで分解されずに)そのまま小腸を通り抜けて大腸へと届き、大腸の腸内細菌に発酵分解されて『短鎖脂肪酸』が生成されます。「β(ベータ)デンプン」で摂取すれば、ブドウ糖の摂取にはならずに『短鎖脂肪酸』の摂取となるのです。

 「β(ベータ)デンプン」は加熱するとアルファ化して「α(アルファ)デンプン(デンプン中の糖鎖間の水素結合が破壊され、糖鎖が自由になった状態のデンプン)」となり、この「α(アルファ)デンプン」はヒトの消化酵素で消化されて「ブドウ糖」まで分解されますので、「α(アルファ)デンプン」の摂取は「ブドウ糖」の摂取となります。

 もう一度、これを『玄米食』で言います。
 生米は「β(ベータ)デンプン」ですから、『生玄米(生玄米粉)』を食べると「β(ベータ)デンプン」の摂取となりますが、「β(ベータ)デンプン」はヒトの消化酵素では消化されずに、そのまま小腸を通り抜けて大腸へと届き、大腸の腸内細菌が発酵分解することで『短鎖脂肪酸』が生成されて「生体のエネルギー源」となりますので、『生玄米(生玄米粉)』の摂取は『短鎖脂肪酸』の摂取となります。
 生米の「β(ベータ)デンプン」は加熱するとアルファ化して「α(アルファ)デンプン」となります。ですから、生玄米を煮沸して加熱調理した『玄米ご飯』を食べると「α(アルファ)デンプン」の摂取となります。「α(アルファ)デンプン」はヒトの消化酵素で消化されて「ブドウ糖」まで分解されますから、『玄米ご飯』の摂取は「ブドウ糖」の摂取となります。

 つまり、

   生玄米食(生玄米粉食玄米の生食
    β(ベータ)デンプン  消化されずに大腸へ GO!  腸内細菌が発酵分解 短鎖脂肪酸』が生成
    短鎖脂肪酸』の摂取となる 【短鎖脂肪酸の摂取】

   玄米ご飯食(玄米の火食
    β(ベータ)デンプン 加熱調理でアルファ化 α(アルファ)デンプン 消化されて「ブドウ糖」まで分解
    「ブドウ糖」の摂取となる 【ブドウ糖の摂取】

 というように、同じ炭水化物のデンプンであっても、生食するか、火食するかによって、まったく異なる「摂取内容」となるのです。

 今日では、炭水化物は総称として「糖質」や「糖」と呼ばれることが多くなってきていますから、世間では「炭水化物」=「糖の摂取」と思い込んでいる方が非常に多いのですが、同じ炭水化物に分類されてはいても、炭水化物のうちのデンプンは、生食するか、火食するかによって、『短鎖脂肪酸』の摂取になったり、「ブドウ糖」の摂取になったりと、その摂取の内容がまったく異なってくるわけです。このように、「炭水化物はすべて、糖の摂取になる」と思うのは間違いなのですね。


 また、【食物繊維】は「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」に分類され、共に「難消化性成分」なのでヒトの消化酵素では消化されません。【食物繊維】のうちで『短鎖脂肪酸』になるのは「水溶性食物繊維」で、これは「β(ベータ)デンプン」と同様の過程を経て『短鎖脂肪酸』が生成されます。
 すなわち、「水溶性食物繊維」はヒトの消化酵素では消化されずに、そのまま小腸を通り抜けて大腸へと運ばれ、大腸の腸内細菌によって発酵分解されて『短鎖脂肪酸』が生成され、その腸内細菌の発酵産物として生成された『短鎖脂肪酸』が大腸で吸収されて「生体のエネルギー源」となるわけです。

 生菜食や生野菜ジュースで摂取した【食物繊維】のうちの「水溶性食物繊維」は、生体にとって重要なエネルギー源となる『短鎖脂肪酸』を産生するための原材料となっているのです。

 つまり、

  生菜食・生野菜ジュース(植物の生食
  【食物繊維】のうちの「水溶性食物繊維」 消化されずに大腸へ GO!  腸内細菌が発酵分解 短鎖脂肪酸』が生成
  短鎖脂肪酸』の摂取となる 【短鎖脂肪酸の摂取】

 ということですね。
詳しくは「「短鎖脂肪酸」と食物繊維との関係【短鎖脂肪酸は生玄米粉のベータデンプンの他に、生菜食で摂取する水溶性食物繊維からも得られる!】」を参照してください


 次は、腸内細菌が『短鎖脂肪酸』を産出しているイメージです。

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 真ん中の「バクテロイデス」という腸内細菌さんは、「難消化でんぷん(β(ベータ)デンプン)」を発酵分解して『短鎖脂肪酸』を産生してくれています。また、右の「クロストリジウム」という腸内細菌さんは、「水溶性食物繊維」を発酵分解して『短鎖脂肪酸』を産生してくれていますね。ホント、ご苦労様です m(__)m

 左の「ビフィズス菌・乳酸菌」という腸内細菌さんは「ブドウ糖・オリゴ糖」から『短鎖脂肪酸』を産生してくれていますが、「ブドウ糖は癌の最大のエサ」となるので、ここではピックアップしません! ご愁傷様です・・・。

 このように『短鎖脂肪酸』は、腸内細菌が “ヒトの消化酵素では消化されない「難消化性成分」” を発酵分解することで産出する “腸内細菌の「代謝産物」「発酵産物」” です。『短鎖脂肪酸』とは、腸内細菌からの有り難い「贈り物」なのですね!


 上述しましたように、『短鎖脂肪酸』は「生体のエネルギー源」になるだけでなく、生体の生命活動を良好にする様々な働きを有しています。「ブドウ糖」に替わるエネルギー源にもなり、生体の生命活動を様々に支えてくれる『短鎖脂肪酸』を、ぜひ見直してあげましょう!