研究者は尿中に何を見るか?
 【「リンク・デ・ダイエット」
より 】


【栄養】研究者は尿中に何を見るか?(2013.9.6 EurekAlert より)

 尿中に含まれる3000以上の代謝物を、20人近い研究チームが7年以上の歳月をかけて同定した、というカナダ・アルバータ大学からの研究報告。

 「尿はきわめて複雑な組成を持つ体液であり、当初どれくらいの化合物が含まれているか想像もつきませんでした」と主任研究者のデビッド・ウィッシャートは語っている。

 ウィッシャートらのチームは、核磁気共鳴分光分析、ガスクロマトグラフィー、質量分析、液体クロマトグラフィーなどの化学分析の手法を用いて系統的かつ定量的にヒト尿中の化合物を分析した。

 またコンピュータによるデータマイニングによって先行文献のデータから、彼らが同定した尿中化合物を分類整理して UMDB(尿中メタボロームデータベース)として公開した。データベースはカナダの国立メタボロミクスコア施設であるメタボロミクスインベントリセンターが維持管理している。

 尿の化学的組成は生理学者、栄養学者、環境学者らにとっては特別な興味を惹かれる対象である。健康状態を反映するというだけでなく、食べたもの飲んだもの、薬、環境汚染物質などがさまざまな形で尿中に排泄されるからだ。

 尿の医学的利用は3000年以上の歴史があるといわれている。19世紀にはすでに医師は診断に尿の色、味、においなどを利用していた。今日では尿検査はひとつの分野を形成するほど重要なものになっており、新生児代謝疾患、糖尿病(尿糖)、腎臓病(たんぱく尿)、膀胱感染症、薬物中毒などの診断には日常的に用いられている。

 「たいていの医学書には50~100の尿中化合物が記載されるのがふつうですが、日常的に使われるのは6~7種類に過ぎません。」とウィッシャートは語っている。「これを100種類程度まで拡大できれば、臨床検査は見違えるように変わるでしょう」。

 ウィッシャートによれば、今回の研究成果は、従来の臨床検査をまったく一新する可能性を秘めているという。血液や組織採取の代わりに尿を用いて迅速に安価にしかも無侵襲的にさまざまな代謝産物を測定することができるかもしれないからだ。特に彼が期待するのは大腸がん、前立腺がん、セリアック病、潰瘍性大腸炎、肺炎、あるいは臓器移植の組織適合性などで、開発中のものもありすでに市場に検査薬が出回っているものもあるが、すべて実用化に向けて検討が進んでいるという。

 メタボリズム(代謝)とゲノムを組み合わせた造語であるメタボロームは、体内における代謝産物の全体を意味する。尿中メタボロームはその一部をなすもので、アルバータ大学ではヒトメタボロームの全体像を明らかにしようとしている。2008年には脳脊髄液、2011年には血液の化学組成が報告されている。

 「今回の結果が尿の化学組成の全体像とは限りません。今後さらに感度の高い方法が開発され、さらに新しい代謝産物が発見されることでしょう」とウィッシャートは語っている。「現在でも毎日新たな代謝物がデータベースに登録されているのです」。

 「ゲノム以上にヒトの健康に有意義でまた即時的な影響力をメタボローム解析はもつと、私は信じています」とウィッシャートは語っている。