千島学説17 細胞分裂説と細胞新生説  【「西式甲田療法による介護」より 】
 (稲田芳弘さんのブログから「http://www.creative.co.jp/m/mmm/index.cgi
 

 千島学説17

細胞分裂説と細胞新生説

 間違った理論に基づいた医療では、効果を期待することなどできません。それどころか、治療がかえって逆効果になってしまいます。それくらい医学理論は治療法に大きな影響を与えるわけですが、ガンに関する明解な理論を打ち出した医学者、それはドイツの病理学者、ルドルフ・ウイルヒョウでした。

 ウイルヒョウは1859年に「すべての細胞は細胞分裂から生まれる」という学説を発表し、それがその後の生物学、医学の定説としてすっかり定着するに至っています。ガンで言えば、ガン組織には必ず正常と異なるガン細胞があり、それが細胞分裂を繰り返してどんどん増えて行くという説明です。つまり、「ガンの元はガン細胞。ガンは必ず局所から発生し、それが勝手に猛烈な勢いで分裂・増殖していく」というわけです。

 ここでの問題は、いったいなぜ正常細胞がガン細胞に変わるのかということですが、ウイルヒョウはその原因に関して「慢性刺激説」を唱えました。外部からの慢性刺激が、健康な細胞をやがてガン化させて増大していくというわけです。

 ウイルヒョウが唱えたこの「ガン局所説」は、外科医たちを大いに勇気づけました。なぜなら、ガン細胞が細胞分裂によって大きく育っていくわけですから、その元になるガンの局所(ガン組織)をごっそり摘出してしまえばよしと考えたからでした。 そこからハルステッドの「根治乳房切除手術」なども出てきますが、これはガン組織のみならず、ガン細胞が潜んでいる乳頭、皮膚、リンパ節、関連筋肉などを徹底的にごっそりと廓清切除してしまうというものでした。しかしそれでも乳ガンの根治はかないませんでした。

  ウイルヒョウは「細胞は細胞から、核は核から、染色体は染色体から分裂によって生じる」という非常に明解な説を唱えましたが、これにはっきりと異を唱えたのが千島喜久男でした。千島はその「赤血球分化説」によって、「すべての体細胞は赤血球から作られる」としたのです。

 人間の身体がたくさんの細胞によって構成されていることは、すでに知られているところです。その細胞を発見したのはロバート・フックで、彼は顕微鏡でコルクを観察し、その結果、その小さな単位を「細胞」と命名しました(1665年)。その後ドイツにシュライデンとシュワンが現れて、1838年に「生物体は細胞から構成されている」と提唱、そこに近代細胞学の基礎が打ち立てられたのでした。
 ただこのときに二人は「細胞の形成プロセス」に関して、「まず母液(細胞内容)が凝集して核を生じ、核が成長して胞体を形成し、胞体が増大して新たな細胞となる」と、「細胞新生説」を唱えていたのです。

 そして1851年、フォン・モールは細胞分裂説を認めながらも、「細胞分裂で核が生じるのは、核が親なしで新生する場合に比べて、はるかにまれな現象である」と発表し、細胞新生があくまでもメインであり、細胞分裂は「細胞形成のもうひとつの方法にすぎない」としました。要するにその当時は、細胞新生説と細胞分裂説が並列的に論じられていたのです。

 そんななか、1941年にラマルクが細胞分裂説を唱え、さらに1859年にウイルヒョウが「細胞分裂説」を打ち出しました。この流れは世界を一気に細胞分裂説一色に塗りつぶし、そしてそのまま今日に至っています。

 つまり、細胞分裂説の流れが勢いづいたとたんに細胞新生説が息をひそめてしまったわけで、要するに「ウイルヒョウの明解な理論」が、「あいまいに見える実際の生命現象」を強引に切り捨ててしまったのです。

 細胞は分裂によって増えるのか、それとも赤血球が分化して細胞になるのか。細胞形成(起源)に関するこの問題は、単に理論の問題というよりは、具体的な治療の面でも非常に大きな影響を及ぼします。

 実際、もし本当にガン細胞が猛烈な勢いで細胞分裂を起こして日々大きく成長しているのだとしたら、ガンをそのまま放置しておくわけにはいきません。その場合のガン治療で何よりも大切なことは、ガンがまだ小さいうちに発見して(早期発見)、根こそぎ切り取ってしまうこと(摘出手術)。あるいは毒物でガン細胞を殺したり、放射線を使って焼き殺すことも必要になるでしょう。

 ガン細胞が勝手に猛烈な勢いで細胞分裂を繰り返し、どんどんガン細胞を作り出してガンを大きくしているのだとしたら、それに必要なのは一刻も早く手術と治療に着手することです。ということから「摘出手術・化学治療・放射線治療」が、いま盛んに行われているわけです。

 しかしもし、「細胞が赤血球から作られる」ものであり、ガンが局所的な病気ではなくて「血液劣化=全身病」だったとしたら、ガンの治療法も全く違ったものになってしまいます。そのときに何よりも大事なことは「健康的な血液」に戻すことにほかなりません。それをせず、いかに部分的にガン細胞(組織)を切除したり殺したりしたとしても、劣化した病的な血液が次々とガン細胞化していくからです。

 その意味でも、細胞が細胞分裂によって作られているのか、それとも赤血球が細胞に分化していくのか、これをはっきりと見極める必要があります。間違った理論からは間違った治療法しか引き出すことができないからです。

 こんなふうに言ったとしても、「何を今さら」とせせら笑われてしまうに違いありません。なぜなら「細胞分裂説」はすでに世界が認める定説であり、それを実証するかのごとき顕微鏡写真や映像も広く社会に認められているからです。