腎臓病(3) 民間療法にも金の卵がある   【「西式甲田療法による介護」より 】
 腎臓病と甲田療法 - 現代医学で治らぬ人のために』甲田光雄:創元社:1500円(21頁~25頁))
 

民間療法にも金の卵がある

 私が断食療法や自然食療法など、現代医学の常識からみて一風変わったと思われる治療法をやり出したのも、若い中学生の頃から大病ばかりくり返してきたからです。そのなかでも私を最も苦しめたのは、慢性肝炎と胆嚢胆道炎および慢性大腸炎でした。これらの病気のため、大学を出るまでに五年間も休学しなければならない破目に陥ったわけです。

 慢性肝炎といいますと慢性腎炎と同様、現代医学では難治の疾患で、一度この病気に罹れば恐らく生涯、元の健康身体に復帰できないだろうといわれているものです。実際、中学五年の時から数年間にわたって、現代医学の病院や診療所に通い、いろいろと治療を受けました。しかし、いっこうに良くなるどころか、次第に病状は進み、大学三年の時からまた入院生活を余儀なくされるという状態でした。

 その時、入院中に主任教授さんから「君もいつまでここにいても仕方がないから、一度家へ帰ってのんびりした方がいいよ」といわれたのです。この教授さんの言葉で私の肝は決まりました。要するに、私は現代医学から見放されたのだなと悟りました。「こうなればもう、いくらこの病院に入院していても仕方がない。よし、それならば一つ大自然のふところに飛びこんで、どこまで生きられるかやってみよう」と一大決心したわけです。

 当時すでに、築田多吉氏著『家庭における実際的看護の秘訣』とか『西式健康法』など各種の民間療法に関心を寄せ、しきりに研究していましたが、そのなかで最も私を魅了したのが断食療法でした。「断食療法を行えば難治の肝臓病でも治る」という見出しで書かれた記事に、吸いつけられるように何度も読み返したものです。こうなると、もうどうしても一度断食療法をやってみたいという気特ちになってしまいました。

 そこでまず、友だちや主治医の先生たちに相談しましたところ、皆猛烈に反対するのです。しかし考えてみれば、反対されるのがもっともなことなのです。慢性肝炎に対する現代医学の治療方針は、まず十分な栄養を摂ることとなっているのです。この方針は、当時も現在もあまり変わっていません。だから、肝炎で入院しますと、ほかの患者さんたちより御馳走を食べさせてもらえます。特に腎臓病の方々には申しわけないくらい、ぜいたくな食事内容です。

 ところが、このような食事療法とは全く逆の、断食療法で肝炎が治ってくるとは、常識では到底考えられないことです。昭和二十五年頃には、断食療法に理解のあるようなお医者さんは、ほとんど見当らないといってもよい時代でした。現在は「絶食研究会」(一九六七年設立、会長・川嶋昭司、元奈良医大助教授)という専門の医師たちによる会ができており、すでに一〇〇名前後の会員数になっています。そして毎年の例会には、絶食療法で慢性肝炎や慢性腎炎が軽快したというような演題が出てきています。これは、三〇年前には全く考えられなかったほどの変わりようです。

 当時、医学部の三年生であった私は、断食寮へ行きたいと先輩や友だちに話して、ことごとく反対され、本当に淋しい思いをしたものです。断食療法に対して正しく理解していてくれるものが、周囲に一人もいなかったのですから無理もないことです。しかし、病院のなかで長い間療養していてもいっこうによくならず、前途に希望を失っていた私にとって「ひょっとしたら、この断食療法で肝臓病を克服できるかも知れない」と、かすかな期待をかけていたのです。現在はまだ医学的に解明されていないが、太古の昔から幾多の先人たちによって試みられ、伝承されてきたものである限り、そのなかに何らかの真理が秘められているに違いなかろうと考えたからです。

 こうして私は、友人たちの反対を押し切って単身断食寮へ乗り込みました。51年前の8月でした。そして、11日間の断食を行ったのです。結果はどうであったか? 最初の予想どおりではありませんでしたが、難症の肝炎がとにかく好転してきたではありませんか。これによって、私の生涯は一変するわけですが、それほど大きな転機がこの断食療法によってもたらされようとは、夢にも思っていませんでした。

 現代医学の常識から考えて、当然悪化するだろうと思われる断食で肝炎が治ってくるというのは、不思議としかいいようがありません。それだけに、また大きな魅力でもあります。「断食療法のなかには、何か深い真理が秘められているに違いない。ひょっとすると、現代医学がいま手こずっているいろいろな難病も、この療法で治すことができるのではないか」と、当時の私は想像をたくましくしたわけです。

 それからというものは機会ある毎に断食療法をくり返し行い、現在に至っていますが、断食を行うたびに、そのよいところが一つ一つ体得できる上うになりました。一方ではまた、現代人にかなった方法を考案すべき点もわかってきました。こうして、身体で感じ取ったものに科学の光を当て、これを普遍妥当性のある本当の医学に育ててゆくことに微力を捧げるのが、私の生涯の仕事ではないかと思い、それ以来研究を続けてきました。

 現在は、このほかに玄米食・生野菜食療法など、東洋医学的食事療法も取り入れ、また皮膚鍛練法として西式健康法の裸療法や、温冷浴(後述)および脊柱整正法としての健康体操(後述)なども応用し、患者さんたちの要望に応じて、彼らの健康回復を促進させる目的で、体力や病状などを考慮しながら慎重にこれらの療法を実施しています。

 このなかには、現代医学的治療法で難治とされている気管支喘息、関節リューマチ、筋無力症、アトピー性皮膚炎、高血圧症、動脈硬化症などの患者さんたちも含まれ、適応さえ誤らなければ、比較的良好な成績が認められるということもわかってきました。腎炎やネフローゼの場合も同様です。適応症さえ誤らず慎重に行うことで、自覚症状はもちろん、検査成績でも好転する症例がかなりあるのです。

 このように、現代医学で難治とされる病気でも、民間療法のなかには、著効を奏するものがあり、決して蔑視すべきものではないということを理解していただきたいと思います。



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