少食(21)同時に食塩も摂ること   【「西式甲田療法による介護」より 】
   少食(『健康養生法のコツがわかる本』甲田光雄:三五館:一五〇〇円:243頁
 
「塩分不足」という問題について教えてください。

 「日本人の大半はまだ塩分を摂りすぎている。もっと減らさないといけない」という大きな勘違いがあるのです。これは現代医学の専門家たちがいつも「塩分を摂りすぎるな!」と新聞やテレビなどで忠告されるのが大いに影響していると思います。

 だいたい現在、私たちは平均して一日に一一グラムから一四グラムくらいの食塩を摂っていますが、「それではまだ多い」というのです。「一日六グラムくらいになるよう減らしなさい」、だから、一般の人々は、自分はもっと食塩の摂取量を減らさないといけないと思っておられるわけです。そして、それがもう常識になってしまっているのです。

 ところが、実際は食塩が欠乏しているという人がおられるのです。それも決して少なくない。

 たとえば、夏の暑い日には日中だけではなく朝からでも汗をかくことが多いのです。汗が一〇〇グラム出たら、その中には平均して〇・五グラムの食塩が入っています。もし、日中の暑いとき、少し外出して早足で歩いたら、もう汗がダクダク出てきて、シャツもズボンも汗でグシャグシャになってしまう。こんなときは、おそらく一リットルくらいの汗をかいているでしょう。すると約五グラムの食塩も体外へ出てしまったことになるのです。もし、走ったり、重労働を行なったりしたら、ニリットルくらいの汗も出てしまうでしょう。そうなると、一〇グラムの食塩を失ったことになります。

 このようにして、多量の塩分を失うと、私たちの体内でブドウ糖をつくる力が落ちてしまうのです。その結果、血液中の糖分、つまり血糖値が下がってきます。すると、いっぺんに疲れが出てくるわけです。野球の選手たちが試合で汗びっしょりかいた後でグッタリと疲れるのはこのためです。

 そこで、甘いものが欲しくなるのです。汗をびっしょりかいた後で、糖分の入った飲料水をグッと飲むとたちまち元気になるのはこのためです。甘いものがないときは、今度はビールのようなアルコーール飲料です。サウナなどに入ってたくさんの汗を出した後で飲むビールの味はまた格別です。このようにして甘党やアルコール党が増えてくるのです。

 これは、発汗後すぐに失った塩分と水分を補給しておくことを忘れているからです。食塩を摂りすぎるなとあまり強調しすぎているために、甘党やアルコール党を増やしていることに気がついていないのです。たいへん困ったものです。

 また、食塩の欠乏で胃の消化力も落ちてしまいます。胃液は塩酸で働いているのですが、この塩酸はじつは食塩から産生されるのです。だから発汗で食塩を失ったら、すぐにそれを補っておかないと、塩酸をつくれない。その結果、消化不良になってしまうのです。夏ヤセはこうして起こるのです。現代医学はこれを無視しているわけです。


 胃の塩酸が不足していると、口の中から侵入してくる食中毒の菌とか、また赤痢菌などを消毒することができない。そのため、それらの菌のために厄介な感染症や食中毒にかかってしまうのです。このように食塩の欠乏もいろいろと健康上に悪影響を及ぼしますから、くれぐれも注意していただきたいのです。

 少しくらい摂りすぎても水を充分に飲んでおれば、過剰な塩分は尿の中へ排泄できますから、それほど心配することはないです。そして、二週間から三週間に一日は塩断ち日として、その日は食塩は一切摂らないことにするのです。これで、体内での塩分はキレイに調節できるのです。



 熱中症予防のためには、塩の補給が大切だと聞きました。

 そのとおりです。熱中症では体温が四〇度、四一度にまで上昇して、脳が傷害されてしまうのです。その原因は体内の水分が不足して汗として排泄できないからです。そのため、体温を下げることができなくなり、ドンドン上昇してしまうのです。

 それでは体内の水分を補ったらよいのではないかと思うでしょうが、発汗で塩分を失ったままでは、飲んだ水分を体内に引きとめておくことができない。これが大きな問題なのです。

 したがって、熱中症にならないためには、充分な水分を補給すると同時に食塩も摂ること。これを忘れてはなりません。

 ただ水をたくさん飲むだけではダメです。



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